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セッション

セッション (2014)
原題:Whiplash
監督:デイミアン・チャゼル

アメリカ一番の音楽院でドラムを専攻しているアンドリュー。
男手一人で育ててくれた父の自慢だけど、友達もできず、夜は父と二人ポップコーンを食べながら映画館で映画を観る。
夕方一人残って練習していると、学院最高の指揮者テレンス・フレッチャーの目に留まり、彼の一声で初級クラスのバンドから、学院一のスタジオ・バンドチームのドラムに引き抜かれた。
その夜、映画館で気になる女の子に、やっと声をかけることができてデートに誘う。
スタジオ・バンドの練習は、全員がピリピリしている。フレッチャーの期待に応えられないものは、激しい人格否定、罵詈雑言を浴び、退場させられる。容赦ない侮辱と叱責、椅子を投げ、理不尽に恥をかかせ、競争心をあおる。泣きながら、バンドに残るために血のにじむ練習を重ねるアンドリュー。

フレッチャーの指導は軍隊のようだ。
恐怖心と闘争心を刺激して、カリスマ的に威圧しチームを従わせる。
その試練に勝ち残ろうとするアンドリューは、練習のためにデートをする時間も無駄だと言い出し、音楽院一のバンドに選ばれたことをバカにする親戚に飛びかかり、血まみれになりながら取りつかれたようにドラムをたたきづづける。

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この作品は、アカデミー賞5部門にノミネートされ、J.K.シモンズは助演男優賞に耀いているが、同時に行き過ぎた指導や虐待を肯定しているのではという批判の声も上がっている。
それくらい、フレッチャー役のJ.K.シモンズの執拗な叱責や罵倒は虫唾が走るほど不快で怖い。
そして、鬼指導についていくことが選ばれた者であるという、強迫的な思い込みに、アンドリューは排他的で病的な執着心に蝕まれていく。
時代設定は20世紀後半だろうか。作中で、フレッチャーの罵倒で退場させられた学生が、その後事故死ではなく自殺だったことで弁護士が動き、アンドリューにもフレッチャーの指導に問題がなかったか審問がある。
一昔前まで教育や愛だといわれて、隠したり見過ごされてきた暴力的な行為が、声高に指摘され、法的に訴追されるようになったのは最近なのかもしれない。
表舞台を与えられる師と、若い才能。栄光や力に隠蔽される暴力。エンターテインメントの光と闇。
圧巻の演奏をするアンドリューとそれを引き出したフレッチャー、愛憎に似た師弟二人の関係が、嫉妬と裏切りと怨恨を超えて、あの鬼気迫る即興の音を響き合わせ生み出したかと思うと、複雑な気持ちになる。

主演のマイルズ・ミラーは、2ヶ月毎日ドラムを練習し、撮影でも自ら演奏しているという。その迫真の演奏と練習でボロボロになった手の傷は、最後のシーンを圧倒的なものにしている。

note今年の抱負
去年末、体験にいったドラムレッスンが楽しくて、今月から練習に通いはじめました。マイルズ・ミラーが2ヶ月であんなにすごい演奏ができなんて信じられない・・・
今のところほめて伸ばしてもらえるので、がんばって続けようと思います。







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