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「ぼくは、迷子じゃないよ」「迷子は皆、そう言うんだよ」

11/22。

5:30起床。

天気は晴れ。





ああ、まただ。


頭の中が、びりびり痺れている。


痺れて、痺れて、自分が今どこにいるのか、わからなくなる。


落ち着いて……。落ち着いて……。


そうそう、じっと目を凝らして。


ほら、目の前には何が見える?

――海。

ぼくの目の前には、海が広がっている。


ぼくは、浜辺にいるんだろうか。


それとも、沖にいるんだろうか。


ぼくは……。

――また、迷子になったの?

ぼくは、問いただされている。


他ならぬ、ぼく自身に。

――迷子だと思ってないから、迷子じゃないよ。

――迷子は皆、そう言うんだよ。

ぼくは、ちょっとむっとする。


でも、たぶん事実なんだと思う。

――ここは、浜辺なの? それとも沖なの?

――それを訊いて、どうするの?

――……ここ、どこなの?

――見ての通り、海だよ。

ああ、これじゃ埒が明かない。


ぼくはぼくと喋っているはずなのに、会話が成立しないのはなぜだろう。

――帰りたい。

――どこに?

――どこって……。元々いた場所に。

――本当に?

――え?

――本当に、そう思ってる?

ぼくは、そのことについて、しばらく考えてみる。


考えて、考えて、一つの結論を出す。

――本当に、思ってるよ。

――そんなに帰りたいの?

――だって……長居するには、ここは寒すぎるから。

姿の見えないぼくは、けらけら笑う。


どうして、自分にまで笑われなきゃいけないんだろう。


笑われるのは、他人だけで充分なのに。

――そんなに、おかしいかな。

――いやいや。暖かかったら、いいのかなって。

――そういうわけじゃないよ。……この景色は、見ているだけで凍える。きっと、頭の中が痺れているせいだ。

けらけら笑っていた方のぼくは、もう笑っていなかった。


急に、神妙な空気が辺りを包む。

――よくわからないけど、帰っていいの?

――帰りたかったら、帰ればいいよ。でも、

――でも?

――忘れるんじゃないよ。ここに来たのは、自分が望んだからだって。

そして、ぼくは戻ってきた。


自分自身に捨て台詞を吐かれて。

――忘れるわけ、ないんだよな。

あんなに寒々しい景色を。


そんな景色に、自らを放り込んだことを。


そんなこと、忘れるはずがないだろう。

ぼくの頭の中は、まだ痺れている。





「僕だけが、鳴いている」


これは、
ぼくと、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。


連載中。


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