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情報戦【ショートショート】

N氏は、芸能界のウラ情報を追い求めるジャーナリストだった。彼は業界でそれなりに名を馳せていたが、最近の一件でライバルに先を越され、悔しい思いをしていた。その事件以来、彼の心には焦燥が渦巻いていた。どうしても次は負けたくない。その一心で、彼は一人の天才ジャーナリストの助言を求めることにした。

その天才ジャーナリストは業界でも一目置かれる存在だった。彼のアドバイス料は高額だったが、N氏は背に腹は代えられないと決意し、彼の元を訪れた。天才ジャーナリストのオフィスは、まるで情報の宝庫のように資料で溢れかえっていた。

N氏が恥を忍んで助けを求めると、喜んで助けてくれるという
「いいか、次のネタを掴むためには、一つだけ重要なことがある」とは言った。「情報源を確保することだ。そして、君に一つの場所を教えよう。そこには、芸能人が集まる秘密のバーがある。そこのマスターは業界の誰もが知る存在で、多くの情報を持っている。」

N氏は早速そのバーに向かった。バーの入り口は目立たない場所にあり、一見すると普通のバーに見えた。しかし、中に入るとそこには洗練された雰囲気が漂っており、確かに芸能人たちがくつろいでいた。マスターは一見無口そうな中年の男性だったが、N氏が彼の紹介だと告げると、マスターの態度は一変した。

「なるほど、彼の紹介か。それなら少しばかり情報を提供しよう。だが、このバーのルールを忘れるな。ここで得た情報を他に漏らしてはいけない。」

N氏はマスターから貴重な情報を入手し、調査を重ねた日々が続いた。次第に、彼はバーに通うことが日課となっていった。

バーに通う日々の中で、N氏は様々な芸能人たちと顔を合わせた。人気俳優から新人アイドル、ベテランのタレントまで、様々な人々がこの場所に集まり、ひそかに情報を交換していた。N氏はその中で自然と人脈を広げていった。

ある晩、彼はある女優の悩みを聞くことになった。彼女は最近、マスコミに追われる日々に疲れ果てていた。N氏は彼女に同情しながらも、取材のチャンスだと思い、彼女の話を注意深く聞いた。

「私の家族のことが記事にされてしまったの…もう耐えられない。」

N氏はその話を元に、別の角度から記事を書くことを考えた。彼女のプライバシーを守りつつ、業界の問題を浮き彫りにする記事だ。これにより、彼は女優から感謝される一方で、読者からも高評価を得ることができた。

また、別の日には、若手俳優が酔った勢いで自身のスキャンダルを話し始めた。N氏は冷静にその話を聞き出し、後日改めて詳細を確認することにした。その結果、彼は大きなスクープを掴むことができた。俳優が話した内容を元に、彼は独自の取材を重ね、信頼できる証拠を集めたのだ。

N氏がバーに通う中で、マスターとの信頼関係も深まっていった。ある晩、マスターはN氏に特別な情報を教えてくれた。

「君は信用できる人物だ。だから、特別にこの情報を提供しよう。来週、大物俳優がここに来る予定だ。彼には興味深い話があるかもしれない。」

N氏はその情報に胸を躍らせた。そして、その夜を待ちわびる中で、彼はさらに情報を集めるための準備を進めた。彼の部屋は再び資料で埋め尽くされ、彼の情熱が一層燃え上がっていた。

そして、ついにその夜が訪れた。大物俳優がバーに現れた瞬間、N氏は緊張と興奮を抑えきれなかった。彼は慎重に接近し、俳優と自然な会話を繰り広げた。俳優はリラックスした様子で、次第に自分の過去や業界の裏話を語り始めた。

N氏はその話を元に、さらに深い調査を行った。彼は数日間ほとんど寝ずに働き続け、ついに決定的な証拠を手に入れた。これは業界を揺るがす大スクープになるに違いない。

そして、そのネタを元にN氏は大成功を収めた。記事が掲載された翌日、彼は再びそのバーに足を運んだ。彼は成功の余韻に浸りながら、静かにカウンターに座っていた。すると、隣に座っていた男が嘆く声が聞こえてきた。

「くそっ、あのネタを先取りされた…どうしてこんなことに…」

N氏は気の毒に思いつつも、これが戦いだと心の中で呟き、バーを後にした。

その後、N氏がバーを出た直後、例の天才ジャーナリストがバーに入ってきた。彼は嘆く男の隣に座り、優しく声をかけた。

「惜しかったな…先週来た大物俳優の裏情報を俺に教えてくれて、一緒にどういうネタを引き出すか考えていたというのに、たまたま鉢合わせた別のジャーナリストに取られるとは…」

男は驚いて顔を上げた。「●●さん、どうしてここに…」

天才ジャーナリストは微笑みながら答えた。「ジャーナリストとはそういうものさ。だが、君にもう一つ、興味深いネタがあるんだが、聞いてみないか…?」

その瞬間、N氏は背後で繰り広げられる皮肉な運命の綾を全く知らず、成功の余韻に浸りながら夜の街を歩いていた。彼の目には、次なる大スクープの輝きが映っていたのだった。

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