医療の昭和の歴史を調べてみた

昭和の本を偶然読んでいた時に、少々、歯学生の知人から相談を受けた話で、ちょっと興味深いものがあった。

最近、私立の歯学部を始めとして、国試対策を1年や2年から意識させるといったことをしているらしいが、どうも、先生の話は単に国試に出るからというだけで話していて、何が問題なのか?ということが分からないと愚痴をこぼしていた。

例えば、国試の改変でこんな感じの問題を解いていたらしい。

医師の職業倫理で絶対にあてはまらないものはどれか。全て選べ。

1⼈間性

2社会性

3⽣涯学習

4利他主義

5営利主義

まあ、5の営利主義が答えだというのは間違いないと思うし、素人でも分かるが、ではなぜ、営利主義をそこまで、警戒しているのか?と問われると確かに疑問の余地がある。

実際問題、歯科の医院に備え付けるセットも、今は結構な値段になっているらしく、開業をするのに、バブル期では3000万程度で済んだらしいが、現在では1億くらいかかると、どうやら、開業している歯科医師からその歯学生は聞いたらしい。

そうなると・・・ある程度、費用が回収できなければ、歯科医院の倒産は必至だが、そういう状況に関わらず、営利主義が問題になるのか?という問いが出てくる。

ここで、まず、問題になるのは、営利主義により、どういう不祥事が過去に合ったのか?ということをまず調べなければならないだろう。

そこで、偶然、昭和史の本を読んでいたところ、昭和の時代にこんな通報窓口があったそうだ。

昭和の時代には歯科110番というものがあったらしい。

これは、歯科医の乱診乱療を正す目的で、日本消費者連盟(竹内直一代表委員)が開設した歯科医療の苦情相談窓口だという。

電話での受付は1981年の4月9日~11日で、手紙での受付は1981年9日~30日に行われたらしい。

弁護士と歯科医師ら七人が相談にあたり、3日間で全国から508件の苦情が寄せられ、1981年の5月13日に、同連盟は、日本歯科医師会に改善要求交渉を行なったということだったらしい。

つまり、こういったことで、過去に乱診乱療が問題になっていたということだった。具体事例は、これ以上、見つからなかったが、その一方で、歯科ではないが、富士見病院で、また、1980年代には、富士見産婦人科病院でも事件があったらしい。いわゆる富士見病院乱診事件。

これは文献でも確認したのだが、要は無免許で診察をしたり、乱診乱療をやったことで問題になったらしい。そして、そのために、患者が多大な不利益を被ったということである。

昭和の頃にはこういったトラブルがあったというのは、今回調べて、初めて知った。確かに、費用を回収することは大切なのかもしれない。しかし、営利主義ではこういったトラブルに繋がるということが歴史を調べると分かる。ただ、ここまで調べている人は少ないのだろうな。

まあ、そういうわけで、ああいった試験で聴かれるのは決して、試験のためのことではなく、過去にこういったトラブルがあったために、その戒めだと、自分で調べてみて考えたので、その旨を知人の歯学生に伝えたという話。

やはり、昭和の歴史は調べてみないとわからないことがあるし、知らないために、今のようなコンプライアンスがうるさくなってしまったことに対して反感を持ってしまうのだろう。こういう事態が続くと、多分、喧嘩にしかならないので、具体的なことを調べて、歴史的で具体的な知見を広めたいと考えるに至った。

参考文献

歯科110番については、以下の文献のp129

富士見病院乱診事件については、以下の文献のp86-87


この記事が参加している募集

最近の学び

よろしければサポートをよろしくおねがいします。