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おせちの謎食材 くわい


あけましておめでとうございます。

皆さんはお正月はどう過ごしましたか?
人に同じ質問をされて、くわいのことを調べてたというと楽しそうで何よりと笑われた正月明けでした。メモ代わりに調べたことをまとめてみようと思います。



おせちの中には『くわい』が入っていた。
この、丸くて芽が出たようなこれは?

聞けば『くわい』と言うらしい。
ああ、あの時のと思った。人生でくわいを食べるのは2回目、くわいをくわいと認識して食べるのは初めてである。


行きつけの居酒屋で、シュウマイの中の具材は何かクイズを出されたことがある。シャキッとした食感の良い何かはレンコンか、タケノコかと当てようとするとそれがくわいだった。

おせちにはくわいは煮物として入っていることが多いらしい。
今回食べたものも煮物で、醤油みりん砂糖で優しい味付けがしてあるものだった。以前食べたシャキッとした食感とは全く違っており、茹でると炒めるとでは食感が異なるようだ。
里芋のような見た目で、じゃがいものほくほくしたような芋っぽさの中にほろ苦さがある。じゃがいもより焼いたニンニクの方が食感は似ているかもしれない。
何とも言い表し難い独特な味だ。


見た目も食感も芋に近いが山で穫れるものなのだろうか。
くわいはなんと水生多年草である。泥の中で育つ水生植物の根茎部というと存在としてはれんこんが一番近い気がする。
旬は11〜1月で、この寒い時期に手作業で根茎を掘り採る。植え付けから収穫まで手間がかかるため収穫量は年々減っているようだ。

おせちに入ってるだけあって、くわいも縁起のいい食材である。くわいの形から、芽出たい→めでたいという意味で入れられるらしい。ダジャレじゃないかと思うけど、おせちはこの1年の幸せや健康を祈って食べるものだから、文化というものは案外こじつけかもしれないし、それで良いのかもしれない。

くわいは鍬の形に似ていることから鍬芋と呼ばれ、それがくわいと変化した。
漢字だと『慈姑』と書く。これはくわいの形が子を慈しんで哺乳する母に似ているからということらしい。うーん……似ているかどうかでいうと、コンパス座や髪の毛座よりは分かる程度である。やはり文化はこじつけかもしれない。

原産は中国である。くわいはアジアの他、ヨーロッパやアメリカ等でも分布しているが、食用としているのは中国と日本だけらしい。海外から見ればくわいも、日本人って生卵食べるの……?と気持ち悪がられる扱いと同じでも不思議ではない。

日本に伝わってきたのは奈良時代で、万葉集に出てくる「ゑぐ」はくわいだとする説がある。

君がため 山田の沢に ゑぐ摘むと 雪消の水に 裳の裾濡れぬ       

作者不詳 巻10-1839

あなたのために山田の沢でくわいを摘もうとしていたら、雪解け水で裳裾が濡れてしまった、という歌である。

着物が濡れてしまう苦労も厭わずに愛する人のためにくわいを採ったのだろう。くわいはその人の好物だったのだろうか。それとも愛する人に旬の美味しいくわいを食べてほしかったのだろうか。
今も昔も相手に何かをしてあげたいという気持ちは変わらないね。

くわいを調べていたら何故か万葉集に辿り着いて、およそ1200年前の恋歌に思いを馳せる正月になりました。

くわいと万葉集、遠そうで近かったものだけど、こうして知識が繋がる瞬間がとても好きだ。

くわいが水生多年草なのも知らなかったし、調べていてとても楽しかった。また人生で初めて食べる食材に出会ったらこうして調べてみるのもいいかな。

追記:
くわいについて調べたことで、思わぬ副産物があった。大阪府吹田市の人と仲良くなれるのである。

吹田市のゆるキャラ、『すいたん』のモチーフは吹田くわいである。

くわいをモチーフにした吹田市のゆるキャラ、すいたん。
顔の色は白ではなくグレーみを帯びているところに
こだわりを感じる。

さすがに府外出身の人が吹田くわいに詳しいと驚かれる。なんなら吹田周辺の箕面、豊中、摂津の人も反応してくれた。すいたんが大阪での友達作りに貢献してくれている。すいたん、ありがとーーっっ!!

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