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私の言葉を、『アザラシの茶柱』というパワーワードに塗りつぶさせない為に  『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない 自分の言葉でつくるオタク文章術』書評

最近、Twitter(現X)でこんな動画が流れてきた。
アザラシのライブ配信である。
普段なら5人ぐらいしか見る人が集まらないのに、今では2000人も同時に見ている。
それも夜で、カメラからアザラシが見えない時間に。

25mぐらいのプールを悠々と、とても気持ちよさそうに泳いでる。
夏の暑さで参ってる私からすれば、少し羨ましいぐらいだ。
そんな状況をネットの誰かが、『アザラシの茶柱』と例えた。
思わずクスッと笑ってしまうぐらいの、素敵なネーミングセンスだ。

そして今、私は猛烈に嫉妬している。
アザラシと茶柱を掛け合わせ、ネットミームを作り出せるセンスに。


私の感想は、ネットミームに敵わない。

パワーワードにネットミーム。
世界には、そういう便利な言葉が沢山ある。
一番最初に考え出した人はバズり、注目され、天才と呼ばれる。
ネットで文章を書いてる人なら、一度は憧れる言葉だ。

実を言うと。私は自分の言葉に自信がない。
正直、ネットのパワーワードの方がいいと思ってしまう。
その言葉で本が好きな仲間と、スキを共有できるのだから。
おまけにバズって人気になれるなら、文句のつけようがない。
この本を読むまで、私はそう思い込んでいた。

推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない

みんなが共通の言葉で楽しんでるなら、私もその言葉を使いたくなる。
的外れだったり、周りとズレた感想を言う可能性はなくなるから。
「それだと、あなたらしい感想はできないよ?」
と、この本に言われるまでは。

でも、どうやって私だけの感想を生み出せばいいのか。
隅から隅まで読み込んでる考察は、きっと私には敵わない。
愛に溢れすぎている感想を見せつけられ、私の心が押し潰されそうになる。

なら、どうやってこの気持ちを表現したらいいのか。

「感想は、あなただけの感情を書けばいい」

私が読んだ本には、そう書いてあった。
物語の作者でも、他の読者でも、あなたの感想は書けないから。
推しに対するあなたのスキは、あなただけの感情だから。

「そう言われたって、私の感情は他の人と同じよ」
そう思ってる読者もいるかもしれない。
アザラシを見て可愛いと思った感情は、他の人と同じだから。
でも、この本はそんな疑問にも答えてくれる。
感情が一般的なら、そこに至るまでのエピソードを書けばいいのだ。

私がアザラシを巡る状況を見て、優しい世界だと思った。
可愛いアザラシを助けようを、みんなが寄付し過ぎてしまうぐらいに。
お陰で募金を行ってるサーバーは停止してしまったけど。
アザラシが可愛いとか、茶柱みたいになってて面白いとか。
そういう感想じゃなく、『アザラシのプールに集まる、優しさのスパチャ』が私の感想だと思った。

こういう感じで、私だけの感想を書いていけばいい。
読んでくれる読者は誰か、それに合わせてどんな言葉を使えばいいか。

といった感じで考えることは多いけど、少しは私も前進した気がする。

……でもやっぱり、『アザラシの茶柱』以上のパワーワードは私から出てきそうにない。
そこをもっと磨いていくのが、私の課題なんだろうな。

この本はとても面白かったので、他にも記事を書いてます。
よかったらぜひ、見て下さい。

*このエッセイはフィクションです。

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