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「スマイル有料化」

ある日突然、日本の政府から新法が発表された。「スマイル有料化法」である。その名の通り、人々が笑顔を浮かべるたびに、一定の料金が課金されるというものだ。

この法案の発表に対し、全国から不満の声が上がった。「私たちの笑顔まで税金にするつもりか!」しかし、政府は冷静に反論した。「エネルギー節約のためだ。スマイルは幸せを感じさせるが、筋肉を動かすエネルギーも必要だ。ビニール袋有料化に続く、エコロジーに配慮した政策だ」。そして、スマイル有料化法は成立し、実施されることになった。

公共の場では、笑顔が激減した。みんな恐る恐る口元を押さえ、誤って笑わないようにした。しかし、金持ちの人々はこの法案を笑って受け止めた。なぜなら、彼らはスマイル料金を払うことができたからだ。貧困層に比べ、富裕層の笑顔は明らかに増えていた。

それに対し、少年ジロウは困惑していた。家族が困窮している彼にとって、笑顔さえ贅沢になってしまったからだ。それでもジロウは笑顔を絶やさず、必死に働いてスマイル料金を稼いだ。

ある日、ジロウは町の看板に「スマイル0円デー」の告知を見つけた。その日だけは笑顔を自由にすることができる日だった。ジロウは心から喜んだ。しかし、「スマイル0円デー」にはある秘密が隠されていた。

その日が来た。人々は久しぶりに大きく笑い、幸せな一日を過ごした。しかし、次の日には驚愕の事実が待っていた。「スマイル0円デー」は笑顔の量を調査するための日だったのだ。そして、その結果に基づいて、翌年のスマイル料金が決まることになっていた。

「スマイル0円デー」の翌日、新たなスマイル料金が発表された。全国の笑顔が増えたことを反映して、スマイル料金は大幅に上昇した。ジロウはぼんやりと看板を見つめ、涙を流した。

しかし、そこには一つだけ救いがあった。それは、ジロウの笑顔が、この世界で一番高い価値を持っていることを認められたことだ。スマイル料金が彼の笑顔の価値を物語っていたのだ。

この物語の結末は皮肉なものだが、読後には深く考えさせられる。スマイル有料化、ビニール袋有料化といった「エコロジーに配慮した政策」は本当に公平なのか。そして、笑顔の価値はいくらなのか。人々の幸せを測る基準は何なのか。この物語は、それらの問いを投げかける。

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