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きみのとなりにいる僕⑦

   「先生、さようならー」  
 キンコーンカーンコーン。帰りのチャイムが夕暮れの校舎に響き渡る。  
 「おー、気をつけて帰れよー」  
 何気ない日常を過ごす日々。でも、心はどこか虚ろだ。彼のことを思うといつも不安と期待に胸は締め付けられる。なぜ?ここのところずっとそんな調子だ。今日もミスったし。教頭の山中先生に注意されてしまった。  
 「はあ……」  
 深い溜息を吐く。おっと、教頭に見つかるとまた小言言われるな。しかし……。自分はこのままで良いのだろうか?このままで居たい?彼と付かず離れずの関係。そう割り切るしかないのか。きっとこれ以上を望んではいけないのだ。  
 イカロスは父の言いつけを破り太陽に近づき過ぎてロウで出来た翼を失い海に落ちて死んだ。先ほど授業でやった国語の教科書に載っていた。  
 それと同じだ。高望みはするもんじゃないってことさ。  
 今だって充分幸せだ。そう自分に言い聞かせる。 
 彼が本当はどう思っているのかなんて考えたくない。  
 「やめやめ」  
 頭を振り思考を外へと飛ばす。  
 「小林先生!」  
 げっ。教頭だ……。まずいとこ見られた……。まーた始まるぞ。  
 「最近君は少々弛んでいるのではないか?そもそも……」  
 はあー……。  
 キーンコーンカーンコーン。  
 薄暗くなってきた廊下にチャイムと教頭の声が響き渡る。