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M&Aで見落とされていること

京都や滋賀県を中心に土地家屋調査士業務を行っている平沼です。土地家屋調査士の私が思う、事業譲渡や企業買収で見落とされてことを記載します。


土地家屋調査士の仕事

不動産を売却するときの土地家屋調査士の主な業務は次の2つです。

売却する土地はどこまでなのかを買主に明らかにする必要があります。土地家屋調査士

1.不動産登記の調査

土地や建物は法務局に登録(登記)されております。不動産を購入した時、法務局に自分が所有者だと登記することで、その不動産が自分の物だと証明することができます。
しかし、登記の不備で、建物が登記されていなかったり、登記の内容が誤っていたりすることがあります。
土地家屋調査士は、不動産を売却する前に登記の不備等がないかを調査する仕事をしております。

2.境界線の確認

 土地を売却する際はどこまでが売却する土地なのかを買主に明示する義務があります。売却する土地とその隣りの土地との境目が境界線です。
 土地家屋調査士は境界線を探したり、測量して図面にしたり、現地で境界線の位置が分かるように目印を設置する仕事をしております。

不動産を売却するとき

上述のように、不動産を売却するときは土地家屋調査士が不動産登記のチェックをしたり、境界線の測量を行ったりいたします。
それ以外にも、用途地域や建ぺい率、規制の有無や接道状況を調査し、契約前に重要事項として買主に説明をいたします。
場合によっては、建物の耐震診断や土壌調査なども行います。

企業買収はその企業の不動産も買うということ

企業買収をする際、その企業の技術や設備、顧客などを購入します。そのため、買収前には綿密な調査を行うはずです。この調査をデューデリジェンスと呼びます。
しかし、多くの企業買収では技術や設備、財務状況の調査等を行いますが、不動産の調査を行うケースがあまり見られません。不動産の調査をするとしても不動産鑑定士に不動産価値の評価を鑑定してもらう程度がほとんどです。
しかし、上述のように、企業を買収するということはその企業の不動産も購入することとなります。そのため、不動産購入と同じように、不動産登記の調査や境界線の確認などが必要となるはずです。不動産に関する調査を不動産デューデリジェンス(不動産DD)と言います。
土地家屋調査士の私から見ると、多くのM&Aで不動産デューデリジェンスが重要視されていないことが問題と考えております。

不動産DDを怠ったことによる失敗

私が実際にご相談を受けたケースです。ある中小企業がM&Aを行いました。買収した企業は店舗とその土地を持ってました。企業買収後しばらく経過した後に、店舗とその土地を担保に融資を受けようとしました。その際に調査したところ、実は店舗が隣りの土地に越境して建っていることが分かりました。権利のない土地に建物が建っており、建ぺい率もオーバーしているため銀行融資を受けることができなくなったということがありました。

不動産を含む企業買収は不動産DDを

不動産を購入するときは重要事項の説明を受け、物件の詳細を確認した上で売買がされます。また不動産売買時には瑕疵担保特約がつきます。
しかし、企業買収や事業譲渡等では、不動産に関する重要事項の説明を受けない場合が多くあります。企業買収ではサービスや設備だけでなく不動産も取得することから、しっかりと不動産調査をすることが必要です。

あいおい合同事務所では、不動産登記の調査や境界確認などの不動産デューデリジェンスを承っております。また、不動産鑑定士やホームインスペクターなどとも連携して調査することも可能です。
京都や滋賀県で企業買収や事業譲渡をされる際は、あいおい合同事務所へ不動産デューデリジェンスをご相談ください。

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