#157 100% Van Gogh! ゴッホ原寸美術館

最近の楽しみの一つは,書棚ではなく出入口付近に表紙を見せ”平積み”されている「イチオシ」の本との”偶然”な出会いです.実は,全くの偶然ではなく,世の中で人気の書籍情報から,あるいは担当者の方の”眼鏡”によって選ばれた,事前セレクションからの”半分偶然”な出会いなのですが,,.その一冊の巻(まき),始まり,始まりぃ~~.

「100%?」思わず不純物がないの?

 図書館に入ると直ぐに,独特なタッチのゴッホ絵画の上の「100% Van Goh!」という文字が目に飛び込んできました.次の瞬間には手に持ちページを繰っていました.

「原寸?」

なるほど,実物大の印刷された本! 
 ^_^

 画家のゴッホ,お気に入りの歴史上の人物の一人です.沼地を埋め立てて国土が作られたオランダに生まれ,「水平と垂直」「彩りの少ない辛い冬」の国から,パリ・南仏の「丘陵地帯の曲線」「青色と黄色」の造形と色彩に富む新たな世界で切り拓いた「印象派」の中の”異端児”的存在のゴッホ.

 「ゴッホ展」があれば美術館に出かけていき,上野の国立西洋美術館やニューヨークやアムステルダムなどの美術館でも実物を見て,少しは「わかったつもり」でいたのですが,「どこに目を付けていたの?」と自分で疑いたくなるほど,気づいていなかったことがあり,驚きながら眺めた一冊です.

「タネをまく人」のカラス

 ミレーの有名な「種をまく人」をゴッホが描いた絵,原寸印刷された紙面を見てはじめて気づきました.黒いのはカラスだったんですね.2羽います.なんとなく,絵の具で影を付けただけだと思っていました.「印象派」の作品だという事を忘れていました.見たままではなく,「感じた風景」(印象)で描いていたので,カラスは黒いカタマリだったんですね.ゴッホさん,私気づいていませんでした.今までずーっと,絵全体を印刷されているときに黒い”シミ”だと思ってました.

「アルルの寝室」 影がない

 解説文を読んでビックリ,ゴッホの室内風景を描いた二枚を並べると,アルルのベットがある寝室,影がありません.遠近法の焦点がウンヌンカンヌンというのは,前から面白いなと思っていたのですが,遠近感を出すときに多用される「影」がありません.まるで,日本の浮世絵のように.見たままを描いていない,,,感じたんですね.

「星月夜」 三日月

 ガウディのように曲線がフラクタルや空気の流れ,ウンヌンカンヌンと今までわかったつもりで眺めていた有名な「星月夜」.糸杉と風の曲線ばかり見ていて,月を見逃していました.ぱっと見,全体が黄色いので「満月」だと勘違いしていました.三日月です.小さな星の周りは完全に対称な円ではっきり描かれているのですが,月は色合いが違います.今まで,どこに目を付けてみていたのかと思わず思いました.三日月だけが印刷された実寸大の紙面で気づきました.まさに,”見れども見えず”でした.全体の印象に引っ張られ,細部の作者の”緊張感”を見逃していました.

3Dプリンタ

 この本の最初に書かれてありましたが,筆のタッチ,絵の具の重なりなどは,2次元の印刷では再現されていません.近いうち?いつか??3Dプリンタで,油絵具の盛り上がりが再現される日が来るのを楽しみにしています.当然,実物と違うのは承知のうえで,やはりあの絵具の重なりを手で触ってみたいものです.(美術館で自分の手では触れることができないので,,,.)

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