第28話「悪魔はどこへ…」

(…全部、全部、全部、全部…)

「…ヨウの、せいっ!!!」

腰まで流れる金髪に、黄色の瞳が眩しい…美しくも、怒れる少女
その全身から…濃く、赤みがかった黄色のモヤが、溢れ出す。

怒れる少女…ヒマリは、泣きながら…叫ぶ。

「絶対に、ゆるさないっ!!!」

溢れ出した黄色のモヤは、まっすぐに…漆黒のモヤへ。

「…ヒ、マリ…!…ヒ…マリ…!」

漆黒のモヤは、ぶつかってくる黄色のモヤを…

…”吸収することなく”、弾き返した。

…ヨウと、アオバのモヤが…混じり合った時とは、全く違う…反応。

「これは…。そうか、そうだったのか…!」

その様子を、そばで見ていたブレイズは。”黒の悪魔の新たな発見”に…緩む顔を、抑えきれなかった。

「ははっ。そういうことなら…。私は…。」

少しの間、これからの身の振り方について、考える…

…その時、

「おいっ!ヒマリ!!!何してんだよ!!」

馬に乗った少年…レンが。
ブレイズとヒマリの後ろ…木々の間から、颯爽と現れ。

ブレイズより一歩前に立ち、黒の悪魔に向け、モヤをぶつけ続ける少女に、声をかけた。

「さっきから…っ!爆発に爆音…ここは、一体どうなってんだ!?」

状況が分からず、馬に乗ったまま辺りを見回す。

そんなレンの登場で、ブレイズの…身の振り方は、決まった。

「レン君…!ちょうどいい所に!

ヒマリちゃん…!…ここは一旦、逃げましょう。」

ブレイズは、すぐ目の前で、怒りのままチカラを解放し続けるヒマリに、そう提案した。

「なっ!?

い、いやです!!私…絶対に、ヨウを…許さない…!!!」

「…はっ?!何が…ヨウだって?許さないって…?」

ブレイズの提案を、理解できない少女と、
2人のやり取りに、全くついていけない少年。

…そんな2人に、構うことなく。

「…手荒で申し訳ないが…。ここは、本当に…危険なんだ。」

ブレイズは、2人が認識できないスピードで…チカラを、使った。

ブレイズの身体から、溢れる”水色の”液体。
それが…あっという間に、少年と少女を包み込み…。

「きゃっ!」「うわぁっ!」

空中で、大きな水の塊となって。
2人は、瞬きをする間に、水の塊に閉じ込められることになった。

「ふう…。早く、ここを離れなければ。きっとすぐに、大きな一撃がくる。」

そう言って、ブレイズ自身は、レンの乗ってきた馬にまたがり。
水の塊を、馬のすぐそばに漂わせながら、黒の悪魔に、背を向けた。

「2人とも、そこでは呼吸も、会話もできる。そして…安全です。
少しの間、その中で、大人しくしていてくれると助かるよ。」

はっ!と、勢いよく手綱を引いて。
それを合図に、立ち尽くしたままだった馬も、勢いよく走り始めた。

「待ってくださいっ!待って…!…いやっ…!…お父さんっ!!!」

ヒマリは、背後で小さくなっていく、黒の悪魔を見て、叫ぶ。

「ヒマリ…。」

レンは…。あの惨状を見て、何かを察し。
何も…言葉をかけることが、できなかった。

「ヨウ君、アオバ君…また、会いましょう。」

ブレイズは、誰にも聞かれない声量で…。そう、つぶやいた。

「ヨ…ウ…。」

黒いモヤの中心で。

アオバは、弟に…声を、かけ続けていた。
でも、それももう…。

…薄れる…意識の中、最後のチカラを、振り絞る。
少しだけ、上体を起こした。

ずっと無表情のまま、漆黒に包まれる…弟を、見つめる。
今もまだ、自分のそばに、立ち尽くしていて。

その足元には…焦げた紙袋と、そこから覗く…黄色の、ハンカチ…だろうか。

あぁ…きっと、ヒマリへの…愛しいあの子への、プレゼント…。

「どうなっても…構わないんだ。

俺は…。

でも、お前は…違う。

ヒマリを…みんなを…守って、あげられる。

お前なら…。

だから…戻ってこい、ヨウ…。」

アオバは、ふっと、微笑んで。
ヨロヨロと立ち上がり…

…ヨウの身体を、抱きしめた。

「お前なら…大丈夫。絶対に…俺が、守るから。」

2人の兄弟を…今日一番の、眩しい紅色の光が、包み込む。

そして、1分ほど、輝いた後…

ーーードォォォォオオオン!!!ーーー

紅色の光は…弾けて…消えた。

紅色が、弾けて消える…少し前。

紅色に輝く、兄弟の周囲ではーーー

「また、あの光っ!まずい!モモナ、ミチカ、伏せろっ!!!」
「えっ?!」「何が…起きるのっ!?」
「いいから!黙って伏せるんだ!!!!」

3人の少年少女とーーー

「…紅い光…だぶん、膨れ上がって、爆発しますよ。この距離…まずいですね。」
「あちゃ〜。せっかく見にきたのに。これ…一旦離れた方が、良くない?”亜空間”、戻ろっか。」
「戻ろっかって…。出すの、僕なんですけど。」
「うんうん、”優秀な”、仲間と一緒で…俺、とっても幸せ!」
「…僕が、その言葉に弱いの…知ってて使うから…。ズルいです。」
「えー?本心だからさぁ。ズルいとか、ないんだけど。」
「全く…。”深淵の黒色隊=ブラックアビス”の隊長が…こんな、”天然ヒトタラシ”、だなんて…。」
「なにそれ!人聞き悪いな!?俺のこと…何だと思ってるの?」
「”自信が服を着て歩いてる”、と思ってます。」
「そんな自信家じゃないわっ!それを言うならさぁ、君も、”隊長のくせに”、ブラックすぎるでしょ!」
「…。さーて、ちょっとの間、亜空間に戻るか〜。」
「あ、おい!無視するなって!」

”真っ黒”の軍服に、身を包んだ男が2人ーーー

ーーードォォォォオオオン!!!ーーー

紅色の光は…弾けて…消えた。

光が消え、また、景色が見えるようになったそこに…

立ち尽くすのは…

…たった”1人の”、少年。

一瞬で…1人になった、少年は…。
…そのまま、倒れた。何も…考えられなかった。

果たして、これから…

…1人になった、少年は…?

…復讐を誓った、少女は…?

2人を取り巻く、世界は…?

そして…

…黒の悪魔、とは…?

そう、これは…

…世界に混沌をもたらした、全ての元凶…”黒の悪魔”、が

ーーーー死ぬまでの、物語。

【第一章:あの日、再び】完

【第二章:新しい世界】へ続く

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