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#43 授業は「アクティブ」と「反転」

高校生の頃、いわゆる”理系”クラスを選択した自分は、社会科目を何を選択するか迷いました。当時は、化学分野の次に好きだったのが日本史だったので、社会一科目は「日本史」にすぐに決め、もう一つは? 哲学が何となくおもしろそうだと思い「倫理社会」”倫社”を選択したら、担当の先生がユニークな方でした。今教員になって思うのは、あの先生は何十年も先取りした授業スタイルを既に実践していました。”アクティブ・ラーニング”と”反転授業”という二つです。

 倫社の先生は、クラスみんなに「自分の担当」を年度初めに割り振ります。”伊藤”は出席番号が前の方なので、教科書の最初に出てくる「キリスト教」が私の担当に割り振られました。担当者は授業までに自分で調べてきて、みんなの前で発表し、先生からの”口頭試問”を受けます。「来週から始めます。」と言われ、ギクッ!!と思いました。なんせ相手は、天下のキリスト教、そう簡単ではないだろうなと予想がつきます。学校の図書館、県立図書館などに行き、何となく読めそうな本を4冊借りてきて読み始め、ノートに大切なキーワードを拾い上げ次の授業に備えました。授業で先生がニコニコ顔で、「では、キリスト教で大切なものは何ですか?」と質問され、”借り物の即席知識”で答えました。その中に「アガペー」がありました。先生のニコニコ顔は続き、「他には?」と問われ「エロスです」と答えたら、クラス男子から一気に「ウォーッ!!」と声が上がりました。答えた本人は、何となく恥ずかしくて黙っていると、先生から本来の意味を説明していただきクラスは平穏に戻りました。

 あの倫社の先生は、よく仰って(おっしゃって)いました。「先生が教えるんじゃなくて、君たちが自分で勉強するんだ。授業の前に自分で調べてきて、みんなに説明して、僕がそれをフォローする。それが勉強だ。」これを聞いた当時の私は、(自分が手を抜いているのでは?)と思いました。自分も教える側の立場になって、あの先生の偉大さがわかりました。「教員が教えずに、生徒・学生が自ら勉強する」これができたら、学習は確実に身につくと思います。倫社の先生は、「よく他の学校から授業の見学に来たいと申し込みがある」と言っていました。もしも可能なら、今自分もあの倫社の授業を見学したいと思います。きっと、出席番号1番の生徒が”アガペー”について、説明していることでしょう。