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【短編小説】友達について真面目に考えてみた 第4話

   第4話

 それから数日後の昼休み、学食から教室に戻ると、心配顔の和が近づいてきた。

「おはよう。ねえ、佐々木くんは今日は休み?」
「ああ、そうみたいだな。学食にもいなかったし」

 俺が応えると、和は周囲に目を走らせてから、耳元に顔を近づけてきた。口元を手で囲い、声を潜める。

「佐々木が昨日の夜、バイクに乗ってる金髪の人たちとコンビニの前でたむろしていたって、さっき聞いたの」

 俺は一瞬だけ天井を仰ぎ、そのまま自分の席へ向かった。和が追いかけてくる。

「ね、ちょっと待ってよ。佐々木くん、大丈夫なの?」
「大丈夫、大丈夫」
 ひらひら手を振った。

「この前は萌え研の人たちとつるんでいたと思ったら、今度は金髪の暴走族って。佐々木くん、一体なにしてるの?」
「新しい友達を探してるんだって」
「友達?」
 和が首をかしげる。

「ああ。しかも、ただの友達じゃない。真の友達だってさ」
「なんかよくわかんないけど……佐々木くんのすることだから仕方がないわね」

 さすがに和はよくわかっている。

「でも……本当に大丈夫かしら。佐々木くんって、融通が利かないほど真っ直ぐな人でしょ? あの暴走族の人たちと口論になっちゃって、暴力を振ふるわれたりしたらどうするの。リンチ殺人とか」

 和が物騒なことを言う。「大丈夫、大丈夫」と呟いたところで予鈴が鳴った。

 自分の席へ戻る和の後ろ姿を見ているうちに、めちゃめちゃに殴られて地面に這いつくばる佐々木の姿が一瞬だけ浮かんだ。

 しかしここで心配していても仕方がなかった。佐々木はスマホもガラケーも持たない、前時代の遺物なのだから。

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