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【野球の話】「梅」のセ・リーグと「桜」のパ・リーグ

2020年のプロ野球も日本シリーズが終わり、福岡ソフトバンクホークスが読売ジャイアンツを4勝0敗で下し、4年連続の日本一に輝きました。

今年はジャイアンツの本拠地の東京ドームが使えず、さらに全試合DH制を採用するというパ・リーグ有利の条件でした。にも関わらず、たらればの同情論すら起こらなかった理由は、既に昨年、両者イーブンの条件でもホークスがしっかりと4勝0敗で日本一を決めたからです。

ここ10年を見てもパ・リーグが9回の日本一、うちホークスが7回と突出していますが、その強いホークスでさえ昨年と一昨年はレギュラーシーズンで優勝出来なかったことを考えると、やはりパ・リーグ全体のレベルの高さが伺えます。

一方、今年のセ・リーグを独走で優勝を決めたジャイアンツですが、シーズン終盤の失速もあり、日本シリーズ前の勝敗予想では、ホークス相手にひとつ勝てるかどうかという評価でした。結果としては、低い下馬評をさらに下回り、日本シリーズにおけるチーム打率.132というワースト記録を刻んでしまいました。

ここまで実力差が明確になると、通算のシリーズ成績でもパ・リーグが大差をつけていると思いきや、実は今年の結果を加えた時点でパ・リーグ36勝、セ・リーグ35勝と、意外にも拮抗していました。ここ10年でセ・リーグが1度しか勝ってないことを考えると、それまではむしろセ・リーグがパ・リーグを大きくリードしていたのです。これはまさしく古くからの流行歌における「梅」と「桜」の関係に似てるのではないかと思い、勝手に結びつけて記事にすることにしました。

 

かつて、奈良時代に編纂された万葉集は、梅の花が詠まれた歌が120首余りに対して、桜の歌は約40首と、セ・リーグ…もとい、梅の花が大差でリードしていました。大陸渡来の植物である梅は、主に貴族階級によって親しまれ、当時は庭園にて開かれるお花見の主役と言えばもっぱら梅の花だったようです。

平安時代の中期より、遣唐使の廃止によって徐々に唐の文化が弱まったことや、平仮名の登場によって日本の文学が洗練し始めたことで、少しずつ日本古来の花である桜の歌が多く詠まれるようになってきました。

古今和歌集では、梅の歌が約20首に対して桜の歌が約70首と、少しずつパ・リーグ…いや、桜の花が猛追しています。また、華やかに咲き誇り、やがて儚く散りゆく姿を「時の無常」になぞらえ、日本文学における美意識「もののあはれ」を体現する存在として、広く人々に親しまれるようになりました。

さらにその頃の貴族社会から武家社会への移り変わりが、まさに桜の咲き散る様相と重なったという時代の流れもありました。以降は日本の花の代表格として定着し、私たちが生きる現代においても、桜をモチーフにした歌がいつまでも愛され歌い継がれています。

その一方で、梅をモチーフにした歌は数えるほども無く、かつての隆盛を誇った花の復権を願うファンも少なくありません。

「梅」のセ・リーグと「桜」のパ・リーグ、来年以降の日本シリーズでは、チャンピオン同士の熱い頂上決戦が見られることを心から願っております。

 

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