20.僕の中で起きた変化
僕が目を覚ますと一緒に寝ていたはずのKさんはもうそこにいなくて、そういえば服を着ていないことに気付いてタオルを巻いてリビングに行くと、Kさんはコーヒーとトーストを用意してくれていました。「おはよう!いいタイミングで起きたね(笑)」っていつもと変わらずニコニコしながら言われて、この瞬間僕は今まで『なんとなく思い描いていた世界』とはお別れすることにしました。なぜなら僕は他の人と違っていても、別に普通じゃなくても別にいいんだって心から思えたから…。
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—ここまでのお話のこと
まだ若かった頃の僕はだいたい自分が直接触れたものしか理解(というか納得?)できませんでした。でもその結果一度でも何か感じるものがあれば、僕はなるべく素直に感じたままのものを自分の中に残したいと思っていました。
今まで『普通に』異性とお付き合いをして、恋人になって、いつか結婚して、子供が産まれて…知らない間に漠然とそんなことを考えていました。別にそれが嫌なわけではなかったんですが、初めて『オカマ』とか『ゲイ』と呼ばれる人達に直接話を聞いて衝撃を受けました。
『同性を好きになることは変なことじゃない』、それを自信を持って教えてくれたお兄さん(お姉さん?)たちとの出会いで僕の価値観は大きく変わったんです。この時も、まだ書けてない出会いの中でも、きっと僕の中にあったノンケ(シスジェンダー・ヘテロセクシャル)とゲイ(シスジェンダー・ホモセクシャル)の境目が少しずつなくなっていったような気がします。
—知らない間にノンケになってた?
もしかしたら忘れてるだけで、もっとキーになる出来事はあったのかもしれません。ただ『ちんちんを見ただけ』のはずのSくんとの出来事は、僕にとってかなり鮮烈だった気がします(あの時の感じをちゃんと書くには僕の表現力が足りませんでしたが)。ぼんやりながらも自分の中にある興味(好奇心?)…でもしばらくの間それが僕の中で薄れていた理由はなんだったんでしょうか?
思春期に学校で習う性教育では、およそ(フワッとした表現の)セックスと妊娠がセットになっています。コンドームは『避妊具』として書かれます。一昔前はコンドームの自販機があっちこっちにありましたが、そこには『明るい家族計画』なんて書かれたりしていました。もしかしたら意識していないところで、僕は『恋愛やセックスは異性とするもの』だと思わされていたのかもしれません。
そしてそこに特別違和感を感じない周りの人達を見ると、「やっぱり自分もそうあるべきなんだろうな」と思っていた気がします。そして気付かない内にできあがってしまった価値観は、なかなか自分の力だけでは変えられないものなのかもしれません。
—同性を知ってからの『僕の中の疑惑』
僕は男なのに、男の人ともセックス(とはまだ言えないけど)を経験したし、たぶんそれは他人(ヒト)とは少し(?)違うんだろうなって気はしていました。僕は相手が男であれ女であれ僕なりに好きになれたし、でもその先のことは特に考えてなかったと思います。ただ僕の中で一つだけ確信してたのは、きっと僕は相手が誰であってもプラトニックなお付き合いはできないという思いでした。
理想はそれなりに人生経験があって、セックスについて嫌悪感を抱かない人。なんだったら一度セックスをしてみてから、それからお互いに理解してやっていけそうな人。僕は自分が魅力を感じる人なら、たとえその人の性別が男でも女でも大した問題じゃないんだって知ってしまったんです。
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Kさんと一緒に朝食を食べて、それからなんとなく一緒にテレビを眺めていました。するとKさんは
「たいは結局、男と女で言うと正直どっちが好きなの?(笑)」
と聞きました。このとき僕は悩むこともなく、『好きになれたら男の人でも女の人でもいいと思いました』と答えました。Kさんはニコニコしながら僕の頭を撫でると、「やっぱりたいは俺と同じ"バイ"だね(笑)じゃあ今度は男でも女でもない人とも会ってみる?」と聞きました。
僕はこの時、Kさんの言ってることが理解できていませんでした。
『バイって何?』『男でも女でもない人って何?』
どうやら、僕には知らないことがまだまだたくさんありそうです…。
僕はお気持ちだけでも十分嬉しいのです。読んでくださってありがとうございます🥰