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「喉から屁が出るほど」

私がその言葉を聞いたのは、地元の老舗お好み焼き店、"島原の焼き場"であった。店主である佐々木さんはいつも風変わりな表現を使うが、この表現は特に印象的だった。「喉から屁が出るほど」というのだ。

ある日、お店に新しい客がやってきた。その客は、一見してアート系の人物だと分かるような、個性的な装いをしていた。彼は「お好み焼きをお願いします。でも、一つだけ特別なお願いがあるんです」と言った。

佐々木さんは好奇心に目を輝かせて、「何でも言ってみな」と応じた。

「私は音に強く反応するんです。だから、お好み焼きを作る音を楽しみたいんです。その音が聞こえると、喉から屁が出るほど感動するのです。」と彼は言った。

佐々木さんは笑って、「そうか、そういうことなら、お任せあれ」と言い、真剣に焼き始めた。

数分後、お好み焼きが出来上がり、彼に提供された。彼は心地よい満足感を顔に浮かべていたが、突然彼の顔色が変わった。彼の喉元が何かにつまったように膨らみ、顔は真っ赤になった。

その瞬間、彼の口から大きな音が鳴り響いた。まるで、何か巨大な屁のような音だった。店内は一瞬で静まり返り、皆が呆然とその男を見つめていた。

そして、彼がにっこりと微笑んで言った。「本当に喉から屁が出ました。これほど美味しいお好み焼きを食べて、こんな感動を体験したのは初めてです。」

その日から、「喉から屁が出るほど」の表現は、地元では最高のお褒めの言葉となり、それを目指して料理を作る者も現れた。そして、"島原の焼き場"は、以前にも増して人々で賑わうようになった。その店の伝説ともいえるこの出来事は、時が経つごとにさらに広がり、語り継がれていった。

佐々木さんは後に、「あの男のおかげで、自分の料理が人々にどれほど感動を与えるか、再確認できた。それは、文字通り、喉から屁が出るほどの感動だった。」と語った。

そして彼の言葉が、新たな伝説を作り上げることとなるのだった。

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