渚と亡霊(もしくは、ある日の妄想)
9/28。
5:00起床。
天気は曇り。
*
――ここ、どこだっけ。
夢か現か。
それすらも、わからない。
面倒だな、と思う。
これじゃ、目を覚ませばいいのかどうか、わからない。
足下には、砂が風で流れていく感触。
遠くの方では、空と海の境界が曖昧。
つまり、ここは、
――××だね。
と、後ろの方から声が。
またか、と思う。
自分とまったく同じ顔が、そこにある。
――オーバードーズした覚えはないんだけど。
ぼくはいった。
――そんなことしなくたって、君はいつでもトリップ出来るだろ?
そいつは、くすくす笑う。
ぼくはなんとなく、そいつが気に入らない。
自分と同じ顔なんだから、当たり前なのか。
――ヤバい奴みたいな言い方、止めてくれるかな。
――君は、ヤバい奴じゃないとでも?
――自己評価ではね。他己評価は知らないし、いらない。
ぼくは、そいつを視界に入れたくなくて、目を逸らす。
それでも、そいつが視界にちらつくのは、なぜだろう。
――ヤバくない奴は、こんな場所に来ないよ。
――知らないよ。そもそも、どこなんだよここ。
――「どこなんだよ」? それは、君がよく知ってるはずだろ?
――……ぼくの妄想が生み出した産物、ね。
――よくわかってるじゃないか。
――うるさいなあ……。同じ顔をしといて、えらそうに。
ここの景色は、すばらしい。
でも、目の前にいるそいつは、うっとおしい。
――なんでもいいけど、そろそろ帰りたい。
――じゃあ、帰ればいいじゃないか。この場所は、君が作ったんだろ?
――作ったのはね。でも、帰り方まで考えてないよ。
――本当に帰りたい?
そいつは、突然神妙な顔をした。
――当たり前だろ。こんな、あの世かこの世かわからない場所。
――ふーん……。じゃあ、気は済んだみたいだね。
――?
――まあ、いつでもおいでよ。いつでも、ボクが相手してあげるから。
――いや、もう二度とお目にかかりたくない……。
ふいに、目の前の景色がぱしゃりと弾けた。
気付けば、ぼくは自分の部屋に横たわっていた。
過食と過眠で、「死にたい」気持ちを紛らわせていたこの部屋で。
ああ。
ぼくは、ようやく腑に落ちる。
あの場所は、一種の防衛機制だったのか。
それで、あいつは――。
もう、いいや。なんか腹立ったし、あいつ。
でも、もう一回くらい、会ってもいいかな。
そんなことを思いながら、ぼくは眠気に逆らえず、また眠りに落ちた。
*
「僕だけが、鳴いている」
これは、
ぼくと、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。
連載中。
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