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#59 イタリア語 事始め(9)三つ足とヘビ シチリア島のシンボル

前回は”三つ足のカエル”でしたので、今回は”三つ足とヘビ”について書きましょう。

 NHK大河ドラマ好きなので「麒麟が来る」と同様に「いだてん」もよく見ていました。。番組のオープニングで3本足がひざを曲げて放射状に書かれた独特なデザインが、なぜか日本離れしているなと不思議でした。マラソンランナーが前半の主人公だからかなとボーッと思っていました。デザインが気になって調べてみたら、マン島の旗デザインが同じ三脚巴(さんきゃくともえ)でした。イタリアのシチリア島も同じ基本デザインですが、中央に違う意匠が重ね書きされた三脚巴でトリナクリアと呼ばれています。シチリア島の形は三角形なのでこのデザインは親しまれているようです。現在のシンボルの中央には、人の顔と小麦が”あし”らわれています。ローマ帝国の食糧庫だったシチリアなので小麦はマッチしています。しかし、本来は蛇女(メドゥーサ)だったそうです。(おおぉー。あなたに見られると私は石になってしまう。)ミケランジェロやルーベンスの絵画で描かれているのは、想像図で恐怖心をあおるような怖い絵です。

 蛇は西洋文化では、何となく嫌われています。十二支に巳(み)があり、私は”蛇年生まれ”なのですが、これを英語で海外の方に自己紹介で伝えようとしたら一瞬表情がこわばられた気がしました。ドラゴン(竜)ではないの?と助け船が相手から出ましたが、龍(たつ)年生まれがドラゴンですと答えてしまい、気まずさが残りました。(今思えば、あの時ドラゴンと言われて、スルー”する”のが大人の対応だったかなと思わなくもないです。) 

 ずいぶん昔に読んだ、梅原猛さんの研究グループの安田喜憲さんの本(たとえば、『森と文明の物語-環境考古学は語る』)にいろいろ蛇と文明にまつわる面白い話が載っていました。安田さんによると、蛇は本来、大地の豊かさ(豊穣)の神の象徴で、世界中の古代文明で多く尊敬されていたとのこと。地中海文明の古代遺跡で発掘されたメドゥーサは笑顔で、神として敬われ、多神教の文化では親しまれていました。しかし、一神教が世界中に広まってくると、大地の豊穣のシンボルは排除されはじめ、神から悪魔へ転身させられ、神話の中で多くの蛇が”成敗”(せいばい)されています。メドゥーサは人を石に変えてしまう怖い顔の、悪魔に変えられてしまいました。

 しかし、いくつかの”生き残り”の蛇デザインはあります。蛇の強い生命力が”命のシンボル”としていまだにデザインの中で生き残り、救急車やWHOマークに使われている棒にまつわりつく蛇がデザインされています(アスクレピオスの杖)。植物のつたに見えあのクネクネは、勝者の栄冠のオリーブの葉ではなく蛇です。

 このタイトルにある「三つ足とヘビ」であるシチリアのオリジナルのデザインは、三つ岬を頂点とするシチリア島の”三角形”と大地の恵みの象徴の”蛇”からできていました。いつか自分が、シチリア島出身のコッポラ帽を被った真面目なイタリア人にあったら、この話をしてみたいところです。(イタリア語、それまでに話せるといいなぁー。独りイタリア語勉強を始めて3カ月、その気配は一向にありません。)、、、お後がよろしいようで。

(手書き図:iPad+GoodNotes5 自分で書き写してみました。相変わらず、まだまだです。成長の”余地”が豊富です。)