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愛の消化不良/『コーダ あいのうた』感想

人と人とのコミュニケーションに際して使われるわかりやすいものに言葉があるが、当然言葉が先にあるわけではなく、気持ちが先にあって言葉が後に生まれたので、言葉で表せない気持ちなんか無限にあるはずだ。音楽を用いた映画では当然、音楽が作品を動かす大事なピースとして組み込まれるだろうけれど、この映画では歌の全てが単なるシーンではなく雄弁な台詞として機能していたので、ほとんどのシーンで泣いてしまった。というか後半30分からエンディングまでずっと泣いていたので自分がちょっと面白かった。自分

    • 『街の上で』感想/丁寧に言葉を紡ぐことと、言葉にする必要のないこと

      (※ネタバレあり) 『あの頃。』から引き続き、今泉監督の映画を拝見。だいぶ前に『愛がなんだ』も観たので、合わせて3作目になる。 今作で最も印象的だったのは、丁寧に紡がれた言葉。人と人との会話だ。 映画作品である以上、ストーリーや大筋というものはある。でもこの作品においてそれらは、人と人、言葉と会話をラッピングするための箱に過ぎない。あくまで主軸は人と言葉に置かれている、それくらい、言葉選びの丁寧さが際立っていた。 特に印象的だったシーンその1は(おそらくこの映画を観た人

      • 『DIVA ME/ゆっきゅん』ゆっきゅんが成し遂げた"DIVA"という概念の解放、あなたは神になれなくてもDIVAにはなれる

        divaとは (オペラの)女性歌手,主役,プリマドンナ -weblio英和和英辞書より "DIVA"とは、この世界線において一般論的には「名詞」として扱われる。 つまり「DIVA ME」という文における"DIVA"は、動詞として扱われていること(私をDIVAせよ)が推察され、文法としてはおかしいということになる。 しかし、これは私見だが、この解釈は正確ではない。 逆である。『DIVA ME』がおかしいのではない。ゆっきゅんは『DIVA ME』によって、"DIVA"という

        • 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』感想/ありがとう、わたしだけの(あなただけの)エヴァンゲリオン

          (※ネタバレあり) 感想と言っても何から書けばいいのか。 庵野秀明さん、ならびにスタッフ・キャストの皆様、本当にありがとうございます。 まずは感謝の言葉しかない。 わたしとエヴァンゲリオンの出会い。 小さい頃、父親に連れられたレンタルビデオショップ(!)。 店内に配置された小さいテレビの中で戦うエヴァンゲリオン弐号機と量産機の姿が妙に頭から離れなかった。 それから数年が経った中学生時代、まずはコミック版を購入し、初めてその物語に触れることになる。今でも覚えているが、その

        愛の消化不良/『コーダ あいのうた』感想

        • 『街の上で』感想/丁寧に言葉を紡ぐことと、言葉にする必要のないこと

        • 『DIVA ME/ゆっきゅん』ゆっきゅんが成し遂げた"DIVA"という概念の解放、あなたは神になれなくてもDIVAにはなれる

        • 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』感想/ありがとう、わたしだけの(あなただけの)エヴァンゲリオン

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          『すばらしき世界』感想/たまたますばらしきこの世界で、わたしは今を生きている

          (※ネタバレあり) 楽しく生きていたい。 だからわたしはそのために、向いてることをしていたいと思っている。 やりたいことがあって、それがもし自分に向いていて、しかも運良く、誰かのためになったりなんかしたら。それは最高だと思う。 でも、たとえば自分にいちばん向いてるものが暴力だったとき、この世界でどうやって生きていけばいいんだろう。 わたしはこういう映画を観た時、自分がどれだけ恵まれているかってことに立ち返る。いつも本気で思っているつもりだけど、それでも、改めて、自分は恵

          『すばらしき世界』感想/たまたますばらしきこの世界で、わたしは今を生きている

          『あの頃。』感想/推しと暮らし、日々と光

          (※ネタバレあり) 推しとの出会いはほんの小さなありふれた偶然から始まることもあれば、でもそんな小さな出会いが劇的に人生を動かすこともある。 それは推しに限らず、ありとあらゆる出会いに言えることかもしれないけれど。 松坂桃李さん演じる劔さんは志したはずの音楽活動も上手くいかず、バイト漬けの侘しい暮らしの中、友人が置いていったDVDをきっかけに、松浦亜弥さんの魅力にのめり込んでいく。 こういう時いつも思うことがあって、わたしが何かに強烈に救われる時っていうのは悲しみや苦し

          『あの頃。』感想/推しと暮らし、日々と光

          『花束みたいな恋をした』感想/あの恋を「花束」と呼べることがふたりの本当の才能だと思う

          (※ネタバレあり) まずとても丁寧な映画だと思った。物語に登場するカルチャーやコンテンツがどういう属性を持っているか(持たせようか)、綿密に吟味した感じが凄くしたし、言葉の使い方やフレーズの取り回しも、そのひとつひとつが作品の中でどういう意味を持ってくるのか、観客にどういう印象を与えようというのか、とても細かいところまで作り込まれていると思った。ここがチープだと寒い映画になってしまっていたと思うから、この作品のキモだったように思う。 さて、あなたは運命を信じますか?わたし

          『花束みたいな恋をした』感想/あの恋を「花束」と呼べることがふたりの本当の才能だと思う

          『The Last of Us Part II』感想/鉄の手触りと、生と死の端的かつ強烈な存在感

          『The Last of Us Part II』(通称:ラスアス2)を2週間ほど前にクリアした。クリアしてから手を付けていないが毎日のように思い出す。ふわふわと感触や感情を思い出して、涙がこぼれたりしている。凄まじいゲームだった。 わたしとしてはゲーム好きというより映画好きの友人に勧めたい。でも映画好きだからと言ってゲームが好きかはわからないし、まあまあの難易度だし長いから気軽には勧められない。いっそ10時間くらいの映画にしてくれたらと考えたけれど、そんな長い映画誰も見ない

          『The Last of Us Part II』感想/鉄の手触りと、生と死の端的かつ強烈な存在感

          『ミッドサマー』感想/花、ドラッグ、多幸感について

          いま話題のスリラー映画『ミッドサマー』観てきましたので、感想を書きます。わたしはあまり映画に詳しくないので、知識の浅さや知見のなさを露呈してしまうかも知れませんが、それでもそういう人間の感想にも需要はあるのではないかと思い、感じたことを純粋に書こうと思います。ですので、あくまで個人の意見と捉えていただけるとありがたいです。また若干のネタバレを含みますので、そういうのが気になる方は映画をご覧になってから読んでいただけると幸いです。 まず印象的だったのは、物語の舞台である村の、

          『ミッドサマー』感想/花、ドラッグ、多幸感について