東京エレクトロン(8035)はどこまで下がるのか
これまで日経平均の上昇を牽引してきた、半導体製造装置メーカーの東京エレクトロン(8035)が急落している。6日間で約7000円(-17.8%)も暴落しており、手元にある2011年以降、過去13年以上のデータでも、これほどひどい下落は滅多にない。東日本大震災直後と同レベルの下げ幅と言えば、理解してもらえるだろうか。
果たして東京エレクトロンはどこまで下がるのか。そして4万円台に戻ることはあるのか。日頃は個人的に銘柄分析をしてもnoteには書かないが、一度しっかり考察してみたい。なお言うまでもなく、投資は自己責任で。売りも買いも推奨していない。
・日本企業で時価総額3位の超一流企業
東京エレクトロンについて書いたら、おそらく何百行にもなってしまうので簡潔に。昨今はやりの「生成AI」を動かすために大量に使われている半導体を作る、「半導体製造装置」で世界3位の超一流企業である。
隠れた優良企業、高収益企業として知られていたが、コロナ以降のリモート需要で半導体が使われる見込みになった事から人気に火がつき、生成AIのブームで更に加速した。
2019年末から4年で株価は5倍以上となり、時価総額は15兆円以上に達している。これはトヨタ、三菱UFJに次ぐ3位で、ソニーグループを超える水準となっている。
ファンダメンタルはまだ高い
そんな東京エレクトロンではあったが、あまりにも上がりすぎたため3月下旬から株価も頭打ちとなり、私も3/26に「AIバブルが弾けるのも時間の問題」と書いていた。そこから3週間が過ぎたが、実際4/4がピークだった。
背景にあるのは、業績面から株価を分析するファンダメンタルでは、明らかに割高となり、株価の指標を示すPER(株価÷1株あたりの利益EPS)が上がりすぎたこと。2023年春あたりまでは20倍程度だったものが、24年3月末には55倍まで上昇しており、「さすがにこれは持続しない」と感じていたためだ。
ファンダメンタルが難しいのは、株価が上がり続けるときは割高に見えても影響を受けず、下がり始めた時に一気に悪影響が出ること。ずっと50倍を超えていたので、正直「まだ行けるのか?」と信じられない思いだったが、先週のイランとイスラエルの衝突もあり、投資家が冷静になったのだろう。
ちなみにピークから7000円以上下がったのに、まだPERは44.1倍もある。そう考えると、ファンダメンタルからは3万円割れになってもおかしくないとも言える。
・テクニカルは完全に売られすぎ
では「まだ下がる」と断言できるのか?と言えば、そんなに単純じゃないのが株の難しいところ。株価の値動きから分析するテクニカル面では、まさに10年に1度クラスの暴落で、明らかに売られすぎだからだ。
4/19の下落率が-8.7%、今日22日は-3.2%で、2日間の合計は-11.9%。比較対象の東日本大震災直後(11年3月14日、15日)は2日間で-11.5%と、なんとそれよりも下がっているのだ。福島第一原発の事故があった時期と同じ下落幅と聞けば、誰でも下がりすぎだと感じるだろう。
その他の指標で見ると、4/22現在の25日移動平均線の乖離率が-15.0%だが、手元の2011年以降、3255営業日分の取引データでは、乖離率-15%以下はわずか30日(0.9%)しか発生していない。
タイミングとしては5回あり、うち2回が東日本大震災とコロナショックだった。ただコロナショックの2020年3月には-26.1%まで下がっているから、「もう下がらない」とも言い切れない水準だ。
またボリンジャーバンドで見ると、4/19は99.74%の確率で収まると言われる-3シグマの水準を割り込み、「これは売られすぎでしょ」と思える水準。ただこれも難しいのが、4/22の終値32450円は、-3シグマの32321円を超えており、99.74%の枠内に入ってきている。
反発も一時的?
結局、「買えるのかい?買えないのかい?どっちなんかーい!」と言われても非常に難しい。分かっていれば黙って買い、勝手に儲けているだろうけど、あいにく手持ちがないから書いている面もある。
ただ一つだけ言えるのは、「おそらく一瞬は上がるだろう」という事。自分でもし買うなら、始値で暴落しなければの前提ではあるが、32300円あたりで買い、33000円あたりで売るラインだろうか。正直、怖くて1日以上は持てないとは思う。まさに「落ちてくるナイフをつかむな」とはこのこと。
とは言っても、逆にふとしたきっかけで、いきなり33000円台でスタートし、34000円台を回復してもおかしくはない。おかしくはないが、そこから一気に40000円を目指すことはもうないだろう。根拠なく踊っていたのに皆が気づいてしまったのだから。
東京エレクトロンの決算発表は5/10とのこと。当面は不安定な値動きになるに違いない。
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