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将来【ショートショート】

生まれてから、どのくらい時間が経ったのか、僕にはわからない。だって、まだ僕は時間というものを知らないから。だけど、一つだけ確かなことがある。この世界には、どうやら二つの巨大な生き物がいるみたいだ。

一つは、いつも僕を抱っこしてくれる柔らかい存在。髪の毛が長くて、甘い声で何かをつぶやいている。もう一つは、どっしりとした大きな体で、たまに僕の顔をじっと見つめて、変な声を出す。低くて響くような笑い声だ。それに、顔の一部に毛が生えている。どうやらこの二つは、僕に何か特別な感情を持っているみたいで、いつも僕のことを気にかけている。

僕は彼らが何者なのかまだ分からない。だけど、一つ分かっているのは、彼らは僕に食べ物をくれたり、体を拭いたり、変な布を巻きつけたりするということ。お腹がすくと、柔らかいほうが僕に特別な液体をくれる。その液体はなんとも言えないほどおいしくて、飲むたびに眠くなる。もしかしたら、これが彼女の策略かもしれない。僕を眠らせるための秘密兵器だ。

そして、もう一つの生き物。あのどっしりした生き物は、時々僕に面白い顔を見せる。変な声で話しかけてくるけど、僕にはその意味がまったく分からない。だけど、なんだか笑いたくなる。彼が近づいてくると、僕の体が自然と動いてしまう。手が勝手に空をかくようにバタバタして、声が出る。彼はそれが面白いらしく、もっと変な顔をする。

この二つの生き物は、なぜか僕を毎日観察している。僕がちょっとした音を出したり、動いたりすると、彼らは一斉に僕の方を向いて騒ぎ出す。「ああ、寝返りだ」とか、「ほら、笑った」とか。僕の行動はそんなに特別なことなんだろうか?だって、僕が動くのはただの反射だ。そんなに騒ぐことじゃないと思うんだけどな。

ある日、僕がいつものように柔らかい方に抱っこされていると、どっしりした方が「お前は将来、何になるんだろうな」なんて言っていた。将来?それってなんだろう?僕には、ただ今があるだけだ。将来なんて見えないし、考えたこともない。でも彼らにとっては、どうやら僕が「何か」になるのが重要らしい。何かって何だろう?歩けるようになること?それとも、言葉を話すこと?

僕が「おとな」というものになったら、今みたいに彼らは僕のことを見つめてくれるんだろうか。今の僕は、何もできないから、きっと面白いんだと思う。でも、もし僕が彼らと同じように大きくなったら、その時はどうなるんだろう?

また、彼らが僕に何か言っている。「大きくなったら、ちゃんと自分の力で生きていけるようになるんだぞ」。ふーん、自分の力で?そんなこと、今は想像もできないな。だって、僕はまだ一人で何もできない。お腹が空いたら泣くだけだし、眠くなったら体が重くなる。でも、彼らはそれを嬉しそうに助けてくれるから、僕はそれで十分だ。

時間が経つにつれて、僕は少しずつ成長していく。何かに興味を持つようになり、手足が自由に動くようになってきた。だけど、その一方で、この二つの生き物も少しずつ変わっていることに気づいた。柔らかい方は時々疲れた顔をしているし、どっしりした方は夜中に僕が泣くたびに「もう少し寝かせてくれよ」と呟くようになった。

どうやら、僕が大きくなることは彼らにとって必ずしも良いことばかりじゃないらしい。でも、それでも彼らは僕を愛しているみたいだ。なぜなら、僕が泣けば、どんなに疲れていても必ず抱っこしてくれるし、笑えば、どんなに眠そうでも僕を見て微笑んでくれるからだ。

僕は思った。この二つの生き物は、きっと僕のために生きているんだ。僕が何者かになっても、たとえ僕が自分で歩けるようになっても、彼らは僕を見守ってくれるだろう。

「この子は本当に甘えん坊ね~将来大丈夫かしら?」
「ま、今はまだ赤ちゃんだからな。何も心配いらないさ」

彼らの会話と笑い声はとてもここちが良い。そして、ふと最後にこう思った。

このまま愛されるままに育ったらどうなるのだろうか?『子ども部屋おじさん』になるのかな。

僕はふと出た疑問に笑みを浮かべ、眠気に誘われて深い眠りに落ちた。きっと、どんな未来になっても僕は愛されるからね

あなたの1分を豊かにできるようこれからも頑張ります!