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#7)中学部活動を撤廃すべき理由


部活動の意義とは

これまで「中学校で部活動(運動部)をするメリットは多い」と言われていました。
例えば「体力・技術力が向上する」「人間関係が広がり、コミュニケーション能力がつく」「一生付き合える仲間ができる」「礼儀やマナーが向上する」「社会人となり課題に直面しても折れずにクリアしていける」「自己理解を深め、自立できる」などです。
デメリットとしては「勝利至上主義に染まってしまい、生徒が心身ともに疲弊する」「教員の時間外労働が激増する」「教員が不慣れな部活を担当する」「新たな生徒指導や対保護者トラブルの火種となる」などが考えられます。

部活動ガイドライン~地域移行へ

平成30年に「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」が策定され、各県市区町村自治体が、中学校の部活動日数や時間を管理するようになりました。それでもグレーゾーンをついて変わらぬ活動を行ってきた顧問が少なくなかったし、ガイドラインの恩恵にあやかって活動を縮小させた顧問もたくさんいました。しかし、令和に入るとコロナ禍により、部活動が物理的にできない状況を皆が経験しました。その後、部活動地域移行が進みだし、各校で管理職が一層部活動日数や時間を制限するようになり、現在に至っています。

具体的に言えば、地方の公立中学校では終学活終了時刻がおよそ16:00過ぎです。学校によっても異なりますが、部活動終了時刻はどんどん早くなり、夏場でも「17:30終了、17:45に下校」となる学校も増加しています。準備や片付けを考えると部活動時間は正味で1時間あるかどうかです。

嬉しく思う人々、不満に思う人々

部活動が縮小されたことによって、必要ない時間外勤務から少しでも解放されたことをうれしく思う先生は多いです。生徒、保護者にとっても放課後や土日の時間は、家族または一人でゆっくりと過ごしたり、別の習い事に出かけたりするために活用できるため、喜ばしいことでしょう。
反面、もっと部活動で鍛えたい、鍛えてもらいたい、結果を出したい先生、生徒、保護者も少なくありません。現状の部活動縮小の動きには不満と焦りがあるでしょう。
どちらの考えも間違っているとはいえません。価値観の相違です。

win-winな方向性は

部活動が中学校現場から完全になくなることです。立場別に考えると、
⑴ 部活動指導を苦しく感じていた顧問の先生は、十分な時間を確保し、
 業務に専念したり、プライベートを充実させたりすることができます。
⑵ もっと部活動に熱を入れたい先生は、自校の部活動という「仕事」に縛
 られることなく、自由に地域移行先のクラブ指導者として活躍できます。
⑶ もっと活動したい保護者、生徒についても、自分の好きなクラブを選択
 し、思う存分活動ができます。
冒頭の「部活動の意義」についても、これだけ活動が制限された状態では、ほとんどその機能を果たせないとも思っています。

現状、地方公立中学では部活動自体をなくすことはせず、けれども地域移行を推進しています。「船頭多くして船山に上る」のとおり、中学生の多くは、平日は先生にみてもらい、休日は地域指導者または保護者にみてもらっています。競技知識や指導技術において、地域指導者や保護者の方が先生のそれよりも高いものであれば、多くの先生の平日の部活動中の立場は推してしるべしでしょう。
顧問である先生の指導力が高ければ、地域指導者や生徒とも折り合いよく活動していけるとは思います。ただ、指導に熱心すぎる先生は、平日に部活動時間を延長したり、土日も活動したりして、ガイドラインを無視する形をとってしまう場合があります。つまり「部活動の意義を唱えるべき人が嘘をついている」状態です。マインドセットがブレてしまい、生徒へ向けた言葉に乗せる魂のエネルギーが弱まってしまいます。

ちょっと話はズレますが、中学校現場では「部活動指導に熱心」な先生は、大別すると2種類に分かれます。それは「だからこそ学校の業務も人一倍尽力する」先生と「だからこそ学校の業務をやらない」先生です。後者に困っている中学校の先生は結構いるのではないかと思っています…。

さらっと言いましたが「部活動自体を中学校からなくす理由」はこんなところにもあるのです。

とはいえ、地域移行の懸念材料もある

心配な点は、以下の持続可能性についてです。
⑴ 指導者の負担が増える。
 指導者が報酬を受け取るには兼職・兼業の届が必要で面倒。教員は、今ま
 で部活動で保護者から報酬を貰っていない。結果、無償ボランティアでス
 タートする指導者が多くなる。「好きでやっている」は聞こえがいいが、
 その指導者の後任が育たない可能性が高い。
⑵ 資金繰りが困難になる。
 物品の老朽化により、まとまった金銭が必要になる。⑴と重複する部分も
 あるが、クラブ活動を運営していくうえで、どのように資金繰りを行うか
 が重要で、今後の大きな課題となる。
⑶ 保護者の負担が増える。
 練習会場の確保が困難かつ、活動が主に夜間になるため(中学生は昼間
 は授業)、保護者送迎が必須となり、「やりたいけど難しい」状態の家庭
 が増加する(学校の部活ならその心配はあまりない)。さらには、⑴⑵の
 関係上部活動と比較すれば、経済的負担が増える可能性も高い。
⑷ 競技人口が減少する
 小学生スポーツの競技人口が減っている中、これまでは「学校に部活があ
 るから入部する」としていた生徒、保護者が「中学生になってからクラブ
 に入部してその競技を始めてみる」という気持ちには、なかなかならない
 可能性が高い。

  現状では、「保護者から月謝を集めながら内輪でしているクラブ」「法
 人化(NPOを含む)して、保護者からの月謝収益や企業スポンサード契約
 を結び経営しているクラブ」も一定数あります。
  以前、とあるバレーボールクラブを法人化して経営している代表の方と
 お話しする機会があったのですが、その方が言うには、子供が集まらない
 のは「宣伝力が弱いから」と断言していました。SNSを利用し、広告費
 をかけていけば、うちのように体育館が足りなくなるほど子供(小学生)
 は集まる、保護者にとっては学習塾に通わせるのと同じ感覚ですよ、と。

部活動を撤廃するからこそ、教員はやりたいことができる

これまで書いてきた通り、部活動地域移行にかかわる問題解決には様々なやり方があり、正解は分かりません。
しかし、少なくとも中学校教員に限って言えば、もっと自分がやりたいことに時間と労力を十分かけられるような仕組みを作るべきと思います。そのためには部活動をはやく中学校現場から撤廃することが望ましいと考えます。
あくまで私個人の考えですが、いかがでしょう。

今後どうなるかみていきましょう。

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