合気道の「受け」について、整理してみました。(3/5)
前回(2/5)は、
合気道における「受け」の定義から、その役割までを見てきました。
[前回の記事はこちら]
『合気道の「受け」について、整理してみました。(2/5)』
今回(3/5)は、
「良い受け」とは何か?という疑問について、考えていきます。
(2)「良い稽古」には「良い受け」が欠かせない
①「良い稽古」とは?
「良い稽古」には「良い受け」が欠かせません。
ですが、「良い稽古」とは何でしょうか?
それは、指導者や道場が「目指す稽古」よって変化します。
「目指す稽古」の例として、次のようなものが考えられます。
技の効きを、とことんまで追求する
ガッチリ持たせた状態からでも動けることを追求する
「護身術」としての武道を追求する
「受け」「取り」が同化的で、瞑想的な稽古を目指す
そして、「目指す稽古」が変われば、その稽古で求められる「良い受け」のあり方も変化します。
先ほど挙げた「受け」=「砥石」の例えを用いれば、「目指す稽古」とは、「目指す刃物の形状・あり方」となります。
そして、「目指す刃物の形状・あり方」が変われば、求められる「砥石」=「受け」の種類も、その研ぎ方も変化するのです。
② 至心会が「目指す稽古」
当会が、稽古を通して目指す1つの段階は、次のように表現できます。
「~しようと思わなくても、~できる」
「~しよう」というのは、稽古中に生まれる「対象に留まる心」と言い換えられます。例えば「相手を崩してやろう」「強く投げてやろう」といった意識(念)です。
「対象に留まる心」は「執着」を生み、それは「隙(スキ)」となります。心身の自由が失われた状態です。この状態では、人は本来の力を十分に発揮できません。
当会では、「対象に留まる心」を生む癖が付かないよう、注意しながら稽古を行います。そして、「~しようと思わなくても、~できる」境地を目指します。
なお、「対象に留まる心」は、「受け」の側にも生じます。この点にも注意が必要です(多くの人がこの点には無自覚のように思います)。
つまり、当会における「良い受け」とは、「~しようと思わなくても、~できる」、そんな稽古に必要な存在、ということになります。
抽象的すぎますね。
次の項では、もう少し具体的に書いていきます。
(3)(至心会が考える)「良い受け」とは?
①「受身」≠「受け」(「受身」は「受け」の一部)
合気道の演武では、アクロバティックな「受身」が随所で披露されます。「取り(技をかける人)」の動き・技に合わせて、「受け」が跳び上がり、着地する。「跳び受身」と呼ばれる受身の技術です。
実際のところ、演武会という舞台では、「跳び受身」がなければ、合気道を知らない一般の方々には、とても地味に見えると思います。見映えという点では、「跳び受身」は欠かせない技術です。
こうした背景もあり、「受身の上手な人」=「受けの上手な人」と思われがちです。ですが、「受身(跳び受身も含む)」とは、あくまでも、技を受けて自分がケガをしないための技術であり、「技」という一連の流れにおける、最後の一動作でしかありません。
つまり、「受身」とは、「受け」のほんの一部分でしかないのです。したがって、「受身の上手な人」が、必ずしも「受けが上手」、とは限らないのです(※「受身が上手で、受けも上手」という場合が多いことは、言うまでもありません)。
もう一度、定義を確認してみます。
つまり、「受けが上手」ということは、「相手に攻撃を仕掛けて技を受けるという、一連の動作が上手」、ということになります。
自分がケガをせず、多種多様な稽古方法を行うためには、「受身」を自由自在に、あらゆる体勢からできるに越したことはありません。ですが、「受身」だけが「良い受け」に求められる技術ではないことは、最初に確認しておきたいと思います。
②「良い受け」のために必要なことは?
ここからは、(当会における)「良い受け」の、具体的な要素を見ていきます(注:細かい技術解説ではありません)。
正確に打ち込む(線を意識する)
隙間なく、ピタリと取る(相手の身体を「刀」と見立てる)
「取り」の動きを邪魔しない(力んだり、踏ん張ったりしない)
(動きを)作らず、素直に受ける
次の項では、1つずつ、その理由と併せて見ていきます。
(3/5終わり、次は、)
(4/5)『(4)(至心会が考える)「良い受け」の要素』
【参考・引用文献】
(*2)『合気道に活きる』多田宏(2018), 日本武道館, p174-175を参考に、当会が作成
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