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丸太一本の価格、ご存知ですか?

 なかなか探究することのない業界の裏情報をレポートします。今回は木材の価格についてです。木材の価格は板状になる前、立米単価で取引されていす。平米の単位は、m2、立米の単位は、m3、となりますので、木材の流通は、容積単価、体積単価ということになります。下記をご覧ください。これは農林水産省が毎月発表している木材の流通価格資料の一部です。

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「素材価格」というのが、いわゆる「丸太価格」で、「木材製品価格」が「角材」になった際の価格です。ちょっと分析してみます。

「すぎ中丸太、直径14〜22cm、長さ3.65〜4m、立米あたり11,600円」となっています。直径、長さにはアバウト感がありますが、1m×1m×1mの木材が、11,600円で取引されている、ということです。

 感覚的にわかりやすく、直径20cm、長さ4mの丸太1本がいくらになるかを計算してみます。すると、丸太の断面積(半径 × 半径 × 円周率 π )は、0.1m×0.1m×π=0.0314m2、この長さが4mですので、0.0314m2×4m=0.1256m3、1m3の素材価格は11,600円ですから、これらを乗算すると、0.1256m3×11,600円=1,457円、となります。直径30cmの場合、同様の計算式で、3,279円となります。

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 この丸太が一本の角材=角柱(10.5cm角)になるとその価格がどうなるかですが、立米単価は約5.4倍=62,500円になります。丸太の円柱状のものから角柱材をとるので、端材も発生しますし、製材費用(製材工賃、製材利益、経費等)も含まれますので、当然なが立米単価はアップせざるをえません。同様に計算すると、一本あたりの価格は下記になります。

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取引流通量や問屋さんの中間マージン、運搬経費など、流動的なコストはありますが、それでも比較的安価な印象ではないでしょうか。

林業の可能性とは?

 20年、30年、50年かけて、苗から一本一本丁寧にお世話しつつ、山林で木を育て、商品としての頃合いの木を伐採し出荷する、これが林業のサイクルです。農業は毎年の収穫がありますが、林業の収穫は数十年後です。大木となると現役中に収穫できない場合もあります。じっくり木とつきあっていく忍耐と、数十年前に植林され、育まれてきた木の生命力、太陽と雨の自然の力、森を読む先人のノウハウ、自然と人間との協業へのリスペクトがなければ従事できないとても尊いお仕事です。

 とはいえ、丸太一本の価格が、従来の木材流通価格であれば「1,500円」にもなりません。そこには安価な輸入材の影響があり、国産材は売買されにくい環境下にあります。「安価」なうえに「売れない」という悪循環が生まれます。しかしながら、もしも日本の林業が衰退してしまえば森は確実に荒れ果てます。森には治水という災害対策の基盤力が備わっていますが、森が荒れるとその治水力が損なわれてしまいます。そのため、国も自治体も林業従事者に補助金の底支えを長年実施してきました。これは農業への補助金の比ではなく、70%から場合によっては100%まるまる補助金というところまであります。補助金を減らすと、ただでさえ兼業従事者が多い中、林業離職者が増加します。「補助金削るなら、林業やめます」という状況下では、なかなか活性化していかないのは周知の事実でしょう。

 昨今は許容量をはるかに超越する集中豪雨は毎年のように発生しており、河川もいたるところで氾濫しています。山林が良質な治水力を保持し続けていれば、そういった災害を軽減化、最小化することにもつながります。そのためには、国内林業の可能性や木工の可能性を拡張化すべきであり、そうすることによって、林業の重要性がフォーカスされて、新規参入者の母数も経済性も活性化していきます。

 簡単なことではありませんが、例えば、丸太の輪切りなどは「家庭用の鍋敷」として安定的な人気があります。やはり日本人は木を好むのです。直径20cm、厚み3cm程度もので、500円から1,000円程度で取引されています。先のデータでは、長さ3mの丸太1本が1,500円程度でしたが、1本の丸太からの輪切り材は100枚採れるため、50,000円〜100,000円程度の収益を見込むことができます。収益が実に33〜66倍に拡大するのです。

 丸太の原材料のままで製品展開していくには限界があります。現在の林業従事者だけでは、経済的悪循環、補助金の問題点をクリアしつつ、善循環のサイクルとして再創造することは困難でしょう。こういったケースは、ノウハウMIXが最も有効です。様々なジャンルのクリエイティブなプロフェッショナルたち、映像クリエイター、ライフスタイルデザイナー、YOGA指導者、トレイルランナー、家具デザイナー、プロダクツデザイナー、ジュエリーデザイナー、建築家、リフォーム事業者などなどが実験的・発展的なプロジェクトチームを組んで、森と生活者を結ぶ「しくみづくり」が創出されていくことを期待します。

 日本の森々の未来保全のため、良質な治水のため、さまざまな知見の持ち主たちによる「知恵の集積」や「成功モデル」を具体化していってほしいと思います。(自らも何ができるか、、です)


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http://prema9.main.jp/

https://www.aj-reform.com/

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