21-1.ニューハーフの人との出会い①
あれから、僕に見える世界は少し変わりました。それでも、どうやらまだ知らないことはたくさんあるようです。Kさんとは特にお付き合いをするようなことはありませんでしたが、頻繁にお酒を飲んで色んなところへ連れて行ってもらいました。ただKさん曰く「女の子とはこれからたくさん知り合うだろうし、普通に生活してたら起きないことをしよう(笑)」とのことでした。
ある日僕はアルバイトを終えて携帯を開くと(当時はまだパカパカ携帯でした)、Kさんからメールが届いていました。
『お疲れ様。ちょっとたいに会わせたい人がいるからまた連絡ちょうだい。』
それを見て、僕はすぐに『Re:夜だったらだいたい空いてますよ!』と返信しました。しばらくすると、また返事がきて『Re:Re:じゃあ土曜日の夜、前と同じ居酒屋で待ってるね。』とのことでした。僕はKさんに会えることがとても楽しみで、あっという間にその日は来ました。
僕は道を覚えるのが得意な方なので、だいたい一度行ったところは迷わずたどり着くことができます。でも前にも来たはずの土曜日のオフィス街は人が少なくて、少し不安になりながら地下の居酒屋の戸を開けました。
「たいちゃんいらっしゃい!」
女将さんは僕の顔と名前を覚えてくれてて、すぐにKさんの横に案内してくれました。Kさんはいつも通りの笑顔で「よく来たね」といって頭を撫でてくれました。僕たちはビールで乾杯すると、早速今日これからどこに行くかの話になりました。
Kさん「今日はね、女の子みたいな男の子に会いに行こうと思っててね。きっとたいも会ったらビックリするよ(笑)」
たい「どういうことですか???」
全く意味が分からなくて、でもKさんも一緒だから不安はありませんでした。
Kさん「まぁ、行けば分かるよ(笑)」
たい「よく分からないけど、でも楽しみです。あ、そういえば…」
僕にはずっと気になっていたことがあって、それを聞いてみることにしました。
たい「あの、バイってなんですか?」
Kさん「そう言えば言ってなかったね(笑)たいも俺もそうなんだけど、この前会ったJちゃんとは違うのは分かる?」
たい「男の人を好きになる人のことですか?」
Kさん「うん、そこは一緒なんだけどね。たいは女の子でも好きになるでしょ?でもJちゃんは男の子しか好きになれないんだよ。だからJちゃんみたいな人は『ゲイ』で、俺たちみたいな人は『バイ』、女の子しか好きになれない人は『ノンケ』って言うんだよ」
たい「そうなんだ…僕は『バイ』なんですね」
Kさん「別になんでもいいんだけどね(笑)そういう所に行くと聞かれたらするから、なんとなく知ってた方がいいよ」
たい「分かりました!」
僕は覚えた聞いた『バイ』っていう言葉に、ちょっとだけ違和感がありました。僕は"最近女の子にはあんまり興味がない"気がしていて、どっちかというと"僕はゲイなんじゃないか"と思っていたからです。
僕が居酒屋に着いて2時間くらいが経った、ちょっとお酒に酔ってきた頃にKさんは
Kさん「さ、じゃあそろそろ行こうか」
と言いました。僕は会計をしに行ったKさんの上着を持って席を立ちました。「ごちそうさまでした」と言ってそのまま外に出ると、いつものようにタクシーに乗ってまた夜の街に向かいました。
『今日はどんなことがあるんだろう…?』
不安よりも知らないことが知れるのがとても楽しみで、この時の僕はKさんと一緒なら何でもできそうな気がしていました。
僕はお気持ちだけでも十分嬉しいのです。読んでくださってありがとうございます🥰