相田 冬二(Bleu et Rose)

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8.2映画『夜明けのすべて』同時鑑賞会と俳優・松村北斗を語るzoomトークイベント開催。

相田冬二zoomトークイベントvol.233 《松村北斗の夜明け》 2024.8.2金曜日 2000開場2030開演 2024年を代表する傑作中の傑作『夜明けのすべて』が7.23にソフト化されます。それを記念して、同時鑑賞会を開催します。 DVD、Blu-ray、もしくは配信で映画『夜明けのすべて』を観ながら、相田が実況解説をいたします。松村北斗さんの演技が、どのように凄いのか。シーン、カットごとに具体的に詳細に語り下ろします。 みなさんは、デバイスが2つ必要になりま

    • 7.26俳優・Xの王としての京本大我を語るzoomトークイベント開催。

      相田冬二zoomトークイベントvol.232 《言えない京本大我くん。》 2024.7.26金曜日 2000開場2030開演 このたび、たくさんのご要望をいただき、初めて京本大我さんについてお話しさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。 わたくし、相田冬二の専門は映画です。また、近年は特に演じ手の表現に注力しております。ですので、今回、語ることができるのは、主に映画『言えない秘密』(公開中)の素晴らしいお芝居についてです。 そして、連続ドラマ「お迎え渋谷

      • 晴れたり曇ったり雨が降ったり。明日の人生に「触れ違って」いこう。映画『めためた』

         自分のことを、ことさら馬鹿だと思う必要もないが、無闇に複雑化して深刻になることもないのではと考える。人間は、思ってるより単純な生きものだ。  駄目だ、もう終わりだ。プライベートでも、社会人としても。そんなふうに感じることはよくある。わたしたちは想定外の展開に弱く、脆く、傷つきやすい。思った通りに物事が進まないと、かなり意気消沈してしまう。  思った通りの人生なんて歩んできてはいないのに、己の思い込みにかなり支配されていて、そこから外れることに不寛容なのだ。大して緻密な計画な

        • とりあえず遺作でも撮っておこうか。ホン・サンス『草の葉』

           決して名作だけは撮るまい。  そんな、奇妙な、そして意固地な気概だけが漲っている映画作家だった。  名作になりかけると、すんでのところで崩す。あるいは、そもそも名作にならないように周到な準備を張り巡らせる。企画にしても、撮影にしても、編集にしても、音楽にしても、名作化を拒む意志が明確に屹立していた。  そんなホン・サンスが『それから』で遂に名作を完成させてしまった。  『それから』は冒頭からやけに気合いが入っており、彼の映画を観続けてきた者であれば、この気合いは、きっと後半

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        • えいが
          182本
        • ほん
          21本
        • てれび
          30本
        • おんがく
          47本
        • しょくじ
          12本
        • こめんと
          6本

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          言えない秘密。京本大我。

          言えない秘密。というタイトルは、つくづく京本大我という存在の資質を的確にあらわしていると思う。 京本大我は近年稀に見るほど精緻な芝居をする人で、とりわけこの年代(1994年生まれの29歳)においては稀少価値と呼んでいいほどだ。 その綿密さ、その慎重さは、演じ手ではなく作り手の構えであり、おそらく彼は、役を演じるというより、作品の一部、もっと言ってしまえば、映画の中心部を担う意識で、あらゆることを構築しているのではないだろうか。 本作にはある仕掛けが施されており、本来それ

          言えない秘密。京本大我。

          映画と人生を、一対一で滅却する。小橋めぐみ「アジアシネマ的感性」

           教養ではなく、たしなみでもなく、偏愛でもなく、依存でもなく。小橋めぐみは多くの人が接するように映画に接していない。ここ10年ほどの作品を中心に25本のアジア映画について綴った『アジアシネマ的感性』を読むと、数多の映画好きとは一線を画する付き合い方をしていることがわかる。書評家としての自分と、女優としての自分を両脇に配置し、読書や演技からはもたらされない自己露呈の場としての映画を、作品ごとに発見している。  それぞれの映画に彼女の私生活や深層心理が呼応するが、それは露出でも露

          映画と人生を、一対一で滅却する。小橋めぐみ「アジアシネマ的感性」

          【アーカイブ受付中】『蛇の道』『Chime』『Cloud』そして“2020年代の黒沢清”を黒沢清監督が語り下ろすzoom公開スペシャルインタビュー6.22開催。

          2024.6.22土曜日 1830開場1900開演 zoomトークイベント 【contact】featuring黒沢清 柴咲コウ主演『蛇の道』(6.14公開)、吉岡睦雄主演『Chime』(8月劇場公開。https://roadstead.io/にてレンタル視聴可能)、菅田将暉主演『Cloud クラウド』(9.27公開)。2024年、わずか4か月に3本もの新作が公開される黒沢清監督。 フランスでの自作リメイク、前例のない映画フォーマットでの45分、菅田将暉らフレッシュな顔

          【アーカイブ受付中】『蛇の道』『Chime』『Cloud』そして“2020年代の黒沢清”を黒沢清監督が語り下ろすzoom公開スペシャルインタビュー6.22開催。

          恋愛とは奇妙な勇気のことである。黒沢清「彼を信じていた十三日間」について

          「ニューヨーク・タイムズ」に掲載されたコラムを基にしたAmazon Originalシリーズ「モダンラブ」(2019)。その東京版「モダンラブ・東京〜さまざまな愛の形〜」は、廣木隆一、山下敦弘ら、気鋭の映画監督を中心とした演出メンバーとなっており、全7話の出演者は、水川あさみ、前田敦子、榮倉奈々、柄本佑、成田凌、夏帆、池松壮亮、黒木華、窪田正孝と錚々たる顔ぶれ。伊藤蘭と石橋凌という大ベテランが主演を務めるエピソードもあり、連続ドラマでも映画でもない、独特の存在感を発揮する連作

          恋愛とは奇妙な勇気のことである。黒沢清「彼を信じていた十三日間」について

          福士蒼汰2024年の熟成。

          15年後の再会を約束した男子高校生トリオ。約束は果たされなかったが、3人は巡り会い、交流は再開する。三十路突入。だが、全員未婚。結婚したい、したくない、恋愛もしたくない。考え方も性格も様々だが、現状を伝え合える友情はまだ継続している。 そんな基本設定から始まる「アイのない恋人たち」は、そこに同年代の女性4人を交え、楽観的でも悲観的でもない、グレーゾーンのリアルを物語る。平成版「男女7人恋物語」と呼べないこともない。時代は大きく変わったが、それでもここには、映像フィクションで

          福士蒼汰2024年の熟成。

          映画は音楽のように。音楽は映画のように。スカート「波のない夏feat.adieu」

          「波のない夏feat.adieu」 スカート  映画『水深ゼロメートルから』の音楽を手がけたスカート(澤部渡)が、adieu(上白石萌歌)を客演に招き、作品のエンディングを飾った秀逸な主題歌。  2019年、当時高校生だった中田夢花が母校、徳島市立高校演劇部のために書き下ろした渾身の脚本。山下敦弘監督によるこの映画化においても、中田がシナリオを手がけている。  4人の女子高校生たちが、学校のプール掃除をしながら、自身の女性性の社会的ポジションを巡って、終わりなきトークを繰り

          映画は音楽のように。音楽は映画のように。スカート「波のない夏feat.adieu」

          【アーカイブあります】『カラオケ行こ!』『水深ゼロメートルから』の山下敦弘監督zoom公開ロングロングインタビュー開催。

          相田冬二zoomトークイベントvol.228 【contact】featuring山下敦弘 2024.6.2日曜日 1830開場1900開演 綾野剛主演のスマッシュヒット作『カラオケ行こ!』に続き、高校演劇が原作である令和の名作『水深ゼロメートルから』が公開された山下敦弘監督をお招きし、そのキャリアを俯瞰する公開ロングロングインタビュー大会を開催します。 これまで、行定勲監督、井浦新さんをお招きしてきた【contact】シリーズの第3弾。前2回も伝説の一夜となりました

          【アーカイブあります】『カラオケ行こ!』『水深ゼロメートルから』の山下敦弘監督zoom公開ロングロングインタビュー開催。

          シチュエーションがハレーションを起こしている。『湖の女たち』の松本まりかについて。

          松本まりかがここで演じているのは、豊田佳代という、変わったところがまるでない名前の女性である。匿名性が高いわけでも、極めて凡庸というわけでもない。適度に丸みがあって、女性らしさが姓にも名にも宿ってはいる。しかしながら、どこか地味で、一度逢っただけでは、この人の姿かたちと、この名前が完全に一致することは難しいかもしれない。うっすらそう予感させるほどに、豊田佳代という名前は、印象が薄い。 豊田佳代は、湖畔の介護施設で働く介護士で、同施設で起きた100歳の老人怪死事件の容疑者とな

          シチュエーションがハレーションを起こしている。『湖の女たち』の松本まりかについて。

          【アーカイブ受付中】4年ぶりに開催。俳優・福士蒼汰を語るzoomトークイベント《蒼汰湖 sota-ko》

          相田冬二zoomトークイベントvol.227 《蒼汰湖 sota-ko》 2024.5.31金曜 2030開演 最新主演映画『湖の女たち』(5.17)公開記念。4年ぶりに福士蒼汰の俳優力について語り下ろします。 新作の福士蒼汰は、人間の境界線上のアリアを奏でており、それは“これまで”と“これから”のゆらぎでもあります。 そこで、今回のイベントは、『湖の女たち』ならびに連続ドラマ「アイのない恋人たち」を軸に、【朝の福士蒼汰】【夜の福士蒼汰】の二部構成で、この俳優の深い深い

          【アーカイブ受付中】4年ぶりに開催。俳優・福士蒼汰を語るzoomトークイベント《蒼汰湖 sota-ko》

          わたしたちはどうなるかわからないまま喋り、どこに行くかわからないまま今日も生きている。映画『水深ゼロメートルから』

           デートするとき、話題が途切れないように、あらかじめ話すネタを用意したことがあった。交際が始まったばかりだったからなのか、相手に緊張していたからなのか、それなりに退屈しない男と思ってもらいたかったからなのか、おそらく、その全部が理由だったに違いないが、その日、彼女に話すことをメモしながら整理している自分の姿は、思い出してもひどく滑稽だ。  おしゃべりとは、そういうものではない。話題が途切れないように意識することは礼儀としてはアリかもしれないが、具体的な準備をする段階でそれはも

          わたしたちはどうなるかわからないまま喋り、どこに行くかわからないまま今日も生きている。映画『水深ゼロメートルから』

          もしかしたら彼女たちは、あの日のことをいつか忘れてしまうかもしれない。だが、わたしたちが、この映画を忘れることはない。山下敦弘『水深ゼロメートルから』

          水深ゼロメートルから 『カラオケ行こ!』が大好評の山下敦弘監督が、また新たな傑作を送り届ける。 山下が『どんでん生活』でわたしたちの前に姿を現してから四半世紀。彼のキャリアの中でも、この『水深ゼロメートルから』は今後、特別な場所に位置することになるだろう。 山下敦弘の美徳はさまざまにあるが、その大きなものに【メッセージしないこと】がある。 そして、この映画作家を特徴づける重要点に【季節の終わり】がある。 本作では、この二つのエッセンスがまばゆいほどの神々さで分かちがたく結

          もしかしたら彼女たちは、あの日のことをいつか忘れてしまうかもしれない。だが、わたしたちが、この映画を忘れることはない。山下敦弘『水深ゼロメートルから』

          笑うと誰かが救われる。『旅猫リポート』の福士蒼汰。

          有川浩原作・脚本による映画『旅猫リポート』で、福士蒼汰はキャリア最良の芝居を見せている。猫とふたり旅という特異な構造の作品だからこそ、この俳優の見たことのない表情がいくつもある。彼は、これほどまでのポテンシャルとスキルを隠し持っていたのか。ネタバレしない範囲内で、本作の「福士蒼汰リポート」を試みてみたい。 近年の福士は、アクションの印象が強いかもしれない。今年公開の主演作2本『曇天に笑う』『BLEACH』はいずれもバリバリの活劇だったし、昨年の『無限の住人』ではラスボス役で

          笑うと誰かが救われる。『旅猫リポート』の福士蒼汰。