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#158 「壁の中の海」@『サルデーニャの蜜蜂』by 内田洋子

本を読んでいて、時々,視覚以外が”心躍る”振動を起こすことがあります。内田洋子さんのイタリアに関するエッセイ(小説?)を読んだ時にも、活字によって味覚・嗅覚・触覚・聴覚がフル回転しました。

「センサ」ON

 15話の小作品が集まっている中で、一番最初の「壁の中の海」が一番印象的でした。ネタバレになるので詳細は書きませんが、一つ目のこのエピソードが、”コース料理”であるこの小作品集を読み始める時の、”味覚センサー”を大いに刺激して、”読書欲”を高めてくれました。活字を読んでいるはずなのに、過去のイタリアミラノの駅舎の雑踏や主人公の感じた街の匂い、などなど、、、”味わう”ことできました。( スターターとしては、話の内容は思いものですが、、。)

 飛行機の機内食,地上とは湿度が違うために嗅覚が鈍感になり味覚に影響するようです.食前に山椒(さんしょ)の香りを嗅ぐと,嗅覚センサの感度が刺激により敏感になり,同じ料理を食べてもおいしく感じるとBBC制作の番組で放送していました.

NHK・地球ドラマチック「カリスマ料理人 機内食を大改革!」(2012年3月10日に放送)

 まさに最初の小話「壁の中の海」は,その後に続く小作品の”山椒”のように,ピリッとして,ちょっと悲しく切ない大人の味付けをしたこの本の導入話として効果があったと思います.

 考えてみれば、この本を図書館入り口でふと選んだのも,色鮮やかなテーブルクロスの上に美味しそうな檸檬が鮮やかに印刷された表紙に引き寄せられていたのでした.この時点で既に,出版社の方の”戦略”によって味覚・嗅覚が刺激を受けていました.

「香草」

 この小話も特に印象に残った話の一つ.サルディーニャ島でローマ時代から続く養蜂家一族のお話.NHK Eテレのイタリア語入門番組で以前放送されていた「旅するイタリア語」でシチリアが取り上げられていたシリーズで俳優の小関くんが島の養蜂一家を訪問したときの話(2020年3月9日放送 ハチミツの町ザッフェラーナ・エトネーア)ととても重なる内容で,サルディーニャ島の話でありながら,頭の中ではシチリア島の火山エトナ山の麓を蜂と一緒に移動するあの家族の幸せそうな顔が浮かんできてページを読み進めました.


 北イタリアと南イタリアの歴史的・地理的違いなど、これまで知らなかった周辺知識も紹介されていて、”へぇー”と思わされることが色々ありました。”ミラノ発”ファッションや”ブランド品”に対する内田さんの考え方も記されて理、共感するところも沢山見つけられます。

「好み」

 「どんな作家が好きですか?」その時々で,流行りの作家であったり,好きなジャンル,知らなかったジャンルでも面白いと思える作家,いろいろと移り変わりがありました.

 内田洋子さんの著作,今回初めて読みとても面白いと思います.たぶん,他の作品も,時間を見つけてまた読ませてもらうと思います.内田さんの作風,自分なりに勝手に考えてみると,

 ビターチョコレートに(向田邦子塩野七三森見登美彦辻村美月浜田マハ)さんたちの”面白エッセンス”を足したドルチェ(スイーツ)を,ミラノのバールでエスプレッソと味わう楽しさ.

という感じです.うーん,上手く伝わっていない気がします.やはり私の表現力では,”5感を震わすこと”は難しぃー.オモシロい本をこれからも忙しい合間を読み,腕を上げるしかないようです.(お後がよろしいようで,,,.) ^_^ 


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