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八本脚の蝶

Instagram読書アカウントより転載

#八本脚の蝶
#二階堂奥歯

あらすじ

目覚めなさい。
現実から目覚め、「私」から目覚めなさい。
もっと深く夢見たいのなら__。
二十五歳の若さで自らこの世を去った
女性編集者・二階堂奥歯。
亡くなる直前まで書かれた二年間の日記と、作家や恋人など生前近しかった十三人の文章を収録。
無数の読書体験や鋭敏な感性が生み出す、驚くべき思考世界と言語感覚。
著者没後十七年、さらに鮮烈さを増す無二の一冊。
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この本は自殺未遂仲間の栗くんから
『読む猛毒ですよ』と言ってオススメしてもらった本。
(ちなみに栗くんは13階建てビルの屋上から飛び降りたのに、途中で電線に引っ掛かって落下したために死ねなかったという強運(悪運?)の持ち主である。それでも首から下の骨はほとんど折れてたそうな……。)
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読んでみてまず驚かされるのが日本語の綺麗さ。
圧倒的読書量で、哲学書からの引用も多く、抽象性と具体性を織り交ぜた綺麗な文章の中に、二階堂さんの哲学も感じる。

そして、時折見せるハッと息を呑むほどの危うさと脆さ。

そこには死生観も含まれていて、冷酷で残酷なまでの死生観(哲学)と、危うさの中に感じる静穏さ。
脆さの中に感じる強固さ。

死生観に関しては面白い記述があった。
"今やっているゲームはどうもRPGではないようだ。(中略)いずれにせよ好きじゃないし得意じゃない。しかもこのゲームは強制終了はできてもリセットはできないらしいです。"

"人間も、こういう部品で出来た物だったんだ。柔らかくて湿っていて腐りやすい部品ばかりだけれど、それでもやっぱり様々な部品を組み合わせて作られた自動人形だったんだ。(中略)自分は物だと確認して、またうれしくなる。"

突飛な思想だとは思う。それでもあろうことかその死生観(哲学)を美しいとさえ思ってしまった。

日記が進むにつれ、段々と二階堂さんが壊れていく様が(言い方が適切ではないが、適当な言葉が見当たらない)泣きたくなるほどに切ない。胸が苦しい。

『読む猛毒』

なんとなく分かる気がする。

心を強く持っていないと"二階堂奥歯"の世界観に引きずり込まれるかもしれない。
陶酔してしまうかもしれない。
それほど二階堂さんの言葉には力があり智がありそして魅力がある。

「どうか眠っているあいだに私が死にますように」

栗くんが、俺が、この本を読んで感じたことは同じかもしれないし、惹き込まれた理由も同じかもしれない。と感じる一冊でした。
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これはあるいは読むべきではないかもしれない。
だけど、是非とも沢山の人に読んでほしい。

_今こそ彼女の言葉が必要なのに_

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