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世界一再生された初音ミク楽曲 kikuo「愛して 愛して 愛して」を聴いてつらくなった

初音ミク発売16周年おめでとうございます。
世界一再生された初音ミク楽曲であるkikuoさんの「愛して 愛して 愛して」を聴いて再生回数の理由について考えてみようと思います。

世界一再生された初音ミク楽曲「愛して 愛して 愛して」

Kikuoさんご本人はSpotifyで一番再生された、と謙虚かつ正確な表現をつかっていますが、計算すると世界で一番再生されたという表現で正しそうです。
Spotifyがおよそ1.2億回。YouTubeが公式、非公式合わせて1億回以上。ここにその他のストリーミングサービスが追加されます。
断定することはできないのですが、私の知っている範囲では1億を超えている楽曲ですら数えるほどしかない中、2.2億回以上なのでおそらく世界一再生されています。

歌詞について

この記事はなぜ再生されたかを主に分析しようと思いますが先に歌詞について軽く触れます。
なぜ軽く触れるにとどめるかと言えば、辛い歌詞だからです。

  • 一番が虐待について

  • 二番が学校を舞台とした恋のようなものについて

二番について「恋のようなもの」とあいまいな表現になる理由は、愛してという感情を恋と呼んでよいか怪しい点と、ところどころ歌詞に齟齬があるためです。感情が強いが内容の齟齬が取れないという症状は、一番の影響を受けた精神病的諸症状を示唆しています。

経験者にしかわからないかもしれませんが、非常にリアリティの高い歌詞になっています。

kikuoさんの楽曲以上に激しく聴き手の感情を揺らす初音ミク曲を他に知りません。

再生回数の要因:スペイン語話者からの再生

再生回数が多い要因を一言で言えば、主なリスナーが日本語話者ではないからです。
ラテンアメリカ系のスペイン語話者が主なリスナーで、インドネシア語、スラブ諸語、英語など他の言語話者にも再生されているようです。
Spotifyはアーティストが主に聴かれている上位五都市を見ることができますが、kikuoさんのリスナーは、サンティアゴ、ロサンゼルス、ジャカルタ、メキシコシティ、リマと、ジャカルタ以外すべてスペイン語話者の多い都市です。(注:ロサンゼルスはアメリカ合衆国の都市だが、ヒスパニック人口が45%と高い)
また、YouTubeにおいてもスペイン語歌詞付きの非公式動画が2000万再生を越えているので、主なリスナーはスペイン語話者と考えてよさそうです。
(Spotifyの上位五都市に日本の都市が一つも入らない日本のアーティストは他にTeriyaki Boyzしか知りません)

スペイン語話者に聴かれる要因は?

主として考えられる要因は以下の二つです。

  • 六拍子

  • 哀しげな曲調・音色

  • 強い感情

六拍子

楽曲の拍子やリズムは基本的に歌の言語によって決まります。
スペイン語はもともと三の倍数の拍子が強い言語です。フラメンコは十二拍子やその亜種が多いです。現在のスペイン語の流行曲は四拍子ではあるものの、トレシージョと呼ばれる四拍子に六拍子を合わせたリズムが多用されます。

リズムもスペイン語圏のチャートで耳にするものに近いため、土壌として受け入れやすいのでしょう。

哀しげな曲調、音色

ラテンアメリカ系スペイン語圏の流行歌は哀し気なものが多いです。あくまで個人の感想ではあるものの、各国のチャート周回をしていると、スペイン語(español)を話す地域ほど哀しげな歌が流行っている場所はありません。スペイン語(castellano)とロシア語がこれに続く印象です。(あくまで私の感想です)

強い感情

歌詞の項でも書きましたが、リアリティのある歌詞で大変に強い感情が表現されています。繰り返しになりますが、ミク楽曲でこんなに強い感情を表現できる人を私は他に知りません。生の歌声で歌うよりむしろ、機械による合成音声であるからこそ、強くつらく、暗く哀しい感情がよく伝わります。

日本語話者として歌詞の意味がわかると、哀しげを通り越して苦しいとか痛いとかそういう気持ちが伝わってくるのですが、歌詞の意味が解らなくてもこの悲壮感は伝わっているでしょう。
どうやったら初音ミクの声がこんなに哀しげに聞こえるのか不思議ですが、染み入るものがあります。

まとめ

初音ミク楽曲の中で圧倒的な存在感を放つ名曲であることは間違いないのですが、トラウマをえぐる歌詞や全体に漂う悲壮感から繰り返し聴くのは心にくるものがあります。
でもやはり何度も聴きたくなるので名曲ですね。

真面目に聴いて記事を書いた感想としては「つらい」ですが、歌詞の内容的に適切な感想なのでなおのことつらいです。

つらさを感じながらまた聴くので、なんでしょうね、不思議な楽曲です。

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