第三章(来たる日に備えて):第50話「特色隊、通常運転」

『ま〜だ着かないのぉ〜?お腹すいちゃったなぁ〜。』

「その姿で”お腹すいた”は無いでしょ!全く、また勝手に出てきて…。」

昼食を終えて、あれからすぐに出発。

ペアレの背に乗って、”目的の村”まで駆け抜けて
さすがに陽が落ちてきたから、各自徒歩に切り替えたその頃。

”また”、アオ兄が薄い赤色の鳥として、勝手に発現してきた。

『だってぇ〜。本格的に日が落ちたら、もう出てこられないんだもん!兄ちゃん寂しい!』

雀のような姿で、うるんだ瞳でこっちを見てくる。

(うーん…なんか、罪悪感が…。)

「アオバ君は、夜の間…ヨウの中で眠ったような状態、でしたわよね。

寂しいのは間違いないですわ。ギリギリまで、発現していたら良いと思います。」

ミチカは、雀のアオ兄に向かってニコリと微笑んだ。

「おいミチカ!またアオ兄を甘やかして…!

そりゃ俺もアオ兄に会いたいけど…
これでもチカラ使ってて、俺の体力、少しずつ削られてるんだぞ?」

「いいじゃんいいじゃん!

アオバを制御できていないヨウの負けだな〜。」

ミチカに抗議した声は、陽気な大先生に遮られた。

「うぅ…!それを言われると…。」

(俺って…やっぱ才能、ないのかな…。)

2ヶ月間、大先生とマンツーマンで修行して
やっと自力で発現して、チカラを使えるようになったけど…

(それも…チカラ、1種類だけだし。深紅は…激薄のままだし。)

結局、オーバーのアオ兄を制御するような勅令は
全く習得することが出来なくて。

本来は、修行して体内のカラーズを理解できれば
勅令のセリフやチカラの使い方が、フッと頭に浮かぶらしいんだけど…。

(アオ兄の方が
俺の体内のカラーズを理解できている…ってこと…らしい。)

さらに大先生が言うには
『深緑色のカラーズは、アオバの意識の源だから、絶対に使うな』
とのことで。

深緑色のカラーズを使って、万が一減りでもしたら…

アオ兄の意識が、無くなってしまうかもしれない、らしい。

そんなことは絶対イヤだったから。

何とかして、俺の体内にある2色のうち、
本来の俺のカラーズである”深紅”を使って、アオ兄を発現させたかったんだけど…。

『ははは!ヨウの負け〜!』

「ふふふ、ヨウの負け〜。」

「いいぞ〜!負け負けぇ〜!」

いつの間にかアオ兄は、俺の勅令なんか無くても
光が当たる場所で、勝手に深紅のカラーズから発現するようになっていて…。

(俺…みじめだ!!!)

「うるさーい!!!

今は…制御できないけど。

もっとちゃんと修行して、いつかアオ兄と一緒に
”深紅”のチカラ、かんっぺきに使いこなしてやるから!!」

俺は負けじと3人に向かって宣言した。

『ヨウの負けず嫌いで前向きなとこ、俺好きだぞ!

待ってるから…

早くしないと、俺、寂しくて…

…今以上に、勝手に出てきちゃうかも☆』

アオ兄は、楽しそうに空中を飛び回りながらそう言って。

最後には、
雀ながらも軽くウインクをして、フワッと消えていった。

「今以上に出て来られたら…

ヨウの、ただでさえ少ない、発現に必要なパワーは
あっという間に底をつくだろうな!あちゃちゃ〜。」

大先生は、大げさに頭を抱えてみせる。

「あちゃちゃ〜じゃない!

この任務が終わったら、また修行漬けの日々だから!

ちゃんと付き合ってよ!」

「はいはいっ。
お前ほんっと修行大好きだよな〜。今どき珍しいやつ。

そんなお前に毎度毎度付き合ってやる俺、優しすぎる!

俺って優しさでできてるのかもしれない…な!ミチカ。」

「隊長として当たり前ですわ。」

「つめたっ!反抗期の娘かよ!

いや、俺まだそんなオジサンじゃないわ。」

「「十分オジサン、だよ/ですわ」」

「お前ら、隊長に向かっていい度胸だなぁおい。」

薄暗くなっていく草原に、
俺たちの話し声だけがこだまする。

「んで…まだ着かないの?」

俺は、先を歩く大先生の背中に問いかけた。

「たぶんもうすぐ…お、噂をすれば、だ。

灯りが見えてきたぞ。道間違えてなくて良かった〜。」

「途中、間違えそうになってましたわ。」

「あれはもう蒸し返すなって!」

話しながら歩いて近付く。
確実に、灯りが大きくなっていく。

「じゃあ…着いたらまず、俺とミチカは宿探しだな。

ヨウは、”例の禁色”を、早速探してこい。」

「えっ!俺1人で!?」

「これも、お前の大好きな”修行の1つ”だよ。

ま、そんなに大きくない村だし、何かあったら空に叫べ。
俺がすぐさま飛んでいってやるからさ。」

「はいはい…。」

「あ、信じてないな!?」

そうこう言っているうちに、村の入り口らしき門へと辿り着いた。

大先生はさっき『大きくない』って言ったけど…
門からして、それなりに大きい村だと思った。

「門番…は、特にいないな。
情報通り、そんなに治安も悪くない、平和な村みたいだ。

宿も、すんなり見つかりそうだな。」

大先生は、うんうん、と満足そうにうなずく。

「じゃ、お互い見つかっても見つからなくても、
1時間後に、またここに集まろう。では、検討を祈る!」

「ヨウ、きっと見つかるわ。頑張って。」

そう、2人に見送られて。

「おう!任しとけっ!」

俺は軽く手を揚げて、2人とは逆方向に歩いていった。

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