娘の名前
娘が生まれて1ヶ月が経った。
命名書を書いてもらったら、ちゃんと名前になった気がしてうれしくなったので、その由来について書いてみようと思います。
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のっけから話が逸れるが、私の名前は、亜衣。
漢字にも響きにも意味はない。漢字は画数で決まったそうだ。
私が生まれたとき、助産師さんやお見舞いに来た友人に子どもの名前を聞かれた母が「いちご。おいしいし、かわいいし」と答えたところ、全方位から止められ、その結果、母の名前「ひとみ」つながりで「あい」になったそうだ。
「ひとみ」と「あい」をつなぐのは、『キャッツアイ』。
「あい」は、eyeなのだ。
この話を小学校の作文の課題「名前の由来」のために聞いたとき、「まじかよ」と同時に「ちょっとおいしい」とも思ったりもした。
(ちなみに弟は「ルイ」ではない。ルイだと大変だよね。花沢類になっちゃってたんだから。まーきのっ)
自分にそんな名前の由来があるもんだから、娘の名前をつけるときも意味以外のなにかがあるとおもしろいなと思っていた。
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性別がわかってからいろいろと考えを巡らせ、候補を出してきたが、「顔を見て決めよう」というそれらしい理由をつけて決めかねていた。
そして、出産のとき。
それは随分とスムーズで、破水の5時間後には分娩室へ移動となった。
分娩室に移動するほんの数メートルの間に、窓から鮮やかなグラデーションの空が見え、目を奪われた。
ピンク、赤、オレンジ、紫…私の持ち合わせている言葉では表現仕切れない色の空がそこにはあった。
押し寄せてくる陣痛の痛みとこれから挑む分娩の不安でいっぱいだったが、その瞬間は痛みも不安もひき、スンっとすき通った空気になった気がした。
一緒に歩いていた助産師さんとほぼ同時につぶやいた「きれいな空」という言葉が、早朝の静かな廊下なひっそり響いた。
あとで調べると、それは台風上陸直前によく見られる朝焼けとのことだった。
その約1時間半後、泣きながら真っ赤な顔をして小さな女の子は生まれてきた。
そのときにはもう真っ青な秋晴れの空になっていた。
”凪の時間に見えた、美しい絵 ”
あの一瞬の景色をこの子に伝えなくちゃ、そう思ったとき私の中で名前は決まった。
毎年私の誕生日におばあちゃんが「あいちゃんの生まれた日はものすごく暑い日でね」と教えてくれたように、
「絵凪が生まれた日は、大きな台風が上陸する前の静かで美しい朝焼けの日でね」と教えてあげようと思う。
いつか「名前の由来」を聞かれたときのために、あの空の色を伝えられる言葉を探しておかなくちゃ。
ちなみに、面会できずにいた夫は夫で、この名前がいいなと思っていたそうだ。
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10か月間「ちびた」と呼ばれていた小さな女の子は「絵凪」になった。
呼びかける私たちも慣れなくて出生届を出したり、あだ名を考えたりしてもどうしても照れ臭い。
「ちびた」が「絵凪」になって、1か月になろうとしたときに届いた命名書。
文字が名前になり、「ちびた」が「絵凪」になり、「絵凪」の人生がはじまったんだと改めて実感した。
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命名書はめいちゃん(@iimeimeii)に書いてもらいました。
インクの色、包装まで名前を意識してくれてありがとう!
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