見出し画像

『文章指導を丸投げしない 小学生への文章指導で注意すること(2)』学ビ舎いろはに002

小学生の子供を持つお父さん、お母さん、とくに中学受験を考えている親御さんに質問です。

(A)   日記を書く習慣 (B)文章力の向上

どちらか1つだけを子どもに身につけさせたいとしたら、どちらの力を子どもに授けたいですか?

私は(A)ですが、「(B)文章力の向上」を選ぶ人が多いのではないでしょうか。もちろん私が「中高一貫校の受験対策」を取り扱っている私塾を経営しているから、私の周りでは(B)の要望が高くなるのは必然ですし、私が正しくて(B)を選んだ人が間違っているわけではありません。

ということで今回は「(B)文章力の向上」をテーマに書きたいと思います。親御さんに(B)のメリットを聞くと、以下の二つの返答に集約されます。

①文章力が高いと受験の国語(作文)で有利になる
②文章力が高ければどの教科でもよい成績が取れる

①②ともに、大きなメリットだと思うのですが、私が問題に感じるのは、これらのメリットを期待して「自分以外の誰かに、たとえば私のような学習指導の専門家や大手の塾に、文章指導を丸投げしてしまうこと」です。

え? 専門家にお任せして何が悪いの?

そう思うかもしれませんが、専門家は、狭い意味での指導しかできません。つまり受験に合格させることしかできません

は?! 受験に合格させられればいいじゃん! 

そう思う人は、皮肉ではなく、以下、時間がもったいないので読まなくて大丈夫です。今回は①について考えてみます。

①文章力が高いと受験の国語(作文)で有利になるか

これはまちがいなく有利です。ふだんから文章を書くのが大好きな、スペシャルな子は別として、ほぼトレーニングしていない子が、テストの制限時間内で作文を書けるイメージなんてわきません

となると、受験をする場合、「めっちゃトレーニングする一択」ですが、ここで私が主張したいのは「文章指導のプロに丸投げしないで欲しい」ということです。

受験に合格しやすい作文ははっきりしています。

①テーマや条件に対し、明快に答えている。
②構成が整っている
③自分の考えが述べられている。

わかりやすいように例題をたった今作り、合格すると思われる作文を即興で書いてみますね。中学受験(6年生が解答)を念頭に置いています。

問題:SDGsについて、あなたが普段から気をつけていることを書きなさい。ただし本文で使われていた例とは別の例を挙げて書くこと

 僕がSDGsに興味を持った理由は、父が「ペットボトルから完全再生したTシャツ」を河口湖に出店したばかりの、おしゃれなショップで買ってきたからだ。見た目にはユニクロ製品と変わらないが、触ってみると質感が違う。「使われている糸もタグもリサイクルで作られている」と店員さんが教えてくれたと父は胸を張る。さらに父はすでにネットでいろいろ調べていて、Tシャツを作ったのは誰か、どんな技術が使われていたか、近所ではどこのショップで扱われているかを教えてくれた。
 ネットの良さは家にいながら安い価格で、簡単に商品を購入できることにあると思っていた。しかし僕は考え方を変えた。そのシャツは自分で買うにはためらうくらいの値段なのだけれど、ネットでその過程を知れば納得できる。安い製品を喜ぶのではなく、どのような経緯でその価格になっているのか、どんな理念で作られているかを調べる習慣を、普段から気をつけて身につけたい。
 ユニクロがダメではない。それぞれの企業がSDGsの理念を踏まえ、さまざまな技術や商品開発をしていることを知らないのが問題だ。これからも身の回りの商品がどのようにして生まれたのかに関心を寄せていきたい。

こんな文章、小学生に書けるはずがない、というのは小学生を見くびりすぎだと思います。

①テーマを見すえるトレーニング
②構成を用意して体験を流し込むトレーニング
③自分の主張を明確にするトレーニング

をつめば、このような文章は書けるようになります。そしてトッピング的に、「胸を張る」といった慣用句や、「ためらう」「関心を寄せる」といった大人びた言葉を使う意識があれば、算数の複雑な計算を解けるようになるよりはるかに短い時間で「合格する文章」を作ることができます

文章講座ではないので、上記について子どもに伝授する方法は省きますが、いずれにせよ、これらのトレーニングを、たとえば私と一緒にたくさん積むことで、文章力を向上させ、合格に近づけることはできます。

じゃあ、Jの先生におまかせします!

という展開を求めていないのに、そっちになっちゃいそうで怖いですが、ここで大事なのは、さっきの例に挙げた作文を読んで

すごい!

と思わないことです。作文としてはよく書けていますし、合格する作文だと思います。ただすごいのは「作文をまとめあげた能力」です。書いてある内容は「それっぽい」だけで嘘かもしれません。

本当に大切なのは、実際に生徒自身が「調べまくっている」ことだったり、「自分にもリサイクル商品、開発できるかな?」と思って、リサイクル商品を子どもながらに開発しようと夏休みを全部研究に使っちゃうことだと私は思います。夏期講習とかいかないで、夏休みを研究に使っちゃう。

 僕は再利用できるトイレットペーパーを作ろうとしていますがむずかしいです。(以下余白)

というような文章しか書けない子の方が、勉強に対しては本気では?
そんな子でも合格できるように、受験指導してあげた方がいいでしょうか? たとえば、作文が苦手な子は、このような補足を付け加えれば、受かる確率も少しは上がるかもしれません。

 僕は作文は苦手です。だから長い作文は書けませんが、リサイクル商品に興味があります。再利用できるトイレットペーパーを作ろうとしていますが、むずかしいです。中学で勉強してぜったいに成功させたいです。(以下余白)

しかし、これらの補足を加えてこの子が何とか合格できたとしても、待っているのは、学校主導の、中学入学直後から始まる大学受験勉強だと思うと、私としては気が重いです。では、親はどうすればいいでしょうか?

3に続く

過去の記事一覧です。

◎001~010

001『鳥の種類は書くべきか? 小学生への文章指導で注意すること(1)



ここから先は

0字

読後📗あなたにプチミラクルが起きますように🙏 定額マガジンの読者も募集中です🚩