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1984年 ジョージ・オーウェルは現代への告発文か

これは、本当に70年も前に書かれた本なのだろうか。この物語は今の世界や日本の姿を映し出している。

舞台は1984年、世界が3つの国(オセアニア・ユーラシア・イースタシア)に分かれ、主人公ウィンストンは、「ビッグ・ブラザー」率いる党が支配する全体主義的な国家オセアニアで、歴史を改ざんする仕事についている。人々の行動はすべて監視され、党の思想に反するものは「思考警察」によって摘発。党は1人の人間が生きていた事実すら「蒸発」させてしまう力を持っていた。厳しい思想統制の中でも主人公は、監視の目をかいくぐりながら、本来の思想信条を持ち続けようと奮闘する。

何が現代と通ずると感じたか。私なりの解釈を書いてみたい。

感想についてのご意見をお待ちしております。

①「過去を消す主人公」→「#森友問題」「#桜を見る会」「#検察官定年延長」「#安倍政権」の写し絵か。

主人公ウィンストンは、報道・娯楽・教育を管轄真理省に勤務し、党にとって都合の悪い過去を改ざんする業務を担わされている。

過去に書かれた新聞記事で党に批判的な内容を書き換える。さらに、きのうまで同盟関係にあった国が、きょうからは戦争状態になり、一度も同盟は結んでいないという事実が作り上げられる。(実際に戦争が起こっていることも確認することができない)

このように、党が”うそ”をついて作り上げる”事実”こそが「真実」となってしまうのだ。

これは、ここ数年、安倍政権下で度々問題になってきた公文書管理をめぐる諸問題と同じではないか。

森友学園案件にかかわる決済文書の改ざん問題。上司(国の中枢)の指示により、文書の書き換えを強制され、自ら命をたった赤木さん。遺書には、上司の考えを最後まで受け入れるのを拒み続けたことや、その真相がつづられていた。しかし国は「自らが行った調査こそが事実」「再調査の必要はない」とかたくなに過去を顧みようとしない。

今年は中止となった「桜を見る会」も同様。過去の記録を遅滞なく破棄し、真実を追求することができなくなってしまった。

極めつけは、検察官の定年延長問題。本来は検察庁法によって、検察官の定年延長は63歳と決められいる。しかし、政権と近しい人物を検事総長にすることを意図してか、誕生日寸前に定年延長を閣議決定。しかも、口頭での決済で文書での記録は残されていない。さらに、国会に提出された検察庁法改正案では、この定年延長のプロセスを法的裏付けがあるものにしようというのだ。

この本を読めば読むほど、恐ろしいほどにいまの日本と重なる部分が多いのだ。

②「ニュースピーク」→「#トランプ大統領」に見る、ボキャブラリーの乏しさ。

この物語の中では「ニュースピーク」と呼ばれる公用語が登場する。我々がいま話しているような言葉を「オールドスピーク」ととらえ、「ニュースピーク」では、語彙がどんどん減らされていく。

例えば、「良い」「悪い」→「悪い」という単語が抹消され「良くない」のみとなる。

このように、単語をどんどん減らしていくことで、人々の表現活動を制約していき、思考の範囲を狭めていく。思考を表現することばがなくなる。そうすることによって、党にとって都合の悪い思考をなくしていこうというのである。

現代におきかえてみれば「トランプ大統領」の言葉づかいはどうだろう。よく、中学英語と揶揄されることもあるが、オバマ大統領のボキャブラリーの豊かさに比べては、語彙は非常に少なくなっているはずだ。トランプ大統領がそこまで意図しているかはわからない。しかし、超大国のリーダーの言葉づかいは世界に大きな影響を与える。この本の警告に耳を傾けるべきではないか。

③全体主義的な教育が監視を生む

この小説で「どきっ」としたのは子どもたちの言動だ。

主人公が同僚の自宅を訪れた際に7歳の男の子と妹に「思想犯だ」と突然、糾弾される。あきれた母親は、地域の見世物になっている「絞首刑」を見に行くことができずに不満を募らせているとかばう。子どもたちは純粋に党の教えをまもり、党は、子どもたちのスパイ活動を称賛するような新聞記事も世の中にだす。家庭においても母親も子どもたちから監視される対象となってしまうのだ。

日本の教育も全体主義的、軍隊的な指導が根強く残っている。

小学生は入学すると机の上の筆箱や教科書の配置を全員同じにするように指導。「心はひとつ」「絆」「みんなで一緒に頑張る」といった言葉が多様され、組体操のような危険な行事が今でも残っている。個性を尊重できない教育は、集団からはずれてしまった子どもを排除、監視する力学がどうしても働いてしまう。

この物語ほど、深刻ではないにせよ、全体主義的な教育は改めるべきだと感じる。

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