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複雑なことなんて、何一つないよ

9/12。

5:00起床。

天気は曇り。





「……これは、そういうわけだったんですけど」

「そうだったんですか。……それで、小説の話に戻るんですけど

「……あと、こういうこともあって、それが辛くて」

「それは大変でしたね。……それで、小説の話に戻るんですけど


話、めちゃくちゃ戻すじゃん……と思いながら、ボクはカウンセラーさんの質問に一つ一つ答えたのだった。


ボクの担当のカウンセラーさんは、前回が初対面だったんだけど、話の流れで、自分が今長編小説を書いていることを話した。


ボクとしては、「現在は、こんなことをして日々を過ごしています」程度の話だったんだけど、カウンセラーさんは興味を持ってしまったらしく、昨日のカウンセリングでは質問攻めにあった。

Q.長編小説って、どうやって書いているんですか?

A.最初に、おおまかな話の筋を作っておいて(プロットのことですね)それを参考にしながら書いていきます。それで、一通り書き上げたら、書いたものを見直して、また話の筋を練り直します。

カウンセラーさんは、カウンセラーらしく「へえ~」「そうなんですね~」と肯きながら、ボクの言ったことを片っぱしからメモしていった。それは、カウンセリングに必要な情報なんですかね……とはツッコまなかったけど。

Q.もしよければ教えていただきたいんですが、どんな小説の内容なんですか?

それ、気になるんだ……。まあ、「小説書いています」って言われたら、気になるよね。


とりあえず、あらすじというか、どんなキャラが出てくるのかを教えた。カウンセラーさんは、首を捻りながら、ボクの口から出てくるキャラの設定をメモしていった。


訊き終えたカウンセラーさんは、ぽつりと言った。


「なんか、複雑ですね」


ボクは答えた。


「どこがですか?」


というのも、ボクが書いているのは、主人公がヒロインを好きになって、ヒロインは主人公を……という、シンプルな話だ。ただ、カウンセラーさんが理解をするのに時間がかかったのは、彼らの性自認についてだったが。


「実際に小説を読んでも、理解できるかどうか……」


と、カウンセラーさんはこぼしていたが、心配ご無用。


だってこの小説は、二人の人間が、喜んだり、苦しんだり、手を取り合ったり……どこにでもいる二人の話なんだから。複雑なことなんて、何一つない。たかだか性自認だけで、彼らをわかってほしくないね。


ボクは、悩みを抱えている人間を書いているだけだ。それなのに、その悩みが「性」に関することだと知ると、特別視する人間の多いこと!


何を特別視する必要があるんだ? どんな悩みだろうと、悩みは悩みだろう? 悩みを抱えていない人間なんか、いないのに。


ああ、厭だ厭だ。


だから、


この小説を武器に、


ボクが、世界を塗り替えてやる。





「僕だけが、鳴いている」


これは、
ボクと、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。


連載中。


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