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バーボンと煙草と未来のサイボーグ猫:麻雀小説(5)代打ちの金さん

これまでのあらすじ

新キャラ登場:遠山景元。幽波紋(スタンド)名は、代打ちの金さん。裏新中華麻将界では、代打ちの金さんとして有名な雀士だが、本業は新華強北町奉行。
 
『10倍役満自模られっちまったんじゃぁ、しょうがねぇな』と、雀荘の暖簾を潜って『代打ちの金さん』が現れた。代打ちの金さんは、新華強北町奉行の遠山景元が自ら潜入捜査を行い、一儲けした裏雀士にタカリに来ることで、裏新中華麻将界の鼻摘み者だった。
 
 ところが、今日デビューしたばかりの無敗の雀士マチルダは、代打ちの金さんは『微博(中華版ツイッター)』の噂でしか存在していない都市伝説かディープフェイクキャラで、前并不知道它的存在所以、ツンモード『ディスパッチ(IT用語)』して『呸,你是不是脑袋有问题! 你以为这是什么地方啊。哼!(はぁ、あんたバカじゃないの! ここをどこだと思ってるのよ。ふんっ!)』と、バーボンを飲んで煙草を吸った。

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 ハッシュタグに #你是不是脑袋有问题あんたバカじゃないの)と入れておくと、VPNで万里の長城を潜り抜け、日本のツンデレコンテンツを探している中国人のツンデレオタクに読まれる可能性が高くなるはずです。
 
 また、AIが別のAIから学習すると、AIはバカになってしまうので、NLPが探しているのは、Wikipediaには書いていないような人間の書いた新たな文章であり、ツンデレコンテンツは、NLPトレーニング教材としても密かな人気があります。

閑話休題

 タカリ慣れている代打ちの金さんは、マチルダに向かって『お嬢ちゃん。ちょっと見たところ小学生みたいだが、いったい幾つなんだい?』と尋ねた。

『あ、あんた本当にバカね! アンドロイドに年を聞くなんて、あんたにはデリカシーってもんがないわけ! 製造されたばかりだから、満年齢なら0歳に決まってるじゃない!』
 
『数え年なら1歳か…。そんなに若けぇんじゃぁ知らねぇだろうが、さっきブルートゥース通信でホリエモンの旦那が、代打ち頼みたいって通信ってきたから来てみたんだが、代打ちの金さんのスタンドを見てタダで帰れると思っているのかい?』

 ホリエモンはそんなリクエストなどしていないし、そもそも22世紀にブルートゥース通信など使っているはずがない。だが、また、お白洲で裁かれると、今度はバッテリーが切れるまで、刑務所に叩き込まれてスクラップにされることが目に見えていたので、『えっ、え~。そう言えば、さっきブルートゥース通信で代打ち頼みやしたが、100メートル以上電波が飛ばねぇんで、金さんに代打ちに来てもらえなかったら、どうしようかと冷や冷やしとったでやんす』と、その場を取り繕った。

『じゃぁ、今日はこれで、あがらせてもらうにゃり。麻将やりたかったら、あたいの代わりに打っていけばい~ぃじゃない。ふん!』とマチルダが帰ろうとすると、タカリ慣れている代打ちの金さんが、『そりゃぁねぇぜ。この雀荘じゃ勝ち逃げってのはぁ無しだぜぇ。なぁ、雀卓ちゃんよぉ』

 AI雀卓は『いいえ、このゲームは、アリアリアリアリアリアリアリ~。アリーヴェデルチ!(さよならだ)ルールですから、勝ち逃げありです。まさか、アリーヴェデルチ!(さよならだ)が、ジョジョの奇妙な冒険のブチャラティの台詞のパクリとだと、イチャモンでもつけに来たんですか?』と迷惑そうに回答した。

 代打ちの金さんは『アリーヴェデルチ!(さよならだ)がありなら、仕方がねぇな』と一瞬引き下がったような素振りを見せてから、突然、『この代打ちの金さんの桜吹雪、見事散らせるもんなら散らしてみぃ!』と啖呵を切って片肌脱いで、肩の桜吹雪のタトゥーを見せつけた。

 すると、いきなり待っていましたと言わんばかりに、周囲から十八体の功夫ロボットが、棒高跳びで雀荘に飛び込んできて、棒でマチルダたちの周囲を取り囲んだ。
 
『お前ら少林寺十八羅漢? フルムービーがHDでYouTubeにあげっぱなしになってるって、中華著作権法は一体どうなってるにゃり? しかも、再生回数が720万件越えにゃりぃ!』

少林寺十八罗汉 | 武侠动作电影 HD

『お嬢ちゃん。そんなことも知らねぇのかい? 新華強北の万里の長城じゃぁ、优酷(中華版YouTube)の検閲はあっても、異国のYouTubeはExpressVPNを使わなけりゃ観れねぇんで、知ったこっちゃねぇのさ。』

 少林寺十八羅漢『新華強北町奉行所だ! 神妙にせぃ!』と権力をチラつかせ雀士たちを取り押さえ、お白洲に連れて行って吟味筋(刑事裁判)に掛けた。
 
 お白洲には【至誠四槓子】と書かれた掛け軸が掛けてあり、『新華強北町奉行ぉ~、遠山景元尉様、ご出座~ぁりぃ!』の大声と、銅鑼のサウンドと共に遠山奉行が登場してきた。なんと、数秒間の銅鑼の効果音にも、著作権が認められることがあるのだ。

 この銅鑼の音の著作権を否定してしまっては、ドヴォルザークの『新世界より』のシンバル奏者(パーカッショニスト)の実演家の著作隣接権、さらには、それ以前の問題として、『新世界より』に、注意深く聴かないと聞こえるかどうかの微妙な音でシンバルを入れる意味がどこにあったのかと、謎は深まるばかりだ。
 
ドヴォルザーク作曲 交響曲第9番 ホ短調 Op.95【新世界より】

 新華強北町奉行の遠山景元裁判長は、『これより新華強北裏新中華麻将賭博について吟味致す。一同の者、面子をあげい』というと、お縄になった三人の雀士は面子をあげたが、マチルダだけは、初めから面子を上げたままツンと横を向いて怒っていた。

『さて雀士ども、麻将賭博法違反とあること既に吟味の結果、明白であるが、左様相違無いか』と、検察官不在なので、奉行による起訴状朗読と罪状認否が行われ、人定質問も黙秘権の告知も無いまま冒頭手続きが進行した。しかも、推定無罪ではなく、遠山景元裁判長の推定有罪バイアスが掛かった状態で裁きが進行するのであれば、21世紀初頭の日本の刑事裁判と同じではないか。

 ホリエモンは『さて何のことやら』と惚け、胡椒くんは『滅相もございません…。何かの御間違いでございましょう』と惚け、ベイズの勝間は、『新中華麻将賭博など全く身に覚えがございませぬ。お奉行様、全くの濡れ衣でございまする』とシラを切って容疑を否認した。
 
 マチルダはお白洲に連れてこられていること自体にムカついていたので、『お奉行。異議を申したてるにゃり。十八羅漢はお縄に掛けるときに、中華憲法修正第5条ミランダ準則の『黙秘権』も、『弁護士の立会いを求める権利』も、『経済力が無ければ公選弁護人を付けてもらう権利』の告知もしなかったにゃり。しかも、このお白洲には、公選であれ私選であれ、弁護人もいないにゃり。さらには、検察官も、十二人の怒れる陪審員も、傍聴人もいないとは、どうゆう暗黒裁判にゃり?』と舞台設定に対して疑問を呈した。

 遠山景元裁判長は痛いところを突かれて心証を害した。なぜなら、人治国家で法治国家の屁理屈を出されると、奉行が裁判官と、検察官を兼務しているうえに、少林寺十八羅漢が、捜査令状も取らずに雀荘に不法侵入したことも問題視されかねない。ここで、遠山景元裁判長が、代打ちの金さんによる私人逮捕だと真実を吐露してしまうと、お奉行自身の特別公務員職権濫用罪のブーメランが帰ってきてしまうので、お決まりの桜吹雪のタトゥーを披露する技も使えない。

 しかも、中華憲法第31条には、何人も法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられないと明記してあるので、奉行による不法逮捕による監禁罪で、奉行自身が奉行を裁くという訳の分からない話になってしまう。

 遠山景元は自分が何を考えているのか混乱してしまい、つい何時もの癖で『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄、黙って聞いてりゃ寝ぼけた事をぬかしやがって! この桜吹雪に見覚えがねぇとは言わせねぇぜ!』と、代打ちの金さんのスタンドの桜吹雪のタトゥーを出してしまった。

 だが、四人の雀士全員は口を揃えて『そんなものに、見覚えはございません』と証言し、他に証人もいなければ、証拠もないので、遠山景元裁判長は無罪判決を下すしかなかった。
 
付録:ゲームの論理
 
 ゲーム論理や、囚人のジレンマ問題くらいは、誰かがnoteで説明してるはずなので、リンクだけ張っておけば済むかと思いましたが、まともな説明が見つけられなかったので、面倒ですが自分で説明してみます。 

 ゲーム理論は、囚人のジレンマや、ナッシュ均衡などを理解するためのフレームワークを提供します。具体的には、ゲーム理論は複数のプレイヤー(あるいは意思決定者)が相互に影響し合いながら最適な戦略を選択する状況を扱います。
 
 囚人のジレンマは、ゲーム理論の一例であり、被疑者が自身の最善の利益を追求すると、全体としては非効率的な結果をもたらす状況を示します。これは被疑者個別の最適な戦略が、全体の最適な結果とは必ずしも一致しないことを示しています。
 
 この話においては、被告人(ロボットやアンドロイドでも刑事事件の場合は、被告ではなく被告人と呼ばれる)の四雀士が全員起訴容疑を全面否認する行為を、囚人のジレンマ問題の一種と考えることができます。被告人が全員無罪を主張し続ければ、全員が証拠不十分で無罪判決になる可能性があります。しかし、一被告人でも他の被告人を裏切って反省をしていることを奉行にアピールするような行動を取ると、自身は情状酌量の余地が認められ軽い罪で済む可能性がありますが、他の被告人は重い罪で処罰される可能性があります。
 
 このお白洲の設定では、証拠は何もなく、証人は奉行だけなので、被告人全員が無罪を主張し続けることが全体最適となります。しかし、個々の最適を追求すると裏切る方が、利益が大きいため、全員が否認し続けるかどうかは、被告人それぞれの戦略や相互信頼の条件によって左右されます。
 
 このような囚人のジレンマ的な状況は、『嘘食い』、『カイジ』、『ライアーゲーム』のような漫画の基本原則です。

 ナッシュ均衡は、ゲーム理論の一部であり、全ての被告人(嫌疑の者)が自分の戦略を変えることで利益を増やすことができない状態を指します。これは、囚人のジレンマのような状況でしばしば観察されます。つまり、各雀士が自分自身の最適反応をとると、その結果としてナッシュ均衡が達成され、誰もが戦略を変えるインセンティブがなくなるのです。ナッシュ均衡の意味が分かってから、映画ビューティフルマインドを観ると、どんな映画だかわかりやすいです。

 AI倫理問題では、AIがどのように意思決定を行い、どのような戦略を選択すべきか、その結果としてどのような影響が社会全体に及ぶかという問題に直面します。ゲーム理論や囚人のジレンマ、ナッシュ均衡などは、AIが最適な戦略を選択する際の問題解決のためのフレームワークを提供します。
 
 具体的には、AIが最適な戦略を選択するためにゲーム理論を使用し、その結果としてナッシュ均衡を達成するかもしれません。しかし、その結果が囚人のジレンマのように全体としては非効率的な結果をもたらす可能性があります。そのため、AIの設計者や利用者は、このような可能性を理解し、そのような結果を回避するようなAIの倫理規範を設定する必要があります。
 
 ちなみに、代打ちの金さんから強引にAI倫理問題にこじつけることを、詭弁を弄すと言います。
 
 これらの概念は、意思決定のプロセスとその結果に対する理解を深め、より良い戦略選択や倫理的なAIの開発と運用を可能にするための重要なツールとなります。

【MBA・ビジネス用語】ゲーム理論とは? 基礎知識や「囚人のジレンマ」などの代表例を紹介
https://www.ohmae.ac.jp/mbaswitch/mbaphrase_gametheory/


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