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コラム#4 レシピ信者(ちゃんと作らなきゃ、からの解放)

「鶏肉と夏野菜のカチャトーラ」

カチャトーラは「猟師風の」という意味で、猟師が狩ってきた獲物(鶏肉やウサギ肉)を、たっぷりの適当な野菜と一緒に煮たことから始まった、イタリアの家庭で食べられている煮物の一つです。


我が家では、夏の時期に必ず食卓に上る定番メニューで、自宅の傍の畑でとれる野菜を使った元気が出る味のソースは、私の大好物の一つでした。

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社会人になり上京した年の夏、連休中に暇をしていた私は、

ついにそのメニューを自分で作ることにしました。

早速母にメールでレシピを送ってもらい、手順通りになんとか作成。


しかし!出来上がったものは、昔から知っている母の味とは何かが決定的に違います。

その後も、何回か挑戦してみましたがなかなか同じ味になりません。



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あーでもない、こーでもない、そんな事を繰り返していくうちに、

私のカチャトーラはだんだんと元レシピとは遠ざかり(笑)

白ワインを入れたり、しめじを入れたりと、完全な私のオリジナルレシピへと変化していきました。

レシピ信者

お料理を始めたころの私はレシピ信者でした。

レシピ通りに作ることこそが料理を成功させる道だと思っていたし、

「塩少々」とか「砂糖適量」という表現を見つけては、「一体少々ってどのくらいなんだ?」

とモヤモヤとしながら、いまいち味の決まらない料理を沢山作ってきたような気がします。


しかし、今はそんな数多くのレシピ信者の方々に伝えたいです。

「料理はもっと自由に作っていい!」ということを!(笑)


オムライス




最近話題に上がっている『カレンの台所』という本には分量がありません。


食材の擬人化や、彼女らしい言い回しも面白いのですが、分量がない代わりにちりばめられた感覚的な表現の数々が、想像力を湧きたててくれます。


そして、頭の中で想像した料理を、どう実現にしていくかは、「ひたすらあなたの自由ですよ!」と教えてくれているような感じで、読んだ後に無性に作りたくなってしまう本でした。



もしかしたら、そんな料理の「自由さ」を少し意識してみたら、日々の料理がもっと楽しくなるかもしれない!


そんな思いで今日はこのコラムを書いています。




お菓子作りは味見ができない



料理の自由さを実現するために欠かせないのが「味見」の存在です。


「お菓子作りと料理の違いって味見が出来ないことなんですよね」


製菓の先生からそう教わったとき、なるほどなと思ったものです。


お菓子は粉、砂糖、油脂、卵などを組み合わせてベースを作りますが、それらはしっかりと計量をすることで、美味しく仕上がります。

ですから、後から味見をして味を調える、という作業は存在しません。



数学的な正確さがあるお菓子作りと比べると、素材に合わせて味見をして分量を調整したり、味を調えたりする味見は料理にだけ与えられた特権とも言えます。


だからこそ、五感をフルに使って、自分の好きな味付けにしてよいし、楽しんで良い。


それに、どんなに失敗したって、あと数分後には誰かに食べられてなくなってしまうのですから気負わずやってしまえばよいと思います。



レシピは曖昧なMap

では、レシピとは一体何なのか?

レシピ信者だった私にとってそれは絶対的な地図でしたが、味見を知り、レシピから解放された今は単なるガイド役くらいに考えています。


実物として残せない「味」の再現性を高めるために誰かが頑張って数値化したもので、目的地が曖昧なMapといった感じでしょうか。


頑張って数値化したとしても、味覚はとても個人的なもので、本当に伝えたかった味を完璧に伝えるのは難しいことです。


だから、レシピ通りに作っても、人により違う味になったりするし、そもそも正解はわからない。


ですので、夏野菜のカチャトーラが自分なりの変化を遂げていったように、レシピを地図にして、味見で道を確かめながら、自分なりの美味しいの記憶に従って進んでいけばよいと思うのです。

カッチャトーラ


自由だからこそ美味しくなる


カチャトーラは私流の変化を遂げましたが、

驚いたのは、うちの兄が私のオリジナルレシピを食べてひとこと、

「お母さんの味と似てるね」と言ったことです。


母がどんなアレンジをしていたかはわかりませんが、

レシピから解放されて、ただ自分の美味しいと思うようなアレンジを加えていったことが、逆に求めていた味になっていたのです。



きっと、幼いころから食べている母の味が、私の美味しいの記憶となって積み重なり、味覚の基準を作っていたのかも。


そう考えると、自由に味覚を辿っていくことが、美味しいへの一番の近道なのかもしれないですね!

水曜日

「鶏肉と夏野菜のカチャトーラ」

分量なしバージョンのレシピを作ってみました!(笑)分量付きはまた今度紹介したいと思いますが、まずはこれで、味見という贅沢を楽しみつつ、自由に作っていただきたいなとおもいます!

分量のないレシピ「夏野菜のカチャトーラ」

使う食材:(3~4人分)ニンジン、セロリ、玉ねぎ、ズッキーニ、ぶなしめじ、トマト缶、鶏モモ肉、ニンニク、ご飯、ブイヨンキューブ、塩コショウ、水、オリーブオイル、(ローリエ、オレガノ)、小麦粉

使う機材:包丁、まな板、底の深い大きなフライパン、木べら(耐熱性ゴムベラ)、肉を焼くためのフライパン

作り方:

1、玉ねぎ半玉とそれの半量のニンジンとセロリを、同じサイズのみじん切りにする。
2、夏に出回る立派なサイズのズッキーニを半量を、一口にちょうど良いサイズに切る。
3、オリーブオイルをひと回しかけたプライパンに、親指の先位の量のにんにくをみじん切りにして加える。
4、焦げないようにじっくりとフライパンを火にかける。
5、ニンニクの周りに細かい泡がついて、ニンニクのいい香りがしてきたら①の材料をすべて入れて、味がつく位の量の塩をつまみ入れて、またじっくり火にかける。
6、玉ねぎやセロリが半透明になるのを確認したら、⑤のフライパン全体をパラパラと覆うくらいの量のしめじを入れて、ズッキーニも加え、天地を返しながらさらに火にかける。
7、(もう一つ用意していたフライパンで)手のひらサイズの鶏肉をちょうどよい大きさに切り、少し多めの塩コショウをして、うっすらと小麦粉をまぶしておく。ひと回しのオリーブオイルで焼き、美味しそうな焼き目がついたら、白ワインひと回しかけて「ジュー」という蒸発の音を聞きながら、アルコールを飛ばす。
8、⑥の鍋に⑦の鶏肉(肉汁も一緒に)トマト缶と、野菜が完全に隠れる位の水、ブイヨンキューブをすべて投入して10分ほど煮る。※ハーブがあればここで入れておく。くつくつと表面に泡が出るくらいの温度で様子を見ながら、火加減を調整。
9、最後に味見をして、塩、コショウ、だし汁、プラスのハーブ(パセリ、オレガノ等)でお好きなテイストに仕上げる。
ご飯の上からかければ、イタリアの家庭料理カッチャトーラの完成です♪


★お野菜はアレンジして色々加えてみてください!


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