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高校時代に恋愛できなかった男子校生たちの悲哀

私はおそらくレアキャラであろう、公立の男子校出身である。

『自主自律』をモットーにした、クソ自由な学校だった。

昼休みに宅配ピザを頼んでみんなで食べたり、授業中にモンハンの集会所に他クラスのやつと集まったりしていても、全く怒られないようなところだった。

そんな怠惰な日々を送っていたのだが、残念なことに我が校で恋人がいるリア充はたったの5%(アンケート調査)だった。

ご多分に漏れず私もその95%の一人だったのだが、私のクラスメートにどうしてもリア充になりたいというやつがいた。

合唱部に入っていて、バスの渋い声で歌うやつだった。

「女子高の文化祭に行って彼女をつくろう」

彼はそう言って私を誘ってきたのだった。

私の通っていた高校には姉妹校(?)的な感じでペアになる女子高があった。

私の高校の学生のほとんどはその女子高の文化祭に行くし、また逆に女子高生はうちの高校の文化祭に来た。

「俺は今年の文化祭で彼女ができなかったら、二次元に落ちる」

バス(そう呼ぶことにする)はそう宣言し、髪の毛を茶色に染め、ガチの本気具合だった。

普段は真面目なバスが、その時とてもチャラく見えたのだった。


当日、女子高の文化祭に行くと、当たり前のようにクラスメート達がたくさんいた。女子高の文化祭にきた、というよりかは、共学の文化祭に来た、といった感じだった。

正直、文化祭で何をしたかについて、私はよく覚えていない。

しかし唯一強烈に印象に残っているのは、「ソフトボール部VSお客さん」のイベントだった。

ピッチャーが投げてお客さんが打つのだが、1~4球目は本気で投げて、打てなかったら5球目はゆっくり投げて打たせてくれるというものだった。

小さい男の子ですら、5球目はフルスイングでヒット級のあたりを見せていた。

しかし私は、その5球をすべてフルスイングで空振りしたのだった。

「おいおいあいつマジかよ」みたいなお客さんの視線が怖かった。

バスにも「お前ってほんと陸上以外のスポーツできないよな」と言われた。

これ以降私はトラウマになり、バッティングセンターに誘われても絶対いかない男になってしまったのだった。


女子高の文化祭を終えて、どうやらバスは二人とline交換ができたらしかった。

上機嫌なバスに私は「次元落ちしなくてよかったな~~」と言った。

しかしその1か月後、残念ながらバスは二次元の世界へと足を踏み入れることとなった。

どうやらline交換はできたものの、その後既読がつかなくなったらしい。

バスは授業中にラノベを貪るように読みはじめ、次元とともにテストの順位も落ちてしまった。

茶色かった髪の毛も、気付いた時には黒になっていた。

現実って厳しいなあ、と私はその時思ったのだった。


ろくな高校時代をおくらなかったのはバスだけでなく、私もそうなのだが、大学生になってから男子校であったがゆえの後遺症に苦しんだ。

それは、「大学生になっても女子高生が好き症候群」である。

電車の中でも目がいくのは、スーツ姿のOLやおしゃれな大学生などではなく、制服姿の高校生なのである。

さすがに社会人になった今はだいぶ克服しつつあるが、それでもコスプレ一覧の中にセーラー服があるととても惹かれる。

男性はみな制服が好きというが、男子校出身はその傾向がより顕著にあると思う。

例えばラブホに行ったとき、女性は男性の「制服着て~~」という要望に対して、恥ずかしいとか、もうそんな年じゃないとか思うかもしれないが、

その背景には様々な悲哀があることを知ってほしいと思う。

制服は、何歳になっても似合う。

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