英検に落ちまくって一度は英語を完全に諦めた私が、フランス語で敗者復活できた話
今日は、私が尊敬する先生のお一人である国際言語学者の溝江達英先生から聞いた、運命的な言葉のお話です。
その運命的な言葉について語るために、前フリとなる話から始めさせてください。
それは、私の高校時代にさかのぼります。
私が高校生の頃になりたかったもの
突然ですが、あなたは高校生の頃って何になりたかったですか?
今、もしかしてその職業に就いていたりするのでしょうか。それとも、全く別の人生を送っていますか?
私は、普通の公立中学校で英語の勉強を始めました。そして普通の公立高校に進学しました。AETの先生もほぼ来ないような田舎の学校で、ネイティブ英語に触れる機会は全くありませんでした。英会話教室に通ったことも一度もありません。
でも、「海外っていいなあ」という憧れを漠然と持っていました。
将来は、英語をしゃべって世界中を飛びまわって、仕事をしたいと思っていました。
社会のことは何も分かりませんでしたが、英語をたくさん勉強してペラペラになって、「世界に羽ばたく国際人」になろうと思っていました。
今思うと「何じゃそれ?」ですが(;・∀・)、高校生の頃の私の夢は、「世界に羽ばたく国際人」だったんです。
英検2級を受験(高2・1回目)
高校2年生の冬、私は英検2級を受験しました。2級を持っていれば大学受験に有利だと言われていました。それに、目標が「世界に羽ばたく国際人」である以上、当然合格するつもりで鼻息荒く受けにいきました。
1次試験は、ギリギリでしたが突破しました。
でも、2次試験の面接で、面接官の質問が全く聞き取れず、不合格。
一緒に受験した同級生の中で、英語が得意で優秀だった子たちは合格していました。英語は得意なつもりでいた私のプライドは、かなり傷つきました。
英検2級を受験(高3・2回目)
高校3年生の夏、1次試験免除で面接だけを再受験しました。
私は焦っていました。
今回合格しなければ、内申書に書いてもらえない。
だからこの日のために音読の練習もしました。英語の先生に面接の練習もしてもらいました。
でも、プレッシャーでガチガチに緊張してしまい、試験官の質問に全くトンチンカンな回答をしてしまっていたようです。結局、一度目の受験より低い点数で不合格になりました。
同級生が次々合格していく中、「なんで私より成績が悪いあの子まで・・・」と、仲良しのクラスメートを心の中で恨めしく思ったりしました。
英検2級を受験(高3・3回目)
大学受験のスケジュールを考えると、秋にある次の英検が私のラストチャンスでした。
もう、この時には内申書には間に合いませんでしたから、大学受験は関係ありませんでした。
私は英語の道に進みたいんだから、
3回連続不合格なんて有り得ない。
ただ、その意地だけでした。
私は毎日、悲愴な覚悟で英語を勉強しました。慢性的な寝不足で、満員の通学バスの中でつり革を握って立ったまま眠る毎日でした。
そんなある日、母が、ふと私の後姿を見て、つむじのあたりの髪が抜けて肌色の頭皮が見えているのを見つけました。
ストレスで、円形脱毛症になっていたのです。
合わせ鏡で自分の後姿を見たときは、本当にショックでした。
それから、毎朝、髪を整えるときに必死でその円形脱毛の部分が隠れるようにしました。授業中もずっと、ハゲた部分が見えないように、常に髪の毛を触って隠していました。
そんな思いで臨んだ3回目の英検2級。
試験の後、自分では手ごたえを感じていました。
通っていた塾の英語の先生が英検の面接官をしていたので、英検の後に塾に行ったとき、私は言いました。
「私、今回合格せんかったら、もう英語の道はあきらめるよ、先生」
本心では、あきらめるつもりなんて全くありませんでした。先生にそう言ったのは、今度こそ合格するという確信があったからです。
おそらく私の合否をすでに知っていた先生は、「ふ~ん、そうなんじゃ」とだけ言いました。
先生のちょっとだけ不自然な笑顔が、気になりました。
結果発表の日。
学校で担任の先生から合否通知を渡されました。先生は無言で何とも言えない表情をしていました。
私は先生の手からその封筒をもぎ取るようにして受け取り、廊下で封を開けました。
そこに書いてあったのは、「不合格」。
私はそのままトイレに駆け込み、個室に入って鍵を閉めました。そして、わんわん泣きました。涙があふれてあふれて、止まりませんでした。
もう英語の勉強なんか、したくない・・・
私は英語が向いてないんだ。英語をしゃべるのがこんなに苦手なのに、「世界に羽ばたく国際人」になるなんて、無理だ。
そして私は、英語の道をあきらめました。世界に羽ばたく国際人になる夢も、あきらめました。
英語を避けるためだけに、フランス語を選択
大学では、フランス語を第一外国語として選択しました。
フランス語に興味があったからではありません。英語がやりたくなかったから、違う言葉を選んだだけなのです。
必須科目の英語の授業はありましたが、ギリギリ「可」の成績で単位を取り終え、私の英語教育は19歳で終わりました。
人生を変えたボランティア活動
大学卒業を半年後に控えたある日、大学でふと目にした掲示板で「留学生ボランティア募集」という貼り紙を見つけました。直感的に強く惹かれるものを感じ、応募しました。
日本語が話せない留学生の銀行口座開設の手伝いをしたり、買い物に付き添ったりしました。
親しくなると、パーティーに招かれて世界各国の料理をごちそうになったり、一緒に旅行にも行きました。
英語は本当にたどたどしくしか話せませんでしたが、このときに、生まれてはじめて「英語で話すことの楽しさ」を心から実感しました。
彼らと夜中まで語り合ったときの何とも言えない心が踊るような感触は、今でも忘れられません。
私は、それまで英語と「嫌だけど、やらなきゃいけない」と思って向き合ってきました。
でも、そうではなく
「自分がまだ知らない世界のことをもっと知りたい」
「日本という国とその文化の素晴らしさを教えてあげたい」
という純粋な気持ちで英語をやろうと思ったのは、このときが初めてでした。この時まで、私は知らなかったんです。英語が話せるって、こんなに楽しくてワクワクすることなんだと。
ここから、私の英語人生が始まりました。
一度は英語に挫折した私が敗者復活できたストーリー
大学のボランティア活動で英語に目覚め、社会人になってから英語の勉強を本格的にやり直し、やがて英語を使って仕事をするようになりました。
あれほど嫌だと思っていた英語を、「もう勉強したくない」と一度は諦めた英語を、今はこうして周りの人に教えさせていただいています。人生、何が起こるかわからないものです。
私が英語を勉強したり、実際に仕事で使うときにフランス語がどれほど役立ったかは、前にも書いた通りです。
そして、ご縁があって国際言語学者の溝江先生のフランス語講座の助手をさせていただくことになり、フランス語を学び直す機会に恵まれました。
学生時代にフランス語をやった時は、「フランス語が使える仕事なんて、ないだろうな」と、はなから諦めていたのに、フランス語が仕事で必要になったのです。
英語で自己評価を低くした人も、フランス語で敗者復活できる
講座で使う教材を作りながら、ああでもない、こうでもないと悩んでいました。その過程で、一つ気づいたことがありました。
それは、英語に比べてフランス語ははるかに簡単だということでした。
その気づきを、先生に教材作成の進捗の報告がてらチャットで溝江先生に伝えると、こんなお返事をいただきました。
このお返事を読んで、私は、ハッと気づきました。
「英語で自己評価が最低になった私は、まさに、フランス語のおかげで敗者復活できたんだなぁ・・・」
と。
高校時代に、私がすんなり英検2級に合格していたら、フランス語をやることはなかったと思います。
たいした挫折もなく英語を身につけて、「世界に羽ばたく国際人」として活躍したかもしれません。(何をもって「世界に羽ばたく国際人」なのかはさておき)
でも、その代わりに、私と同じように英語に挫折した人をメールを通じて励ますことはなかったでしょう。
あの時、英検に受からなかったから、いえ、受からなかった「おかげ」で、フランス語と出会い、成功体験を掴み、敗者復活し、そこから英語力を劇的に伸ばすことができたのです。
そう考えれば、私は、高校時代に英検に3回も落ちて、一度は英語に絶望する必要があったのです。
そして、フランス語を学んだ大学時代にも今思い出しても赤面するような大失敗をし、そのせいで、フランス語をガチで勉強せざるを得ませんでした。
その大失敗も、後で考えれば私にとって必要な経験でした。
世界に羽ばたく国際人をたくさん育てたい
結局、私は高校生の頃にあこがれていた「世界に羽ばたく国際人」とは
全然違う人生を生きています。
多分、出張でバンバン海外に出て行ったり、海外赴任して現地でバリバリ仕事するとか、そういうイメージだったのだと思いますが、結局どっぷり日本で暮らしていますしね。
今はむしろ、「世界に羽ばたく国際人をたくさん育てたい」と思っています。「世界に羽ばたく」って言っても、別に出張しまくる必要はなくて、英語やその他の外国語でちゃんと思いを伝えられたり、日本の素晴らしさを一緒に広められる仲間を増やしていきたいと思っています。
人生って、何がどうつながるか、わからないものです。
私たちが想像もつかないような壮大なストーリーに、私たちは、導かれているのだなと思います。
あなたが今、英語に挫折しかけていたとしても、どこで敗者復活戦があるかわかりません。
これを読んで、少しでも楽しんでいただけたり勇気を持っていただけたらうれしいです。
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