私の体は私のもの
ここのところのSNSを見ていると、どうも私は具合が悪い。特にXはそういう話を寄せて見せてくるから、今回の嫌なニュースはいくつかキーワードをミュートにして、なるべく見れないようにしている。
それでもすり抜けて見えてしまうポストがあるので、目をすべらせて読まないようにする。性被害に遭ったことのあるものとして、今回のニュースは見ると具合が悪くなる。
というわけで、今回の記事にはそんな話を書くので、その話に触れると具合が悪くなる私のような方は、そっと記事を閉じていただけたら。
「私の体は私のもの」「他人の体は他人のもの」ということが、わからない人の存在に愕然とする。でも、過去を思い出せば、確かにそういう異性に少なからず出会ったよなと思う。
勝手に体に触るひと。ふたりだけになってしまっては絶対にダメだと感じるひと。寝ている時に急にいたしてくるひとも、恋人かどうかに関わらずいたよなと。それがレイプなのだとは私も当時は認識がなかったし、ただ不快だとだけ記憶に残っていた。でも確かに、記憶に強く残るということは、私という存在が傷ついているといえるのかもしれないし、NOと言っていいことだったのだなと今になって思う。
私がベルリンに住むようになって、私の見る世界がごく一部だということは認識しているけれど、「自分の体」という点で、かなり生きやすくなったように思う。
私が日本にいたとき、付き合ってもいない異性から、急にキスをされた/されそうになったりとか。そこまででなくても、急に手を触られたりとか。当時の私は、それを「同意を取っていない」とも思わないような価値観だったから、自分にも非があるのかもしれないけれど……と書くのもちょっと嫌な気持ちだけれど……。
いまの恋人とデートをするようになってから、その後関係を始めて今まで、同意を取るということはこういうことなのかと学ぶことがたくさんある。日本で性被害に遭って以来、私は男性をなるべく避ける生活をしてきたので、ほかのいわゆる欧米男性がどうなのかはあまり知らないけれど、こちらで出会う男性は、同意がなければ勝手に相手の体に触らないひとが多いと思う(…というのは、ひとりだけ無断で勝手に触ってきた人がいる)。あいさつのハグだって、私がアジア人だからか、一瞬の間を読んでハグだったり握手だったりする(と、私は理解している)。
いまの恋人は、体に触れるようなこともそれ以外も、1つ1つ同意を取っていた。関係を始める前もその後も。その文化で育ってこなかった私は、なるほどこういうことにも同意を取るのかと興味が湧きながら見ていたし、私たちはそういう場面以外の時間も使って対話をしてきた。だからいまの恋人とは安心して暮らせる。恋人の友人とか、恋人以外の異性と会うときも、私の気持ちを理解している恋人が横にいるから、安心してそこにいることもできる。
日本とドイツでは文化が違うわけだし、私は日本の文化を否定したいわけではない。文化と個人の振る舞いは、切り離して考えることができそうだということは最近わかってきた。けれど、他人の体は他人のものだよ。あなたの体はあなたのものでしょう。それを他人に勝手にされることは不快でしょう。それなら他人の体にも同意なく触れてはいけないよ。と、思う。シンプルなことなのに、「他人の体は他人のもの」という文化で育たなければ、わからなかったりもするのかも。私もその考え方を持たずに、大人になったから。
じゃあやっぱり、教育が大事なんだよなと思う。政府が思うように子どもをしつけたいような教育よりも、人が人として、どんな人でも自分の権利を当たり前に持って、安心して暮らせるための教育。道は長いかもしれないけれど、日本にもやっぱり欲しいよ。
そんなことをぐるぐると考えている、年末の今日。ドイツに暮らすと、日本のテレビやスーパーに年末感をそそのかされないし、同居の恋人はクリスマスも特に祝わないから、年末年始感がない。けれど、こんなふうに心のうちを掃き出して、年末に心の大掃除をしたくなっている私には、日本の文化が染み付いているなぁと思う。
私自身の今年1年の振り返りとやらはあまり気乗りがせずにいたけれど、ぼちぼちやるかなぁ。まだ掃き出されたがっている感情があるような気がする。
ここまで読んでくださったみなさん、ありがとう。あなたの心も、不要なものは年末に整理がされますように。お互い良き状態で新年を迎えましょう。