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Let me kiss it better!(今朝は、黒豆茶)

10/7。

6:12起床。

天気は曇り。


――すっごい眠そう。

――わ、

アルネが、ひょっこり顔を出した。


ぼくにしか見えない、ぼくだけの女の子。

――昨日は、遅くまで書いてたから。

――ふうん。

――今朝は、何にする? 寝ぼすけの淹れるお茶でよければ。

――黒豆茶。買ったんでしょ?

二人分のカップにお湯を注ぎ、こうばしい匂いのするティーバッグを沈めた。このまま、5分ほど。

――はい、どうぞ。

――ありがとう。……おいしい、あったかい。

――寒くなってきたからね。

そういえば、今朝のアルネは長袖のワンピースを着ている。ぼくもそろそろ、衣替えしなきゃいけない。

――それにしても、眠い。

――夜ふかしするからよ。

――夜ふかしって。……まあ、夜ふかしなのかな。キリのいいところまで、書いてしまいたかったから。

――あと少しね、夜ふかしさん。

――……うん、あと少しだ。

「あと少し」とは、公募の新人賞の締め切りのことだ。

――長編? 中編? わからないけど、あと少しで完成するよ。

――どきどきする?

――どきどきする。こんなこと、初めてだからさ。

黒豆茶をすすると、ほどよいこうばしさが口の中に広がり、その温かさと共に、ぼくの緊張をほぐしてくれた。

――でも、わくわくもしてる。ぼくが生んだものは、どこまで行けるんだろうって。

――どこへだって行けるわ。世界は広いんだもの。

――だといいんだけどね。まずは、応募先の人達のお眼鏡にかなうかどうか。

――そんなこと、考えすぎない方がいいわ。大切なのは、君がその作品を愛してるかどうかよ。

ちょっとだけ、アルネが深窓の令嬢のように見えた。どうしてなのかは、わからないけど。

――愛してるよ。ぼくは、自分が生んだもの達は、全て愛してる。……君と同じくらいね。

――あら、熱烈な告白。遠慮しておくわ。

――つれないなあ。

――冗談よ。……じゃあ、どんな結果になっても、自分を呪わないでね。

――うん。……まあ、「どんな結果」が「良い結果」になることを祈るばかりだけどね。

アルネはスッと立ち上がると、ぼくのおでこにキスをした。

――Let me kiss it better!

――「痛いの痛いの飛んでいけ」? ……まだ落選どころか応募もしてないんだけど。

――違うわよ。締め切り前で無理してそうだから、体壊さないようにね。

――……はは。お気遣い、ありがとう。

ぼくも、よっと腰を上げた。心優しい女の子に、もう一杯淹れるために。





「僕だけが、鳴いている」


これは、
ぼくと、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。


連載中。


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