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なぜ、「足袋」の着用をオススメするのか?〜合気道と畳との関係〜【後編】

【中編】では、
ビニール柔道畳の上で、合気道ならではの「滑るような足捌き」を行うためには、「足袋」が最適ではないかという、私なりの結論と、その理由を書きました。

↓ ↓ 【中編】の記事はこちら↓ ↓

今回の【後編】では、おまけとして「畳あれこれ話」を書いています。また最後に、私が稽古で使用する足袋の、補強・補修方法を紹介しています。


【おまけ-Part.1】 畳あれこれ話


①「JUDO」の世界的な普及と「ビニール柔道畳」

「柔道」は、1964年の東京オリンピックで、正式競技として初採用されました。そして、日本武道館で行われた柔道競技には、伝統的な琉球畳表の柔道畳が使われていました(*1)。

しかし、「柔道」が世界の「JUDO」として競技性を高めていくとともに、世間で流通する柔道畳は、国際規格に合わせてビニール柔道畳へと変わっていきました。

破れれば補修が必要となる琉球表の畳では激しい稽古はできませんし、何よりも、自然素材の畳の補修は日本でしかできません。仕方のない変化だったと思います。

(*1)参考:「今、蘇る伝統柔道畳表」(最終閲覧:2022/12/30)

②「帆布張り」の稽古環境

私が稽古をさせていただいた主な道場*の畳表には、全て「帆布」が付けられていました。その環境から外に出てみると、それがどれだけ幸せなことだったのかを、身にしみて感じています。

*合気道自由が丘道場/よみうりカルチャー自由が丘/合気道月窓寺道場/(公財)合気会本部道場(※筆者の稽古への参加数順)

ちなみに、合気会の本部道場では、こまめに畳の補修が行われているようです。私が稽古でお邪魔したときも、使い込まれた畳だと感じた覚えはありますが、帆布の破れを見た記憶はありません。

先日(2022/12/19)、(公財)合気会の公式X(旧Twitter)アカウントが、畳交換・補修の動画を投稿されていました。畳屋さんの全面協力の下、帆布の畳表が保たれていることがわかります((動画)本部道場の畳交換の様子)。

ちなみに、当時の植芝道場の風景についても、多田先生がお書きになっています。かつての畳の様子がよく分かる部分なので、ここで引用させていただきます。

道場は六十畳の広さがあり、縁のない琉球畳を刺してある稽古畳が、四十枚敷かれている。畳は随分すり切れているのもあった。残りの二十畳は黒光りしている板の間だ。
(中略)何よりも感じることは、道場全体に長い間(この道場は昭和六年建築であった)、多くの人が真剣に修行を行ってきた雰囲気が染みこんでいた。

(多田宏(2018),『合気道に活きる』, 日本武道館, pp57-58)

「多くの人が真剣に修行を行ってきた雰囲気」という記述が大好きです

私が禊(みそぎ)の呼吸法と座禅の修練に通った「一九会道場」(東京都東久留米市)も、多くの人が修行を重ねてきた場であるため、こうした雰囲気を感じました。やはり、稽古や修行には、使い込まれた畳がよく合いますね。

畳が敷かれた禅堂
@一九会道場(筆者撮影)

③ 新しいビニール柔道畳ほど、合気道に向いていないのかも…

私が日本・イタリアで出会ったビニール柔道畳は、古いほうが(相対的に)沈みにくく、足へ吸い付く感じも小さかったように思います。そして、反対に、新しいほど、(相対的に)沈み込みが大きく、足に吸い付いてきました。

ちなみに、「ここでは合気道はできない」とさえ感じた場所は、某県のアリーナ柔道場(2016年竣工)でした。足が沈み込んで踏ん張りが効くので、見方を変えれば、「競技柔道」にとっては最適な環境だと思われます。

しかし、そのビニール柔道畳は青みがかっており、もはや、「畳」を模すことすら放棄してしまったように感じたことも事実です

考えてみれば、昔ながらの「畳」を踏んだことすらない海外の柔道選手にとっては、ビニール柔道畳の「色」など関係ないはずです。より競技がしやすく、より技がかけやすいのであれば、それで良し。

ビニール柔道畳の色の変化からも、「柔道」が、世界の「JUDO」に変化したことが感じ取れます。しかし、これは柔道に限った話ではありません。

合気道も海外普及が進むほど、稽古環境の一部であるはずの「畳」への意識は、相対的に小さくなっていくでしょう。

また、切実な問題として、柔道用のビニール柔道畳が「競技柔道向き」に変わっていくほどに、合気道の稽古には不向きになっていく、という課題があります。

こうした、大きな流れは止めようもないように思います。せめて当会では、自らの足で踏む「足元」に、こだわっていきたいと考えています。

【おまけ-Part.2】足袋裏の補強・補修


足袋の素材は、綿が基本です。

日常利用の環境であれば高い耐久性を発揮しますが、ビニール柔道畳での合気道の稽古は摩擦が大きく、頻繁に稽古していると、足袋裏に穴が空きます(写真①)。また、足袋裏周辺の、床と接する部分の生地も傷んでしまいます(写真②)。

【写真①】穴の空いた足袋裏
【写真②】摩擦で傷んだ生地

足袋は決して安いものではありません。なにより、使い捨てるのはもったいない。ということで、私は「帆布+手芸用ボンド」を用いて、足袋裏とその周囲の生地を補強・補修しています。

せっかく購入した足袋ですので、道着等と同じく、長く、大切に使いたいですね。稽古で使用する際には、ぜひとも補強・補修をしながら、大切に履き続けてください

※足袋の補強・補修については、こちらの記事に整理しました。

(本文終わり)



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