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自分のことを大好きな自分でいたいから
退屈な仕事の昼休み。
何の気無しに開いたスマホで目に入ったハッシュタグ。
そんな偶然に引き寄せられて、たまたま目にしたこの一文に、私は心がドキッと跳ねたのが分かった。
髪を染めた日、髪より先に変わったのはあなたの心かもしれません。
「髪より先に変わったのは、あなたの心かもしれません。」
そんな経験が、確かにある。
私の脳裏をよぎったのは、いつかの初恋の記憶だった。
◇
私は昔、大阪のダサい高校生だった。
ロックとギターが大好きで、ファッションは赤文字系より青文字系。
制服のスカートは古着っぽいロング丈、足元はハイカットのコンバース。
髪の毛は刈り上げてみたり、当時はあまりいなかったマッシュボブにしてみたり。
自分が「可愛い」「オシャレ」だと感じたものが正義で、そんなものに囲まれた自分のことが好きだった。
でも、恋をした。
恋とは不思議なもので、自分自身の感性までも惑わせた。
「可愛い」「オシャレ」だと感じていたものたちへの興味は薄れ、「どうしたら相手に好いてもらえるのか」、ファッションはそのための道具に成り果てた。
特に、髪型。
誰に言われた訳でもないのに、なぜだか刈り上げやマッシュボブはいけない気がして、少しずつ髪を伸ばし始めた。
そして、高校生が終わる頃、運良くその恋は成就した。
でも、上手くいかなかった。
「みんなと同じ」型に自分を当てはめ続けることが恋人に愛してもらうための努力だと思っていた。
「みんなと同じセミロング」、「みんなと同じ茶髪」、「みんなと同じスカート」、「みんなと同じメイク」。
そんなものに自分を押し込めて本当の自分を見失ってしまった私は、結局恋人からの愛も失ってしまった。
初恋が終わった時、私はマッシュボブのダサい高校生から、茶髪ロングヘアの、もっとダサい大学生になっていた。
初めての失恋は苦しくて、何日もたくさん泣いたけれど、涙を流し切った頃、私は本当の自分を取り戻したいと思うようになっていた。
誰か好みの自分ではなくて、自分のことを大好きな自分でいたい。そしていつか、そんな自分を愛してくれる人と出会いたい。
そう決意した私は、ダメージに気を遣っていたロングヘアに、前髪まですべてパーマをかけた。
「みんなと同じ」を心掛けていた茶髪ももっと明るく染めて、金のハイライトを髪全体に入れた。
無難なローズから、自分の好きなピンクのリップに変えて、誰の目も気にせずに、自分が着たくて買ったワンピースを着て鏡に向かって微笑んでみると、そこで微笑む私はやっぱりダサくて、でも自分の好きな自分への一歩を踏み出した、とても晴れやかな顔をしていた。
◇
三十路を越えた今、会社員として普通に生きている私をあの頃の大学生の私が見たら、「みんなと同じ」型に自分を当てはめた、つまらない大人になってしまったと思うかもしれない。
でも、私は言いたい。
私のこのショートカットは、自分にとてもよく似合うと思って、自分がしたくて選んだ髪型なのだと。
私のこのピンクブラウンの髪色は、肌の色と合わせて考えたお気に入りなのだと。
私のこのピアスも、今日のこの服装も、全部自分がしたくてしている大好きな自分なのだと。
そして、そんな私にしてくれたのは、紛れもなく、あの恋で傷ついて、そして前を向いて、行動を起こしてくれたあなたなのだと。
髪を染める。
髪型を変える。
自分の好きなものを身につけて、自分のことを大好きな自分になる。
そんな経験が、きっと未来の自分を作るんだと思う。
自分のことを大好きな自分でい続けるために、私はこれからも、今日の自分を精一杯愛していこうと思う。
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