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マイベストアルバム2021

1.はじめに

ということで毎年年末恒例になっているマイ年間ベストアルバムです。

2021年春から初夏にかけて世の中は昨年の状況を引っ張り続けるどころか悪化を辿っていたこともありエンタメ業界、特にライブやフェスを取り巻く環境は厳しさをましていました。
が、秋に入る頃には落ち着きを見せはじめて制限はありながらもイベントは徐々に再開、復活の兆しが見え始めたのは素直に嬉しいです。

年末に差し掛かり現れたオミクロン株の今後の侵攻には不安が残りますが、感染拡大第6波につながることなくなんとか落ち着いて欲しいとただただ願っています。

個人的には9月に異動がありこれまでの日本全国を飛び回る出張スタイルの働き方からデスクワーク(在宅含む)重視の働き方に転換したという大きな変化がある年でした。

これからどんどん子供が大きくなり活動的になってくる時期に差し掛かってくるタイミングでのこの働き方の変化は非常にありがたく思っています(とはいえ全国を旅しながら各地のライブハウスやレコードショップに行けなくなるのは残念ですが・・・笑)

また、今年は自分の音楽の聴き方について色々と悩んだ年でもありました。というのも、ここ数年は『新しいアーティストを!』『新しい作品を!』という意識でとにかく新譜を聴きまくるスタイルで音楽と向き合っていました。それによって素敵なアーティストに出会えたことも事実なのですが、一方で『いいなぁ』と思った作品ですら何度も聴き返す機会はほぼなくなり、どことなく義務的に音楽を聴いている自分に気がついてしまい虚しさを覚えたのです。

そこで9月からこれまでの”とにかく新譜を追う”という意識を捨て、良いと思った作品をゆっくり何度も楽しむというスタイルに変えてみました。
結果、トレンドキャッチはだいぶ劣り、聴いた作品数もここ3年間で最も少ない年になったものの、すごく穏やかな気持ちで音楽を楽しめている自分がいます。

実際のところ、育児や家事も相まってひたすら新譜を追いかけるには圧倒的に時間が足りないこともあり、おそらく来年もこのスタイルを続けていくのでしょう。もちろん新譜を追うことを第一にしないってだけで新しい音楽との出会いは求めていますのでオススメあればぜひ教えてください!

ということで前口上が長くなりましたが2021年のマイ年間ベストアルバムです。今回は『良いなぁ』と思った今年リリースの作品を洋楽・邦楽、ジャンル問わず25枚選びました。
例年同様25枚に順位は付けていないので全部1位だと思ってください(笑)。全作品Spotifyリンクを付けてありますので興味があるものを聴いてもらえたら嬉しいです。あと最後に全体を通した簡単な雑感も載せてますので良かったらぜひ読んでやってください。

2.マイ年間ベストアルバム2021

Arlo Parks「Collapsed In Sunbeams」

Bearwear「The Incomplete Circle」

Billie Eilish「Happier Than Ever」

Black Country, New Road「For the first time」

Claud「Super Monster」

DYGL「A Daze In A Haze」

ENDRECHERI「GO TO FUNK」

For A Reason「Lights and Signs」

goldrink「For a heart of gold」

HONNE「LET'S JUST SAY THE WORLD ENDED A WEEK FROM NOW, WHAT WOULD YOU DO?」

Julien Baker「Little Oblivions」

KID FRESINO「20, Stop it」

Lana Del Rey「Chemtrails Over The Country Club」

Little Simz「Sometimes I might Be Introvert」

Mustafa「When Smoke Rises」

NOT WONK「dimen」

Porter Robinson「Nurture」

RADWIMPS「FOREVER DAZE」

ROTH BART BARON「無限のHAKU」

SACOYANS「Gasoline Rainbow」

Silk Sonic「An Evening With Silk Sonic」

Snail Mail「Valentine」

Taylor Swift「Red(Taylor's Version)」

アイナ・ジ・エンド「THE ZOMBIE」

クレナズム「Touch the figure」

揺らぎ「For you, Adroit but soft」

3.2021年マイベストアルバム雑感

・個人的には例年にも増してHIP HOP周りを聴いてたイメージがあったんですが、いざふたを開けてみると全体的にバンドと女性シンガーソングライターの作品が多く入った印象がある25枚になりました。

・まずはバンドシーンから。昨年から引き続き2021年もアーティスト自身の音楽体験における原点回帰が想起される作品が多くリリースされた印象があります。コロナ禍において、ライブをはじめとする外向きな活動を自粛せざるを得ない状況下で必然的に『なぜ自分は音楽を行うのか?』という問いに向き合い続けながら製作を続けたアーティストたちが辿り着いたのが自らの音楽的原体験であったという理由が少なからずあったのではないだろうかというのが僕の考えです。
そしてその回帰した先にある音楽は(世代的にも)僕自身の音楽における原体験と重なることが多いため、結果的に僕の心の琴線にも触れまくったということなんでしょう。

Bruno MarsとAnderson .Paakのスペシャルユニット・Silk Sonicの届けてく
れた70年代ソウルへのスウィートな愛に溢れた作品は言わずもがな。

DYGLは彼らの音楽的なルーツでもある2000年代の音楽を参照した結果、僕自身も思わず『あれ?今2021年だよな?俺は今高校3年生(2002年)じゃないよな??』と呟きながら何度も何度も聴き返すような懐かしさ(ただし今聞くと新鮮)に溢れる作品となっていました。

昨年のマイ年間ベストにも入れた福岡のSACOYANSは突き抜けた轟音ギターに耳に張り付いて離れなくなるような情念がこもるボーカルが乗る凄まじい熱量の2ndアルバムをリリースしたかと思えば、兵庫の新星・goldrinkは20代前半の若者たちにBloodthirsty Butchersの面影が見え隠れする21年オルタナの代表作と言いたくなる1stアルバムを届けてくれました。

次に、今年はシューゲイザーやドリームポップもよく聴いた一年でもありました。昨年から引き続いて在宅勤務がメインだったのですが、ギターの轟音と合間をゆらゆらと漂うボーカルのかけあわせが目の前の仕事への集中力を高めてくれたからかもしれません。
九州のシーンを牽引するクレナズムは4枚目のEPにしてシューゲイザーを下地にしつつもよりポップな方向へ舵を切るという新展開を見せてくれましたし、2019年のフジロック・ROOKIE A GO-GOのステージを見て心をガッチリ掴まれた揺らぎのアルバムはより深く深く轟音の海に潜った国内シューゲイザーの金字塔と言いたくなるような素晴らしい作品でした。

ROOKIE A GO-GOと言えば2020年の配信でUSインディーをベースにしつつ幅広い音楽性を感じさせるサウンド、初期リアム・ギャラガーのようなかっこいい佇まいに完全にノックアウトされてしまったBearwear。待望の1stアルバムは1枚を通して海辺の家で生活する情景が思い浮かぶようなコンセプチュアルな作品で、高すぎた僕の期待のハードルを簡単に飛び越えていきました。

また、今年はキャリアあるバンドの歩みを止めないチャレンジングな姿勢に心を震わされた一年でもありました。
”らしさ”からブレることはないもののHIP HOPのビートアプローチをふんだんに取り込んだ作品をリリースしたRADWIMPS。とにかく”過剰”に振り切った結果、誰も聴いたことのないような新しい音像と楽曲構成を生み出したNOT WONK。6年ぶりのリリースにして現行シーンに惑わされずに徹底したメロディック・ハードコアを貫いたFor A Reason
昨年リリースの「極彩色の祝祭」では彼の中にあるヒリつくような深淵を表現して若干の怖さすら漂わせていたROTH BART BARONはその先にある白銀の美しくも儚い世界を表現した傑作をリリース( A_oで共演したアイナ・ジ・エンドのアルバムも、どのジャンルで歌っても彼女の歌になるというシンガーとしての天賦の才を感じさせる作品でした)。
キャリアを積んだアーティストだからこそ見せられる余裕から生まれるチャレンジが音楽を面白くしてくれています。

・次にシンガーソングライター。25枚を見ていると、特に自分自身を信じて音を楽しむ姿勢を貫いた女性アーティストの作品が多く入っているような気がします。
地元に戻り全楽器を一人で演奏しながら原体験を表現したJulien Bakerやこれまでのパブリックイメージを打ち破って今の自分を徹底的に表現したBillie Eilish、Phobe Bridgers主宰のSaddest Factoryの1stリリースにして自らのクィア・アイデンティティに対する苦悩をポップな音楽に昇華させたClaud、長い戦いを経ながら過去の作品に今の自分のエッセンスを注入し続けるTaylor Swift、生音をバックに黒人女性として今を生きる自分を表現したLittle Simz(彼女はSSWではなくラッパーですが)・・・どの作品も並々ならぬエネルギーを秘めながら、それでいてアーティスト本人がなによりも音楽を楽しんでいる姿勢が伝わってくる名盤です。

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なんだかんだで今年も素晴らしい作品揃いでしたね(これも毎年言ってるけど)。2022年は少しずつライブやフェスが開催され、オーディエンスとの触れ合いから影響を受けた作品がたくさん生まれる年になればいいなぁと心より願っております。

今年もありがとうございました!
みなさん、良いお年をお迎えください!!



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