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【短編小説】友達について真面目に考えてみた 第6話

   第6話

「自分は根本的な間違いを犯していたようだ」

 暴走族との別れから立ち直った佐々木は、スッキリした顔で俺に言った。
 学食はいつものように賑わっている。俺はラーメンの汁を飲み下してから聞き返した。

「間違いって?」
「ひとつも共通点がない相手を探していたのだから、性別も同じではいけなかったのだ」

 混みあった学食で、オーダーもせず席に座ろうともしない佐々木を、通りすがりの人が奇異なものでも見るような視線をよこす。しかし本人はまったく意に介さない。

「つまり、真の友達は女性で探そうと思うんだ」
「……そうか、頑張れよ」

 学食のおばちゃんがサービスでつけてくれた海老天にかぶりつく。ラーメンの汁を吸った部分とそうでない部分の食感の違いを楽しんでいると、

「だが問題がある。自分には、女性の知り合いが一人もいない」

 佐々木がぐっと俺に向かって身を乗り出した。貴重な味わいの時間が台無しだ。

「そこでお前に頼みたい。誰か女性を紹介してくれないか」

 佐々木は興奮気味なのか、声が大きい。周囲の人間が佐々木と俺を見比べながら去っていく。海老天を味わうことを諦め、俺は箸を下ろした。

「わかった。どんな女性を紹介すればいい? 胸が大きい女か? それとも尻の突き出た女か?」

 俺の嫌味は、佐々木には届かない。

「もちろん、自分とひとつも趣味や価値観が合わない女性だ」

 それは決して難しい注文ではない。問題なのは、佐々木に紹介されたい女性が果たしているのだろうか、という点なのだ。

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