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SF陳列棚の悲哀:レンタルビデオ店でのSci-Fiの冷遇

 2010年以前、アメリカには小さなコンビニサイズの #レンタルビデオ 店の他に、バレーボールコートが二面取れる体育館の床面積よりも大きな店舗を構える大手レンタルビデオチェーンがありました。当時、業界で二強と言われていたのが、 #ブロックバスター #ハリウッド・ビデオ です。2000年代の中盤あたりからNetflixやHulu、Amazonビデオの利用者が急増し、この二社はあっという間に消滅してしまいました。

ブロックバスター(Blockbuster)

 ブロックバスターは1985年に創業され、一時は世界中に数千店舗を展開していました。家庭向けのビデオレンタル市場をリードしており、店内には様々なジャンルの映画やゲームが並んでいました。2004年のピーク時には6万人以上の従業員を抱え、9,000店舗以上展開していました。

ハリウッド・ビデオ(Hollywood Video)

 1988年に創業されたハリウッド・ビデオは、ブロックバスターに次ぐ大手レンタルビデオチェーンとして知られています。店舗数は最大で約2,000店舗に達しました。

ビデオ陳列棚から考えるSFのニッチ度

 これらのビデオチェーンのビデオ陳列棚には、以下のような主要なカテゴリーがありました。

新作(New Releases):最新の映画やビデオがこのセクションに置かれ、多くの顧客がまずここをチェックしていました。

アクション(Action):アクション映画やスリラー映画が集められているセクションで、特に男性に人気がありました。

ドラマ(Drama):感動的な物語や深いテーマを扱った映画がここに並べられていました。

コメディ(Comedy):笑いを提供する映画がこのセクションに置かれており、家族や友人と楽しむためにレンタルされることが多かったです。

ファミリー(Family):子供向けや家族で楽しめる映画がここに集められていました。アニメーションやファミリー向けの作品が多く含まれています。

ホラー(Horror):恐怖をテーマにした映画がこのセクションにあり、ホラー映画ファンに人気がありました。

SF・ファンタジー(Sci-Fi/Fantasy):#サイエンス・フィクションやファンタジー映画がこのセクションに集められており、特に特殊効果や壮大なストーリーを楽しむ人々に人気でした。

クラシック(Classics):昔の名作映画がこのセクションに並べられていました。特に映画史に残る作品やオスカー受賞作が多く含まれています。

ドキュメンタリー(Documentary):教育的で事実に基づいた映画がこのセクションにあり、特定のトピックに興味を持つ人々に人気がありました。

テレビシリーズ(TV Shows):人気のテレビシリーズやシーズンがこのセクションに置かれており、連続ドラマを一気見するためにレンタルされることが多かったです。

 実際にどのジャンルが利益率を上げているのかは店舗を見ただけでは分かりませんが、SFの展示面積は極めて小さく、マイナーなジャンルだということが分かります。ちなみに、アメリカでは『SF』では意味が通じません。Science Fictionの略で『Sci-Fi』と表現しないと、『 #SFビデオ はどこですか?』と店員に質問すると、 #SMビデオ を探していると勘違いされるかもしれません。

 私はSF作品が好きで、自らSF小説や科学論文も書いているので、SFがニッチなジャンルだと気付いた時はとても驚きました。それで、noteの記事のタイトルに『 #SF映画 の限界:AI技術の誤解を避けるために』と付けて読者の反応を見てみましたが、タイトルに #SF と付けるだけで、閲覧数もスキの数も圧倒的に少ないのです。

 日本では理系と文系に分けて考える人が多く、女性が理系の学問や職業を選択するだけで『 #リケジョ 』と呼ばれ、まるで『あの人 #カポエイラ やってるんだって!』といった驚きと希少生物でも見つけたような反応なので、日本人の90%くらいは文系かもしれず、 #サイエンス と聞くだけで『あっ、私はSFはちょっと…』という反応でも不思議ではありません。

 SFがこれほどニッチなジャンルであることを考慮すると、やはりAIや情報通信系のセミナーでSFを例に話をすると意味が通じにくいでしょう。

 日本が #科学技術立国 であると誤解している日本人が多いのは、日本が科学後進国であるという現実に気付いていない人が多いからです。

武智倫太郎

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