泣かないで、東京。

 人混みの中にいると安心した。「誰かと一緒にいる」そんな感覚が強く突き刺して、大勢の人にうまく紛れ込んでいるという自信が安心感を生んだ。街全体がマイホームのような安心感。マイホーム・タウン。そんな感覚でいれたのに。

 いつしか。どうしてだろう。色んな人の、1人1人の背景が見えてくる。年を重ねれば重ねるほど、多様な生き方が存在するということを悟る。見たくないのに見えてしまう。忙しい街。容姿で比べてみたり、恐らくの職業や年収を予想して比べてみたり。物理的に忙しいだけでなく精神的に忙しい。名前のない不安が押し寄せてくる。

 駅で1人缶チューハイを飲み顔を赤らめる、おばちゃんとおばあちゃんの間くらいの年齢の女性。もう12月だというのに肌色の脚を12cmほどのヒールで飾っている同い年くらいの女性。しかめっつらで歩く大量の人々。深く帽子を被り、こんな文章を書いているアラサーの私。

 街はストーリーで溢れている。透けて見えるストーリーがありすぎて忙しい。人の心配をしてる暇なんて決してないのに。この街は忙しすぎる。

 泣かないで、誰も。誰も泣かないで。東京。

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昨日『タイトル、拒絶』という映画を1人で鑑賞してきました。とても胸を打たれたんです…。一言なんかでは言い表せられないけれど「女の人には見て何かを感じて欲しいし、ピュアな男性には決して見て欲しくない。」私にとってはそんな映画でした。

胸を打たれた帰り道に殴り書きした文章ですが、残しておくべき文章かとも思ったのでnoteに投稿してみます。大変な時代だけど、どうか道端でだけは泣かないで。私も一緒に泣いてしまうから。

『泣かないで、東京。』終

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