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リリースから約1年。自動BGM構築システム『AISO』のこれまでとこれから。

はじめまして。AISOを運営しているサウンドデザイン会社 『エコーズブレス』代表の日山 豪です。Go Hiyamaという名義でミュージシャンとしても活動しています。2010年に会社を立ち上げ、映像、プロダクト、空間など様々なサウンドデザインに携わらせていただきました。いくつか自社で事業構築も行っておりまして、その一つが『AISO』です。

2020年10月に情報を公開し、第一弾アーティスト版(Koji Nakamura、duenn、Go Hiyama)をリリース。それから約1年が経過して、計画通りだったり、想定外だったり、色んな事が起きたので、ここでちょっと立ち止まり、今見えている現状とこれからを整理したいと思いました。

ちなみに下の写真は2020年5月のFacebook投稿スクリーンショット。今見ると「ちゃんと実行できたんだ...」と感情的になります。

AISOリリース前 facebookに投稿した宣言

■リリースから1年の歩み

toCのアーティストライン、toBのオーダーメイドラインと2つのビジネス形態で展開。アーティストライン第一弾リリースの頃はシンプルな再生システムとそのインフラでしたが、参加アーティストによる制作を通してのフィードバックやアイデア、いくつかのtoB案件を通してのご要望やご意見を取り入れ、2021年4月の第二弾アーティストライン(HIROSHI WATANABE aka KAITO、OKADA TAKURO)リリース時には1システム内で複数シーンの演奏を可能にした「バンク機能」を開発。これによって、より複雑かつバリエーションのある音楽表現が可能になりました。また、制作者が作曲中でも簡単にAISO再生を再現・確認できるよう専用ソフト「AISO ASSEMBLER」も独自開発(非公開)。toBのオーダーメイド版では、バンク機能と現在時刻・気象情報など外部情報、既存の外部システムとの連携など、様々なオプション機能も付加されていき、単なるBGMだけに留まらず、空間体験の価値を創造するひとつの担い手となっています。これまでの実績は以下のとおり。


・アーティストライン(toC)
Go Hiyama
Koji Nakamura
duenn
HIROSHI WATANABE aka KAITO
OKADA TAKURO
GuruConnect
Black Boboi
宮内優里

参加アーティストのみなさん


・オーダーメイドライン(toB)
method(オフィス)
冨川浩史建築設計事務所(オフィス)
アスクル(オフィス)
住友化学(ラウンジ)
コパック (オーディオシステム)
JR九州ホテルズ(ホテル)
中川政七商店(店舗)
224porcelain(店舗)
プルミエメ(店舗)
KAPUKI(店舗)

導入いただいた施設たち

…他多数 詳細な今後の目標や課題については以下に。

■振り返って

○AISO活用の場が拡大

toBで気付かされた潜在的ニーズ
始まりは、とある店舗の案件でした。BGM制作や音を使用したインスタレーション、そしてスピーカーの選定など、トータルサウンドデザインのお仕事。店舗BGMのご依頼をいただく時、クライアントからのご要望で多いのは「ブランドを表現したオリジナルの曲が欲しい」という主要なことは勿論、「プレイリスト再生をしているとすぐに飽きる」「毎日聴くスタッフがきつくなってくる」という問題提起も多いです。さらに曲単位によるプレイリスト再生はどうしても曲間に無音が生じ、1曲1曲を認識しやすくなり「あ、また同じ曲だ」「結構な曲数を聞いたな」と『時間の経過』を感じ取ったり、ふと静かになった瞬間と会話の途切れが重なり「そろそろ行きますか?」など「行動の切り替え」につながり長期滞在の妨げとなってしまいます。
AISOによる「終わらない音楽」では、この「曲」という単位は消失します。曲間がないので、途切れる事がない「つながり続ける時間」という感覚を生み出します。またAISOにはAメロ・Bメロ・サビというような一般的な楽曲構成のない「音と音楽のあいだ」のようなサウンドスケープが再生でき「音楽を聴いている感覚」が薄く「聞き流す」という長時間の聴取環境を無理なく実現します。 そんな店舗BGMに向け問題解決を意識して誕生したAISOでしたが、いざ活動を本格化すると店舗だけでなくオフィスやホテルなど想定していなかった空間がBGMを必要としている・現状に満足していない事が浮き彫りになっていきました。正直に言って、これは想定外でした。こんなに「AISO」に、「終わらない音楽」にニーズがあったとは。 ここには先に述べた既存BGMへの問題に加えて、ブランディングへの関心の高まりも感じています。「既成楽曲の連立ではブランド(体験)を表現できない」という事。そして、そう感じている(ブランディングを取り入れる)空間は、今や店舗だけではなく多種に存在するという事を示していると考えます。

更なるAISOの可能性を探りたい - アーティストライン設立へ
考察していく上でtoBとは別に可能性を感じ始めたのが「アーティストライン」のAISO。toCに向けて、ひとつの「作品」としてリリースできないかと。これまでに曲もフィジカルなサウンドアート作品を制作してきて、「時間」と「音楽」の関係性を深く考えたり、「テクノロジーがもたらす可能性(同時に不満)」も身近に体験し、もっとプリミティブに音・音楽を捉え直して表現する事ができないだろうかと思ってきました。 また、「終わらない音楽」が新たな表現を生み出すかもしれないと感じ、アーティスト(ミュージシャンにとらわれず)にAISOを使用していただく事を半ば実験的に実行しました。もしかすると自分の想像を超えるような使い方が現れるかもしれないという期待も含みつつ。 そして、これは「AISOを独占しない」という意思表示でもあります。現時点では直接交流のある方々にお声がけして参画いただいていますが、いずれは沢山の人たちがAISOを使って「終わらない音楽」を当たり前のように楽しんでもらいたいと思っています。これらについては、この後に詳しく書きたいと思います。


○音楽家が表現する場の選択肢

演奏、録音媒体販売以外の表現媒体を提案したい
この事についてはAISO以前から長いあいだ考え続けてきました。 一般的なミュージシャンの主な収益方法は「人前で演奏する(ライブパフォーマンス)」と「演奏を録音した媒体を販売する(CD・ストリーミング販売、楽曲提供 等)」です。そして、それが行われる場は、ライブハウス・クラブ、音楽メディア実店舗・音楽オンラインサービス各々のプラットフォームで存在します。そこには既存のルールや相場があり、そこで活動をスタートするにはそれに従わなければなりません。もちろん表現者が自由に設定できる場合もありますが、ルール・相場がある以上、それとの相対的視点によって扱われる事は逃れられません。収益方法の話から入りましたが、これは表現方法にも直結していると考えています。もちろん既存プラットフォームに則る事で得られる恩恵もあるので単純に良し悪しの話ではありません。ただ「演奏」と「録音」以外の表現方法はないのか?本当に、この2つだけなのか?そんな疑問と課題が自分の中で大きくなっていきました。

DOMMUNEではじめてAISOを紹介させていただきました
ミュージシャンのみなさんと演奏・録音以外の音の可能性について話したりも

○理念を設定

音楽の作り方、聴き方、在り方を変える
「AISO」は、「終わらない音楽」は、何と繋がっていて、何をもたらしてくれるのか。それらを整理して「伝える」。そのために理念を『音楽の作り方、聴き方、在り方を変える』と設定しました。 音楽の伝達過程3要素である「作曲-演奏-聴取」をヒントにAISOを解いていった言葉です。

『作り方』について。
(西洋)音楽をつくる場合、楽譜上 左から右へと音が展開していきます。それは、一般的なDAW(音楽制作ソフト)で作曲する場合も同じで発音部分を表示しながら画面は左側から右側へとスクロールしていきます。つまり、音楽と時間の関係性は単方向の場合がほとんどです。作曲者の意図を反映して、曲は始まり、展開していき、終わる。AISOでの作曲は、このような時間との関係が崩壊しています。作曲者が意図する始まりはなく、AISOの電源を入れた時が始まりです。そして終わりも同様に、電源を切ったら終わり。 展開は、作曲者の管理の範囲内で偶然性を含み変化を続けます。この「展開」については自分がとても大切に丁寧に設計した部分です。ここには、ピエール・ブーレーズという音楽家の『管理された偶然性』という言葉に大きく影響を受けています。コイン投げによって曲を作っていくジョン・ケージのチャンス・オペレーションにある偶然性ではなく、しっかりと作曲者による管理が存在する偶然性。その中でAISOが「音のカケラ」を自由に紡いでいき、時には作曲者の想定を裏切りながら、その音群を奏でていきます。そのような『作り方』は作曲者にどのような影響を与えるのでしょうか。 ちなみに、よく「AISOはAI作曲ですか?」と質問をいただくのですが、答えはNOです。ラーニングより作曲するプログラムとは異なります。

次は『聴き方』について。
一般的にはですが、録音媒体に収録される曲は数分間の長さで1つとされ、それが数曲集まると「アルバム」という規格とされます。現代の私達は、自宅だったり、通勤中だったり、外出先だったりで曲を聴いています。その中で、曲・アルバムという『単位』が『行動』に影響を与えている場面もあると感じていまして。「この曲まで聴いたら移動しよう」「アルバムを聴き終えたので、次のアルバムをプレイヤーにセットしよう」等々、細かく言えば他にも色々なケースがあるかと思います。 また、『聴く意識の度合い』にも関係があるように思っています。自分は『聴くレベル』という考えを持っているのですが(詳しくはコチラの記事から)

曲・アルバムなど『単位』がはっきりしている音楽は‘聴きたい’という高いレベルには向いているけど‘気になる’や‘聞こえる’程度の低いレベルには向いていない状況があると感じています。「音楽を聴きたいわけではない(無音だとちょっと寂しい)」という時、軽く『聞き流す』程度の聴き方があるのではないかと考えはじめたんです。ここは実験的要素が多い内容ですが、それに『終わらない音楽』は程よく接して、『聞き流す』という音楽の楽しみ方が生まれるのではないかと期待をしています。

最後に『在り方』。
時間との関係性が変わり、曲という単位は曖昧になり、新規プラットフォームで扱われ、音楽は聞き流すかたちで生活に溶け込んでいく。もしそんな事が起きたら、音楽は私達の生活の中でまた違った存在になるのではないかと考えています。

『在り方』を考えるときに、いつもAISOチームが立ち帰る図


○様々な実験

理念からも分かるとおり、AISOには実験的要素が含まれています。その内容について細かく述べたいと思います。

アーティストがAISOを利用したら何が起きるのか
AISOをアーティストの皆さんにお渡しして作っていただいた楽曲を聞くと、発見や驚きのオンパレードでした。 まず傾向として、表現が大きく2つに分かれました。「終わらない」という特性をどの様に捉えて活かすか。1つはやはりBGM的アプローチでした。「聞き流す」には相性の良いアンビエントミュージックのような、程よく隙間を含んだ音群が空間に寄り添う感じを各々の表現でAISOにインストールしてくださいました。この感覚はAISOに興味を持っていただいた皆さんへ理解しやすい形で伝わっていったように思っています。 そしてもう一方は、聞き流す事を意識しない作品性を全面に出したアプローチ。Hiroshi Watanabeさんは、宇宙旅行をテーマに物語が展開していく、まるで聴く小説のような壮大な世界観を表現していただきました。GuruConnectさんは「聞き流すに抗う」という宣言と共に、コレぞ!という唯一無二なビートを延々にこれでもかと浴びせてくれました。そしてBlack Boboiさんは、アルバム「SILK」を解体してAISO化するという、これまた類を見ない表現をして頂きました。ストーリー、無限音楽、再構築。 AISOの作品性に関して、これらはまだ一例に過ぎず、まだまだ未知な部分があるように感じています。「終わらない」という事がアーティストの表現に何をもたらすのか。そしてそれを私達はどう受け止めるのか。 次は完成したAISOの使用方法についてです。ナカコーさんは自身のAISOをライブセットに使用し、まるでもう1人の自分とセッションするかのような即興演奏をみせてくれました。また、Guru Connectさんが所属するバンドSkillkillsのドラムであるビートさとしさんがGuruConnectさんのAISOに合わせてドラムを叩くという動画がTwitterでアップされる事もありました。これはAISOが音楽を再生する機器から楽器へと変貌した瞬間でした。この発想には大変驚かされ、とても興奮した事を強く覚えています。 アーティストラインAISOについては、AISOチーム、参加いただいた方々とも意見を重ね、さらなる可能性に向け、新たな展開も構想中です。いつか実行に移し、皆さんに発表できるよう尽力していきます。

東京藝術大学での講義の時、AISOとピアノとの即興演奏

新たな音楽の楽しみ方を提案できるのか
「終わらない音楽」を世に出したところで、前例がありません。この時点で、どのようにみなさんが理解して、どのように利用していただけるのか、正直なところ私達は予想と提案しかできません。ただ「終わらない音楽」による寄り添うような心地よい時間や、新たな音楽作品体験の存在は確かなものです。AISOは「あなたのお悩み解決!」のような問題解決商品ではありません。強いて言えば問題発見商品かもしれません。問題とも思われていなかった事にアプローチして、気付かせてくれる。そんな存在なのかなと感じています。そんな楽しみ方が少しずつ伝わって、広がって、そして当たり前のように「終わらない音楽」が普段の暮らしに関わっている。そうなったら面白いなぁと個人的願望を大いに乗せつつ、提案していきたいと思います。

映像制作会社bird and insectさんのYoutube出演時

toC個人利用に需要はあるのか
これは全くもって予測不可能のなかで実行に移しました。不安と期待が互いに押したり引いたり。ただ「やらない」という選択肢はなかった。「やらなければならない」くらいの想いです。色々な事をたくさん述べましたが、これを自分1人でワーワー言っても仕方がありません。マーケティング的には最悪の方法でしょうが、兎にも角にも皆さんに提案したいという想い1つです。こちらの現時点での結果については次の章に書きたいと思います。

AISO解放へ向けて
これは少しずつ慎重に丁寧に進めていっている事です。いずれは多くの方がAISOを使用して作品づくりをできるようにしたいと考えています。現在は明確に把握できる範囲で段階的に進めています。その1歩目がアーティスト版ラインの設立だったわけですが、それを進めるために次に設定していた目標が「日山ではない人がAISOをtoB案件で使用する」でした。

○反応のまとめ

AISOを公にして約1年。これまでの反応、ご意見をtoB、toCに分けて書いていきます。

toB
完全に自分で言うのもなんなのですが、導入いただいた企業様には大変喜んでいただいております(なんだか通販番組のような薄っぺらい表現ですが)。全ての案件が特定の機能を持った空間に対するBGMの依頼でした。ブランディング要素を持ったサウンドデザイン・音楽制作においては年々重要性が増しているように感じています。ただ、これまでは店舗BGMが多くを占めていたのですが、オフィスやホテルなど多種な業界からお声がけいただいたのは興味深かったです。 空間の目的に応じた機能性を持つサウンドデザインによる効果がそれぞれのAISOに搭載されて、より高いレベルの体験価値を生み出す事が可能になったからではないかと考えています。 例えば、ホテルTHE BLOSSOM KUMAMOTOでは、八千代座の伝統楽器や草千里の虫の音など熊本の音をAISOに収録し観光地域ブランディングの要素も取り込んでいます。またホテルでの過ごし方にも着目し、無音かTVという選択肢しかないという客室での音環境に対しVODシステムとAISOを連携させ、全客室で終わらない音楽を再生することを可能にしました。 住友化学「SYNERGYCA - 共創ラウンジ」では、顧客との共創を促すため集中・リラックスを効果的に繰り返すサウンドデザインを施しました。さらに2台のAISOを連携させ各スペースの目的に合わせた音のゾーニングも設計されています。 オーダーへ緻密に合わせたサウンド。さらにはセンシング機能や他ソフトウェアとの連携などにより、ひとつひとつ機能や個性を持ったAISOを制作できるようになっていったのも大きな要因だと思います。 別軸では、オリジナル制作ではなく、ミュージシャン版の店舗・展示会など商用利用という動きが見られました。「オリジナル版を制作するほどの規模感ではない」「予算を抑えたい」「数日だけ利用したい」というご要望をいただき、正直想定外ではありましたが、それらに応えるべく『レンタルサービス』をひっそりスタートしました。

toC
先ずはやはり「高額だ!」という反応が目立ちました。私としては現時点ではご理解いただきたいとしか言えず。仰る通り、決して安価な商品ではありません。Raspberry Pi、その他ケース等一式は既製品を使用。完全受注生産。音源を実現するシステム開発費。制作者への対価。そのほか印刷物等々。この金額設定は相当な時間、チームと会議を重ねて重ねてギリギリのラインで導き出した価格です。しかし、この声は真摯に受け止めたいと思います。 しかし、中には「なぜRaspberry Piなのに高額なんだ」というご意見を目にした時は「音楽(を聴くため)への価値」がゼロへと向かっている感覚があり、これはこれで問題として捉え行動すべきだなと考えています。 もちろん価格改定への努力をしなかったわけではありません。結果として不可能であると判断されたのですが、原価を抑えるべく比較的低性能CPUを搭載した、より安価な小型PCへの移行も研究開発を進めていました。しかし、やはりAISOシステムを動かすための納得のいく処理が見込めなかったため断念。価格だけでなく、大きさも抑えられると期待はしたのですが残念な結果になってしまいました。

プログラムと格闘するAISOエンジニア安友


ネガティブな反応ばかり先に書いてしまいましたが、もちろん良い事も。第一はなんと言ってもお客様からの直接的な反応がいただけた事です。直接お会いした時やツイートでも予想を上回る反応がありました。「終わらない音楽」を受け入れていただけた。これが分かっただけでも大きい感動があり、感謝ばかりです。 個人的にですが「作り方」と「聴き方」の関係性が、しっかり分かれていた印象があり、良し悪しの話では全くなく大変興味深い事が起きたと感じています。詳しく言いますと、「聞き流す」系の音楽と主張が確立した「作品」系の音楽が出現し、リスナーとしても各々にハッキリと反応が出た。前者は寄り添うようなアンビエントミュージックのような雰囲気を持っていることもあり一種の「馴染みやすさ」「理解しやすさ」がありました。一方で後者はtoC商品として前例がなく「聴きたい(聞き流せない)」という不思議な?新たな?聴き方を提示しているように感じました。これは何を意味するのか。その先に何があるのか。好奇心は止まる事なく、AISOを続けようと再燃焼しています。
もうひとつ、ユーザーさん各々でケースを交換・作成するという事例が出てきたこと。これは結構予想外でした。そして、ユーザーさんの好奇心には驚かされました。「ファンレスケースに交換した」という方が複数。中には「バッテリーを接続して農作業中に聞いています」とか「オリジナルでケース作っちゃいました」という方も。オリジナルケースに関しては、toCだけでなくtoBでも事例があり、アスクル様はブルー(アスクルカラー?)のオリジナルボディとなっています。AISO達が可愛がってもらっているようで、チームのみんなすごく嬉しい気持ちになりました。

アスクル オリジナルAISO

■変えること

ここでは前述した反応を受け止めて、何を変えていくか、そして何を変えないかを定めていきたいと思います。

○ビジネスモデル

レディメイドラインの設立
これまではオーダーメイド版(toB)とアーティスト版(toC)の2ラインで展開し、ほぼ受注生産型で運営してきました。そして前述のとおり、様々なご意見やご感想をいただく中で「もっとお手頃に体験したい」「色んな曲を聴きたい」「個人店舗でBGMとして導入したい」という声があり、これらには既存ラインでは十分に対応できる可能性が低いと感じました。もちろんできる範囲で対応を考え「体験イベント」「商業利用に関する契約の整備」を行いましたが、よりユーザー視点に寄り添った新たな第三のラインを作ることにいたしました。それは「レディメイドライン(仮)」とし、FUN / RELAX / SLEEPなどシーンを明確にした“終わらない音楽”を複数制作してユーザーは自由にそれらを選び私用公用問わず楽しむ事ができる。そのようなサービスを提案したいなと考えています。料金体制も新たに設定し月額制で気軽に体験を始めていただけるよう設計したいです。この企画については今年から着手して出来るだけ早く正式に公表できるように努力していきます。

価格
前述の内容も含め、現時点で「大幅に価格を下げます!」という発表は難しいです。労務費・開発費、機器代、そして音楽制作者への対価。かなり早い段階から相当な時間をかけ続けて詰めていった金額設定は(何度も崩す方で議論を重ねたのですが)簡単には崩れませんでした。申し訳ないです。ハードの原価を削る事も考えましたが低価格モデルのラズベリーパイゼロでは納得がいく動きができず、断念。かといって、この価格帯で箱や印刷物・梱包を安っぽい物にしたところで残念な見た目になるし、そもそもそこまで大幅なコストカットには繋がらない。現在は製造工程を見直し、時間コストを抑える方法を模索しています。冒頭で書きましたAISO Assemblerも、制作・インストール面でのコスト削減に先々ひと役買ってくれるのではないかと期待を込めて開発を進めています。

○伝えかた

生活での音楽 AISOがリリースされて1年目(特に最初のほう)は皆さまにAISOとは何ぞや?を理解いただくため、“終わらない音楽”という音楽自身を表す言葉とそれを実現するその技術・機能面を全面に出し、伝えてきました。 そして次に、AISOだからこその音楽の聴き方、楽しみ方の1つを紹介する形へと移行していきました。「音楽と向き合ってガッツリ聴く」のではなく、寄り添うように“聞こえる”程度で鳴り続けている「聞き流す」という言葉で提案してきました。「BGM」「アンビエント」という言葉が多く知られているからこそ、この「聞き流す」という言葉もイメージしやすかったのではないかと感じています。 「機能性」から「使用イメージ」へ。制作側からユーザー側の視点でもAISOの世界観を表現していけたらと考えています。

作品としてのAISOを表現者の方々にアートピースとして利用していただけたらという思いもあります。既に販売されているアーティストラインの中でduennさん、HIROSHI WATANABEさん、GuruConnectさん、Black Boboiさん達のそれは「聞き流す」という”聞き方”というよりも、「終わらない音楽」として作品という”在り方”を強く表してくれていると感じています。duennさんは、ご本人のライブパフォーマンスをそのまま持ってきたかのような音の群れと時間の経過が詰まっていて。HIROSHI WATANABEさんは、まるで聴く小説。ご本人から『ZERO GRAVITY TRAVEL』という文までいただき、壮大な宇宙旅行を表現された。GuruConnectさんのAISOは「”聞き流す”に抗った」という言葉どおり、自分には到底出す事ができないであろうビートの数々が吐き出され続ける作品となった。Black Boboiさんはアルバム『SILK』を「終わらない化する」という試みで。実際にアルバムリリースLIVEを体験しに伺いましたが、開場〜開演時間までのあいだAISOが鳴っていて会場のデコレーション・照明と共に『SILK』の空気感が構築されていて、恐縮ですが「素晴らしいAISOができたなぁ」と感じていたのを覚えています(会場のサウンドシステムも良くって、凄い低音も出てた!)。 購入する音楽作品には始まりと終わりがあって、各種媒体プレーヤーで再生される。その数分間に向き合って聴いたり、リピートして聞き流したり。そういう音楽との付き合い方が主流となっている。もし、それがガラリと変わったら。もし、それ以外の音楽との付き合い方があったら。問題解決ではなく、これは芸術の話でしょうね。作られる音楽だけではなく、それの媒体、鑑賞方法(AISOを楽器としたライブなんかは演奏方法とも言える)、それらを含んだ創造と解釈の活動。作品としてのAISOは、そのようなものだと感じています。 オフィス・店舗・ホテルなどへのソリューションとしてのサウンドデザイン、そして、もう一方の芸術的なアプローチ、その両輪がAISOを支えています。

■これからの展開

○レディメイドライン

もっと手軽に、もっと低価格からスタートできる商用利用も視野に入れたサービス。詳細は前述のとおりです。 レンタル事業との統合するのもいいかもしれません。すでにリリース済のミュージシャン版と、どのように棲み分けするのかは丁寧に検討したいところ。

○コラボ事業

ホテルから考えるサウンドデザイン
ホテル特化型のイベント制作会社『株式会社サウスポイント』様との協業。ホテルでの共用空間、客室VODシステムに加えて、さらなる音を軸としたサービスの展開を考案中です。もはやAISO自体の機能面にとどまる内容ではなく、『音』の弥勒を捉え、伝えるコンテンツづくりと言えるかもしれません。AISOも含んだ活動。運営するサウンドデザインの会社『エコーズブレス』の活動となってきそうです。

AISO内蔵スピーカー 什器総合メーカー『日本コパック 株式会社』様との協業
「もっと手軽に”終わらない音楽”を楽しみたい」「さらに空間へ音楽を溶け込ませたい」そのような考えからAISO(プレイヤー)とアンプ・スピーカーを一体型にした製品を制作しています。現在のAISOはラズベリーパイという小型PCを媒体としているので、別途 電源ケーブル・音声ケーブル・スピーカーが必要です。「AISO内蔵スピーカー」では、それらの機器や配線がまとまった形になっているのでスッキリとお部屋に置いていただけますし、追加機能としてイコライザー(高音・低音の具合を調整できる機器)も搭載しており、お好みの音質で楽しんでいただくことも可能です。現在は試作を重ね試験販売を目指して絶賛活動中です。近いうちに皆様のご家庭でも楽しんでいただけるよう尽力いたします。

試作中のAISO内蔵スピーカー



他社(者)制作音源
toB案件に限り、エコーズブレス以外の音楽制作会社・音楽制作者様からの「AISOを導入したい」というご要望も受けていきたいと考えております。住友化学「SYNERGYCA - 共創ラウンジ」のように日山以外の音楽制作者と共同制作というところまでは実現しました。そこからさらに放っていって、AISOの可能性が広がっていくことも大きな目標と掲げています。


○体験サテライト

「購入を検討しているが、実際のAISOを聞いてから判断したい」「いろんな音源を聴き比べたい」というご意見も届いています。そして、自分もそう思います。常設で体験できるスペースは今のところ導入いただいている施設のみです。そのほかに期間限定ではありましたが、アートプロジェクト「本と川と街」にて東京墨田区のホテル『KAIKA』様でアーティストラインの展示を行いました。その時には多くの反響をいただき、やはりAISOは体験をしていただく事でより良さの伝わる製品なのだなと実感しました。個人レベルで協力者を探すようなスピード感ではありますが、東京に限らず、少しずつ体験の場を増やしていきたいと考えています。もし可能であれば、すでに商用利用として導入いただいている経営者の皆様にご協力いただいて場所を公開したり、「導入したい」「体験スペースとして場所を提供したい」という方を募る事へ力を注ぐのも良いかもと思っています。ご興味にある方は是非ご連絡ください!

「本と川と街」アートホテルKAIKA様での展示
(現在は会期終了しております)


■最後に

AISOは文化を作っているのかもしれないと思う時がある(急に大きな話なのですが)。 「終わらない音楽」そのものではなく、それの「再生機」でもなく、「終わらない音楽」が存在している生活・環境を作っていく。そのような感覚です。 寄り添うように側にいるような音楽。音楽芸術の一つの手法。商品としての流通。オープンな技術共有。これまでに多くのことについて書いてきましたが、このひとつひとつの行動を起こして、皆さまに賛同・参加いただき、小さくても確立できたなら、AISOは1つの選択肢となって、これまでの音楽とはまた別の在り方での表現手段・マーケットが構築され、業界の活性化につなげられたらという想いです。 そんな大それた事をまだ1年そこそこのプロジェクトなのに掲げておりますが、皆さまに体験いただき、応援していただけたら大変嬉しいです。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。


AISOチーム
左:日山 中:安友 右:津留
(HIROSHIさん、撮影ありがとうございます!)

最後に。
AISOの最新情報はtwitterで発信中です。
ぜひフォローしていってください〜。
https://twitter.com/AISO_BGM

もうひとつ告知を。
東京 神楽坂にある『神楽音(カグラネ)』というベニューにてサウンドデザインをテーマとしたトークセミナー『HEAR to LISTEN』を開催します。映像作家、音楽家、陶芸家、そしてAISO津留さんをゲストにお迎えして、私 日山が携わってきた様々な制作・企画を紐解いていきます。
音楽制作者はもちろん、デザイナーさんや新規事業開発に関わる方なども面白い内容かと思います。よろしくお願いいたします!!

▼詳細はこちらから
https://peatix.com/event/3209653/view

『サウンドデザイン 〜 音と社会の接点を探る』トークセミナー 全3回


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