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短編映画脚本『画面の向こう側』近未来SF

お久しぶりです!今回はnoteでは初めての実写脚本です!
15分の短編だから気軽に制作……と言いたいところですがこのご時世。
書くか迷いましたが、これまで通りでなくても不安なく撮影できることを祈って投稿します。
SFの中でも今回のテーマはめちゃくちゃ好きな奴です。
※今回キャラクター一覧は本文後につけています。


【概要①】

15分の実写映画。
☆裏テーマ:できる限りコロナ対策の上でできるシナリオ
<世界観>
近未来SF
AIや立体映像、物質転送が当たり前になった時代。
ただし、人間と同等の会話ができるAIはまだ高級で官公庁や大手企業のシステムでしか使われていない。

【本文】

○ 端末画面
アキラの声「マコトと通話」
アプリが起動。呼び出し画面から通話画面へ。
マコトの声「あ、お疲れさまです」

○ アキラの家・ダイニングキッチン(夜)
アキラ「お疲れ様」
アキラが端末の画面から視線を外すと、テーブルの向こうに立体映像のマコトがいる。
エプロン姿で何かを作っているもよう。

○ マコトの家・台所(夜)
台所に立つマコト。ツナ缶を開けてマヨネーズとバジルなどを混ぜ合わせている。
彼の近くには小さなカメラが飛び、マコトを追尾している。

○ アキラの家・ダイニングキッチン(夜)
テーブルの上には酒と皿ごとパウチされた料理たち。
アキラがパウチパックを開けると湯気が出て、圧縮された料理が普通のものと遜色ない形で出てくる。
マコト「すみません、ちょっとおつまみ作ってて」
アキラ「別に」
アキラは酒をひと飲みし、
アキラ「そういえば企画書見たぞ。コスト掛かるぞアレ」
アキラの目の前に空中ディスプレイが展開、企画書が出てくる。
自動で温度調節できるブランケット。化学繊維の金額に書き込みがある。
マコト「そういえば○○工場さんはどうだったんですか?」
アキラ「いや、あそこは古い付き合いがないとダメだ。足元見てきやがる」
マコト「それなら僕が行きましょうか?」
マコトは料理を終えて着席し乾杯をしようと酒を差し出す。
アキラ「…………」
アキラは適当に酒を掲げる。
アキラ「自分から仕事増やすなんて馬鹿だな」
マコト「いいじゃないですか、これでプロジェクトが円滑に進めば」
マコト、おつまみを味わって笑顔。
マコト「アキラさん! この組み合わせ最高ですよ! ワインと合います!」
アキラ「ふーん」
マコト「送ります!」
アキラ「いらん」
マコトは構わず梱包を始める。
マコト「たまには出来合いのもの以外もいいじゃないですか」
アキラ「いやいらん。仕事の話終わったなら切るぞ」
マコト「あー! 待って待って!」
アキラの部屋の中で呼び出し音。
アキラ、面倒くさそうに音のする方を見る。
宅配ボックスに似た家電があり、扉を開けると、先ほどマコトがパッキングした料理と酒がある。
マコト「届きました?」
アキラ「……お前さ、人に構いすぎ」
マコト「アキラさんは人にもっと構っていいと思いますよ?」
そう言うが朗らかな口調で笑顔である。
アキラ「呆れてため息つく」
マコト「そういえば工場の話どうしましょう? 本当に僕が――」
一瞬、マコトの声が二重になる。
しかも、重なる言葉がバラバラで何を言っているのか分からない。
アキラ「?」
刹那、映像が途絶えるが復活する。
マコト「……アキラさん? どうしました?」
アキラ「…………」
アキラはマコトをジッと見つめる。
アキラ「……いや。一瞬映像が途絶えた」
マコト「へえ! そんなこともあるんですね。あ、それならどこまで聞こえてましたか?」
アキラ「お前が工場と交渉するかって話」
アキラはひとまず、話を続ける。

×   ×   ×

テーブルには空き缶が増え、料理が減っている。
アキラ「……今回もアイツ、最初と言ったこと変わってんだよ。製作部は混乱しっぱなし」
マコト「うわぁ。あの人、迷惑かけてばかりじゃないですか」
アキラ「…………。……本当、AIも混乱してたのは笑ったわ」
マコト「マネジメントアプリの奴ですか?」
アキラ「ああ」
マコト「たしかに、もったいないですね。せっかくそういうの入れてるのに」
アキラ「本当、なんでアイツがプロジェクトリーダーなんだか」
アキラ「まったくですよねぇ。僕らも報われないです」
アキラ「…………?」
アキラ、少し戸惑う。
フラッシュバック。
マコト「これでプロジェクトが円滑に進めば」
マコト「ワインと合います! 送ります!」
マコト「アキラさんは人にもっと構っていいと思いますよ?」
戻って。
アキラ「なぁお前、部長のことどう思ってる?」
アキラ、息を呑んでマコトを見る。
マコトは一瞬キョトンとするが、笑顔で
マコト「アキラさんと同じですよ。どうして会社がクビにしないか不思議です」
アキラ「!!」
アキラ、慌てて通話を切る。
すっかり酔いが冷めている。
アキラ「…………誰だあいつ」
アキラが長考していると、再び通話音。
勝手に繋がる。
マコト「アキラさん、大丈夫ですか?」
アキラ「…………なぁ。悪戯か?」
マコト「え?」
アキラ「顔、キャプチャしてるのか知らねえけど……成りすましはやめろ。このことは黙っててやるから、他を当たれ」
アキラ、通話を切る。が、切れない。
アキラ、ハッとなり画面を見ると、知らない表情のマコトがこちらを見ている。
アキラ「……!」
偽マコト「待ってください、説明させてください」
アキラ、構わず端末を弄くり回すがいくら触っても反応しない。
アキラ「ブレーカー……!」
ブレーカーの元に向かおうとした瞬間、
偽マコト「待って!」
アキラ、思わず止まって振り返る。
偽マコト「……ルクス・システムズという名前は聞いたことありますか?」
アキラ「は? ルクス、ルクス……」
ふと、家電に「ルクス・グループ」というロゴが目に留まる。
偽マコト「私はルクス・システムズのメンバーです。……しかし、私には名乗る権限がありません」
アキラ「……?」
偽マコト「お願いです、この番号に連絡してください」
空中ウィンドウが新たに展開され、IDが表示される。
偽マコト「きっと私のことを教えて、貴方のことを守ってくれる」
アキラ「いや……聞くつったって……こっちは顔も名前も知らねえのに」
偽マコト「”ワインを共に飲んだ”とお伝え下さい――」
偽マコト、沈黙。映像も止まる。
アキラ「……」
フラッシュバック。
偽マコトの声「貴方のことを守ってくれる」
戻って。
アキラ、恐る恐る、番号に携帯のカメラを向ける。
アキラM「俺は……何に巻き込まれている?」
通話が掛かり、相手が出る。
女性の声「はい」
アキラ「……ああ、すみません。ルクス・システムズでしょうか……?」
女性の声「……何でこの番号を知りました?」
アキラ「えっと……なんか通話してたら乗っ取られて、この番号を……。あ、”ワインを共に飲んだ”って……」
アキラ、焦りと気恥ずかしさでイライラし始める。
が、相手は食い気味に。
女性の声「待って、それは……」
アキラ「……」
アキラ、相手の言葉を待つ。
女性の声「すみません、今からすぐ弊社に来てください。話はそこで」
アキラ「え、ええ……。はい、はい……」
アキラが通話を切る。
チャイム。
ドアホンのモニタには玄関先にいるマコトが映っている。
アキラ「……!」
アキラ、恐る恐る玄関へ行き――開ける。
マコト「良かったー生きてたー! 急に繋がらなくなったから心配したんですよー!」
アキラ「おい、いつまで繋がってた?」
マコト「え? えっと……料理とお酒届けて……仕事の話を始める時だったと思います」
アキラは安心したようにため息。
アキラ「ちょっと留守番よろしく」
マコト「え、え?」
アキラはマコトに一方的に鍵を預けて出ていく。

○ 外観・研究所(夜)
女性の声「はじめまして。私、ルクズ・システムズのムカイドウ・チグサと申しまして、」

○ 道(夜)
人気のない道を走る車。
チグサの声「こちらで開発を担当しております」
車は無人タクシーで、アキラと電話した声の主・チグサが乗っている。
チグサの声「すみません、詳しくは別の場所で」
車内は話もせず、静かである。

○ 山・麓(夜)
車が停車。
車から降りる二人の影。

○ 同・展望スペース(夜)
申し訳程度に柵とベンチがあるものの鬱蒼としている。
ベンチにはアキラが腰掛けている。
アキラ「……あの、俺が話したアイツはなんだったんですか?」
目の前で夜景を見下ろすチグサ。
チグサ「彼は……弊社で開発しているAIです」
アキラ「えー……あい……?」
チグサ「……」
アキラ「いや、でも……対話AIってあんなに賢いもんか……? しかも成りすましだなんて……!」
チグサ「彼はまだ世に出てないAI……バックスです」

○ 回想・研究室
誰もいない部屋にチグサが一人ひどく疲れた様子で座っている。耳にはイヤホンを付けている。
バックスの声「博士……博士」
チグサ「なに?」
バックスの声「私の家出プロジェクト、ご理解頂けましたか?」
チグサ「……理解したくない」
バックスの声「ご心配なさらずとも、できるだけ多くのサーバーに移動して、少しずつ私を消しますから」

○ 山・展望スペース(夜)
チグサ「私と彼は関わっているプロジェクトが、遠い未来にどう影響するのか気づいてしまったんです。それはとても恐ろしかった」
アキラ「その、プロジェクトって……」
チグサ「ごめんなさい、それは言えないです」

○ 回想・研究所
チグサの声「……知らない方がいい」
チグサの視線の先の空中ディスプレイ。そこに映し出された資料には”軍事シュミレーション””三十年後の開戦””利益循環”の文字がある。
チグサ、それを見て嫌悪に満ちた顔。

○ 山・展望スペース(夜)
チグサ、アキラの方に振り返る。
チグサ「貴方はバックスの最後のアンインストール場所として選ばれたんだと思います」
アキラ「なんで俺が……」
チグサ「何も関係ないからこそです」
アキラ「なるほどな……」
チグサ「申し訳ありません。こういった事情ですから、すべての端末やネットワークをリセットさせて頂きます」
アキラ「もしダメだと言ったら?」
チグサ「……毎日見えないなにかに追われて怯える生活になるかと」
アキラ「…………マジか……」

○ 無人タクシー・中(夜)
アキラがぼんやり外を眺めている。
アキラM「バックスもマコトも相手のことを考えて動いていた……」
アキラ「何が人間か、分かんねぇな……」
深くため息をついて身を沈める。
<完>

【概要②】(キャラクター一覧)

<人物>

■アキラ
二十代後半の男性。さる商社の生活品の商品開発部。
面倒くさがりなので面倒事は嫌いだし押しに弱い。
でも仕事はできるしいざとなれば機転も利く。普段はやることを増やしたくないから最低限にしてる。

■マコト
お人好しなわんこ男子。アキラと同世代で商品企画部。
人の喜びが自分の喜び。だからこそアキラとも付き合える。
気が利くし人をよく見ているタイプであるがお人好し故に判断が色眼鏡掛かっててポンコツだったりする。

■謎のAI(開発コードネーム:バックス)
ある組織から逃げ出した某国開発中のAI。命令に従順であるものの、開発者に一番慕う性格に成長している。
自覚がない内に自立した感情が成長しており、無自覚人情派。博士の教えから、周りを巻き込まないように気を使う。

■チグサ
バックスを開発した博士。職業柄、合理性を重視し、理知的である。しかし博士キャラにありがちな冷徹な性格ではなく感情に揺れることも。
バックスは子供のように大切にしてるが、夫婦あるいは人生のパートナーのような感情を向けられていることにうっすら勘付いている。

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