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ハンドクリーム

先日、友人と話していたらハンドクリームを塗るタイミングってないよねと意見が一致した。

ドラッグストア、いやそうでなくてもソニプラ(←言い方が古い)などのコスメが置いてある雑貨屋でちょっといいハンドクリームを買う。

パッケージがきゅんとするものだったり、その時の肌の悩みに合わせた機能的なものだったり、いずれにしても自分なりにコレと選んでハンドクリームを1つ手にする。

でも、そのハンドクリームを使うのは最初の1週間くらい。あとは気がついた時に手に取るものの、その頻度は低い。ひどい時には数ヶ月放置されていることもある。せっかく、ほんの少しだけ胸を躍らせながら買ったのに。かくして一冬前に買ったハンドクリームが未だに引き出しの中に鎮座していらっしゃる・・・ということを一体何年繰り返してきただろうか。

なんでハンドクリームを塗れなくなるのかというと、それはキーボードを叩いたり、料理をしたり、手を使う必要がある次のアクションへの支障を考えるから。

かさついた手でキーボードを叩く自分に1ミリずつ自己肯定感が削られていくのに、ハンドクリームでベタついた手でキーボードを触るのはもっといや。というよりキーボードにてかった指紋がつくのが端的にいや。

夜、1日の疲れを労う時間帯が深まっていくにつれ、ご自愛タイムという気になる。

夕飯を終えて一通り片付けが済んだ瞬間。娘を寝かしつけ終えてホッとした瞬間。夫婦でテレビを観ながら晩酌をする時間。

ふっと気を緩めていくそういう時間こそハンドクリームでおててをケアしたいところだけど、「まだ洗い物があるな」と思うと自分にストップがかかってしまう。

おつまみの食器。寝る前のハーブティーや白湯。歯磨き。寝る前のお手洗いのあとの手洗い。まだ水で手を濡らすことがわかっている。だからハンドクリームは後にしよう。

でも、今日も1日頑張って生きた私の余力はもう残っていない。ハンドクリームを塗る前に眠気が勝り、布団に滑り込んでコトンと寝付く。ああ今日もハンドクリームを塗り忘れた・・・・

と、まあそんな塩梅でハンドクリームは意外と塗るのが難しいよねと友人と予想外に盛り上がったのであった。

私の全知り合いの中で最も、そして真におしゃれな友人と共感しあえたことに私は望外の喜びを感じた。私がズボラなだけじゃなかった!ハンドクリーム濡れないのはあるあるだったのだ!

でもね。

家事と育児でかさついた手は、ふと陽の目を浴びる瞬間に切なくなる。

例えば買い物に行って、財布を取り出したその手が乾燥でひび割れていた時。育児中の除菌に次ぐ除菌のせいで、ガサガサと白くなった皮膚が目に留まる。せっかく夫がプレゼントしてくれたコーチの財布も、繊維がひっかかるほど荒れ果てた手で持つのはあまりに悲しい。

せめて気分を上げようとネイルをしてみようかと思うんだけど、爪がかわいくなっても手が枯れているからかえって悪目立ちするんではないかと思いとどまる。

そんな繰り返し。

冒頭の友人に手が荒れてるからネイルする気になれない、と話したらドラッグストアでも売ってるD-upのネイルファンデーションがおすすめだよと教えてもらった。

綺麗に塗ったマニキュアが剥げると気分が落ちるけど、透明のトップコートを塗ったような自然な仕上がりだから週に1回塗り直すだけで済むこのアイテムが今の自分にちょうどいいと。

そこで友人と会った翌日、早速近所のドラッグストアで買い求めた。娘が昼寝をしている隙に爪を塗り塗り。自分の手に少し潤いが取り戻ったようでうれしくなった。

あとは爪に似合う手にしたい。せめて人前で手を見せる時-財布を取り出したり、書類を書いたりするとき-自分の手のせいで気分が落ちることのない状態でいたい。復職も近いし。

光を反射するようになった爪を見ていたら、そういう思いがむくむく膨らんで止まらなくなって、スマホ片手に【神崎恵 ハンドクリーム】と検索。

その日の夜にはポーラのお高級なハンドクリームをポチッとオンラインストアで購入してしまった。こんなに高いハンドクリームを買ったのは、38年間生きてきてはじめてだった。

ちなみに神崎恵さんは、大人の女性の間で絶大な人気を誇る美容家である。私はこっそり信奉していたのだけど、くだんの友人も神崎恵推しであることが判明してこれまた「わかる!」と共感の嵐となった。知らない人はググってみてほしい。49歳、3人の子持ち(しかも男3兄弟)のシングルマザーとは思えない圧倒的美しさ。友人のおすすめで、ポッドキャストまで聴き始めたわたし。

話がそれたけど、ポーラのリッチなハンドクリームを手に入れた私は、ことあるごとにハンドクリームを塗るようになった。

少し家事がひと段落した瞬間。少し育児がひと段落した瞬間。夫との晩酌を始める寸前の一瞬。蓋を開けて、華やかな香りを胸いっぱいに楽しんで、手を労わる。

ハンドクリームを塗る瞬間は、もとから1日の中に散りばめられていたのだ。

友人にハンドクリームにも投資を始めたと報告をしたら、「いいものを買うと、それだけで使おうという気持ちが強まる。まさにそこに投資の価値がある」というコメントが返ってきてなるほどなと思った。

いいハンドクリームを塗るようになったからか、塗る頻度が増えたからか、おそらくその両方の相乗効果で、キーボードを叩く私の手は今数週間前より少しふっくらとハリが戻っていて、ちょっと嬉しい。


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