相羽亜季実
階段を転がり落ちて肉体と中身が入れ替わってしまった俺と同期。でも妻ならきっと事情を話せばわかってくれるさ・・・って、同期の代わりに今から出張!? 冗談じゃない! ほっこり系SF小説。
吉川に誘われお祭りのスタッフを引き受けたさな恵の目の前で、二人の女子高生が飛び降り自殺をしてしまう。一方、生きづらさを抱える中学生・筧柚果の生活は苦難に満ちており……戦慄のホラーミステリー
透、武、さくら、環は高校の同級生。卒業してから10年、武とさくらが結婚し子供が生まれてからも四人組は親しくしていたが……西行法師の詩から始まる、一途で切ない恋愛小説。
2024年3月に行われた豆島さんの企画『夜行バスに乗って』への参加作品。「帳面町からバスタ新宿まで」の夜行バスに乗った怪しい人物は誰だ!? そして、主人公の抱える事情とは。
「犯人はあなただ!」「さあ、聖杯を取り出せ」「紫式部になりたい!」限界まで潜ったその先にある、指先に触れたものをつかみ取れ。あなたは書くために生まれてきたのだから。
第1話 サンダルの底をアスファルトに擦るようにして歩いていると、正面からゆっくりした速度でふらふら走る自転車がやってきた。 わずかに道の端によけるが、自転車はハンドルを切ろうとせずそのまま進んでくる。運転している男は片方の手でスマホを持っており、目はその画面に注がれている。 「おい」と声をあげたが、とっさに出たのは喉に痰がからんだ時のような小さな呻きだった。 運転者はこちらに気づいていない。細い道路は精いっぱい端に寄ってもギリギリだ。 ふいに運転者が顔を
第11話 こじんまりした平屋の建物は、僕の住んでいる家とほとんど同じだった。相違点は外壁の色と玄関のドアの木目だけ。間違い探しの絵のようだ。 ドアにもちろん鍵穴はない。日曜日の国に窃盗はない。欲しいものはなんでも与えられる。ただ、いくつかの規則を除いて。 『日曜日の国の住人同士は話してはいけない規則です』 使者の声が頭の中で繰り返され、僕はチャイムにかけた指を慌てて引っ込めた。 そっと中の様子を窺う。じっと耳を澄ませると、かすかに物音がする。住人がいる
第10話 ズッ、パタン、ズッ、パタン。サンダルの底と道が擦れる音が聞こえる。 自分から発せられるリズムが耳から入り、腹の中でビートを刻む。それに鼓舞されるように、かろうじて足が前に押し出される。 「痛い……」 足の裏も、足首も、太ももも、ふくらはぎもすべて痛かった。筋力も体力も、落ちているに決まっている。ひょっとしたら関節なんかも弱っているのかもしれない。 歩き出してまもなく、僕は後悔していた。 振り返ったらまだ家はすぐそこにあって、思ったよりも前に
第9話 よく見ると、僕がこの世界にやってきた時に履いていたサンダルは、沓脱の隅にちょこんと揃えられていた。 埃をかぶっている。日曜日の国に来てから、一体どのくらいの時間が経ったのか。思いを巡らせてみる。 ほんの一箇月ほどのような気もするが、よくよく考えるとそんな短いとも思えない。ここにはカレンダーがなく、テレビはいつも日曜日の番組が流れているので、時間の感覚を持ち続けることは困難だった。 サンダルは埃をかぶりながらもずっとそこにあったのに、僕の目にはまっ
第8話 ソファに転がった体勢で目を開けた。額の上に乗せられた腕が、視界を半分遮っている。 天井の明かりをじっと見つめていると、透明な線虫のようなものが、ゆっくり落ちてくる。焦点を充てようとすると、線虫は素早く視界から外れようとする。 テレビは静かに部屋の隅に収まっていた。目を閉じると、充分な眠りを与えられているはずなのに、じわりと意識が薄れそうになる。 遠くから低い音が近づいてきた。この世界で、外から響いてくる唯一の音だ。 ソファから半身を起こし、耳
第7話 「それでは、次回なにか入用なものなどございますでしょうか?」 玄関で靴を履いた使者がゴミを手に振り返った。 「ああ、いや……別に……」 ふわあ。大きな欠伸が喉元からせりあがってきて、言葉が遮られる。じわりと視界がゆがんだ。口を覆うと、手のひらに髭がざらりと触れる。 頭がかゆい。首の後ろを掻くと、次は頭頂部がかゆくなった。こめかみ、反対側のこめかみ。どんどんかゆい場所が広がる。眉毛、手首、ズボンのゴムが当たっているところ。 「……特にないかな」
第6話 玄関の扉を開けると、使者が僕を見てわずかに目を丸くした。 「どうかな」 言いながら、つるりと顎を撫でた。日曜日の国に来て以来、ずっと伸ばしっぱなしだったヒゲを剃ったのだ。 「よろしいですね」 使者が目を細めた。視線が僕の頭へ移動する。 「こっちはちょっと自信がないんだ」 両耳の辺りに手をやった。ちくちくとした感触が手のひらを打つ。 脱衣所の扉の中にあったバリカンで、生まれて初めてツーブロックに挑戦してみた。途中までは悪くなかったが、後ろ頭で苦
第5話 「あのさぁ、他の番組って見れないのかな?」 運んできた食料を食品庫へ納める使者の背中へ向かって、僕は尋ねた。 「さすがに飽きてきたんだよね。日曜日の番組だけしか見られないのってさ」 ちゃんと内容は変わっている。同じものがくり返し流されているわけではない。それでも、たまには違うものが見たい。 「月曜日から夜更かし」「水曜日のダウンタウン」「金曜日のスマイルたちへ」等々、他曜日の番組が思い浮かんでくる。 流し台にいくつも並べられていたカップラーメン
第4話 外の世界が明るい。わずかに開いた目に、シーツが跳ね返した白い光が飛び込んできた。 もう一度目を閉じる。瞼の裏の黒い幕の上を、白い粒がもぞもぞと動いている。 いつものように、視覚が初めに働き出す。 布団が柔らかい。視覚に手を取られ、触覚が目を覚ます。ほんの少し肌寒さを感じ、足元に蹴り飛ばされた毛布に手を伸ばす。 反対に、意識は目覚めるのを拒否する。人に姿を見られたヤマネのように、慌てて元の場所へ戻ろうとする。 なにかの家電製品のモーター音が耳
第3話 『来週もまた、見て下さいね!』 ジャンケンポン。僕と弟が出したのはグーだった。サザエさんの勝ち。 『あんたたち、いつまでテレビ見てるの!』 見計らったような母の檄が台所から飛んできた。 『明日の学校の仕度はできてるの?』 サザエさんの終わりは日曜日の終わり。ガッカリする気持ちをなだめる間も与えず、母が追い打ちをかける。 『あーあ、明日は学校か』 のろのろと炬燵から這い出た。母に渡された体操服を手に、弟と共に勉強机の置いてある部屋に向かう。 『明
第2話 気付かないうちに雨が降ったのか、ロータリーのアスファルトは濡れてくっきりと黒く光っている。 日曜日の真夜中前。こんな時間に駅前まで来たのは初めてだったが、普段の夜とあまり変わりない。不動産屋も眼鏡屋もドラッグストアもシャッターが下りているが、コンビニと居酒屋だけは開いている。 世間には日曜日も働いている人がいる。それを考えると頭が下がる。 けれども、バスのターミナルには人の気配がまったくなかった。かろうじて街灯の光が届くだけで、長距離バスの電光掲
現在、台風がゆっくり北上中ですね。今は九州に上陸したところでしょうか。 食料やお水などを備蓄して、台風に備えておく必要がありそうです。 余談ですが、昨夜、次女と国語の勉強をしておりました。 ことわざの問題だったのですが、 「そなえあれば・・・?」 というわたしの問いかけに、 「うれすぃー!」 元気よく答えた次女。隣で聞いていた長女は悶絶しておりました。 この場合、「そなえ」は「そなえ」でも、「お供え」の方でしょうか。お地蔵さん目線かな?(*´▽`*
ここ最近、豪雨だの、雷だの、なんだかすごいですね(>_<) 来週にはまた台風がくるようですが、これを何回か繰り返したら、涼しくなるのかな。 早く秋になあれ(*´Д`) さてさて、相変わらず時間が取れない毎日が続いております。夏は忙しい。 ホントにホントに早く秋になあれ(*´Д`) さて、今回紹介させていただく作品はこちら! じゃん!٩( ''ω'' )و 一の月さんの書かれた『レスポワールで会いましょう』です。 ずっと読みたかったんですよ~! やっと
毎日暑いですね・・・(*´Д`) ホントにホントに時間が取れなくて、もっとコンスタントに続けたいと思っているのに、前回の記事からすっかり時間が空いてしまいました。 これじゃ、ますます「今さら」間が増してしまう~(´Д⊂ヽ 気を取り直して、本日ご紹介する作品はこちら。じゃん!٩( ''ω'' )و 小糸さんの書かれたこちらの連載小説『幻日』は、ミステリー部門にエントリーされています。 主人公はとんでもない絵の才能を持つ女子高校生。 しかしコンクールのため
創作大賞、3箇月もありましたのに、なんだか最後はバタバタでした💦 あれっ? こんなはずではなかったのに。 もっと読みたい作品、たくさんあったのに(*´Д`) 応援記事も、もっとたくさん書きたかったのに~Σ(゚Д゚) でも、今から読んでもいいですよね٩( ''ω'' )و もしわたしなら、今から読んでもらっても嬉しい( *´艸`) せっかくなので、期間を過ぎた「今さら感想」なのですが、読書感想記事を書いていこうかと思います。 本当なら応援期間中に書きた
ノリかなさんはいくつかの作品を創作大賞2024のオールカテゴリ部門にエントリーしています。 幸せになってほしい。 笑っていてほしい。 人がつらそうな姿は見たくない。 それって、なぜでしょうね。 自分がつらいわけではないのに。 なにもできない自分がもどかしくなるから? 自分が咎められているような気持ちになるから? それもあるかもしれないけれど、それだけじゃないみたいです。 だって、テレビで痛ましいニュースを見ても心は痛むから。 たとえ会った